デジタルサイネージアワードで「渋谷デジタル花火大会」が金賞。 | 三茶農園/きむらさとる

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昨年の事例なのですが、デジタルサイネージアワード2014(主催:デジタルサイネージコンソーシアム、後援:経産省/総務省)で渋谷デジタル花火大会が最高賞のゴールド賞を受賞しました。ありがとうございます。



渋谷スクランブル交差点の商業ビルQFRONT(TSUTAYAやスターバックスが入っているビル)の大型ビジョンを使った実験的取り組みに昨年から参加しているのですが、屋外ビジョン(OOH)は広告条例や道路使用での制限がかかるためできることには限りがあります。特に渋谷の交差点は人の往来が激しいこともあり、イベント利用に関してとくに規制が厳しいです。なので実現への道のりは生半可なものではなかったわけですが、審査委員長より「渋谷の交差点ではこういった企画に取り組みたいというアイディアは無数にあったが、これまで実現には至らなかったことを実現したことを評価したい」といったコメントをいただき率直にうれしいです。

【概要】
スマートフォンやタブレットをフリックする(画面を下から上に指でなぞる)とQFRONTのビジョンにリアルタイムで花火が打ち上がる仕組み。
・企画 東急電鉄/東急エージェンシー
・全体設計 projector/TAGRU
・デザイン/プログラム開発 1-10design
にご協力いただきました。



【参加方法】
アプリ配布だとインストールの手間がかかるので、ブラウザとHTMLを使ってURLのクリックひとつで参加できるようにしました。“パーソナル”な端末で“パブリック”な大型ビジョンを操作できるという特殊な(普段味わえない)体験はなかなかの爽快感と気持ちよさがあって、1週間のイベント期間に約3900人/88000発もの花火を打ち上げてもらいました。なかでも、ゲリラ豪雨で隅田川の花火大会などが中止になった日は、都内で唯一(?)打ち上がっていた花火大会だったので、びしょ濡れの浴衣ギャルズが楽しそうに打ち上げまくってたのが印象的でした。

【触り心地】
タイムラグは1秒未満(10フレーム~20フレーム)とほぼリアルタイムに稼働しました。1-10さん技術力さすが。このちょっとのタイムラグが、打ち上げたときのヒュールルルルという待ってる感にもつながっていてとても気持ちよかった。

【苦労した点】
実施にこぎつけるまでに苦労した点は無数。なかでも、
・花火の質感
・渋谷のハチ公前広場という滞留させられない公共スペース
・同時参加できる人数の調整
などなど。

【本物の花火はダメ!】
渋谷警察、消防、渋谷区になんども足繁く通ってご指導賜るわけです。たとえば警察からは、花火の質感をご指導いただきました。「本物に限りなく近い花火表現を追求すると、運転中のひとが目を向けてしまわないであろうか・・・」というご指摘から、CG処理のデジタル花火にしました。結果せっかくデジタルなんだからいろいろできるよねということで、企業ロゴを打ち上げられる特別協賛枠を設定し、協賛いただいたNTTコミュニケーションズ「050+」をロゴ花火として打ち上げました。

【ハチ公前広場ではプロモーションNG】
たとえばハチ公前広場は、ビラやチラシを撒いたり、イベント集客したりできません。道路使用許可申請をしていたとしてもNGです。「交通阻害にならないように滞留させない仕組みが望ましい」という指摘から、イベントなのに集客しちゃだめ!という禅問答に悩まされるわけです。結果プレイ時間と同時体験人数を工夫しました。人が一気に集まらないように事前登録システムを開発し、決められた時間に自然と集まっていただく人数を調整する時間割を作成しました。

【プレイ人数】
同時プレイ人数は3人にしました。パブリックな大型ビジョンをパーソナルにひとりじめするなら一人ずつが望ましいけど、ひとりずつだと行列ができて滞留してしまう。一方でたくさんのひとに参加してもらいたい。5人ずつだと画面の占有感が少ない。そこで期間中に何回もシステムを手直しして、最終的に3人にしました。

【自分の花火だとわかる工夫】
3人プレイにすると、どれが自分の花火かわかるような工夫が必要です。そこで、ツイッター/フェースブックのアイコンを表示し、自分のポジションがわかるようにしました。ただしアイコンは著作者ではない場合がある。そこで、事前登録の際に、ひとつひとつのアイコンを毎日Google画像検索にぶち込んで、重複した画像がないか手作業で識別しました。重複画像がでてきて著作者か判断しかねる場合や、明らかに著作物を侵害していたり、せっかくご応募いただいたにも関わらず、「あなたのアイコンは著作者がはっきりしないから今回は参加ご遠慮してねごめんなさい」というメールを理由とともに一通一通お送りさしあげました。

頭上にある大型ビジョンを見上げる仕草が花火を見上げる行為と近しかったのもあり、気持ちのいい体験設計に仕上がりました。関係者のみなさまありがとうございましたお疲れ様でした!受賞された皆さまおめでとうございますパチパチパチ。