浄化~その2の続きです

アパレルを辞めることを
決心した私は
まず
店長に話しました

この仕事が
好きだったこと
頑張ったこと
でも
声に限界を感じて
続けられないと
決断したこと

店長は
こう言ってくれました

この店には
あなたが必要です
もう一度
ゆっくりと考えてみてください

それでも
私の決断は変わらず
話は社長のもとへと
流れていきました

何度も話し合いを重ね
最後は

美香さんの決断を
尊重します

言ってくれました



出勤最後の4月

入学式のフォーマルスーツの
販売の接客を
していた最後の出勤日

私は
感謝の意を込めて
全身黒ずくめのスーツ
黒いタイツに
黒いハイヒールで
出勤した

当日の朝
誰よりも早く出勤して
机の上をふいたり
掃除機をかけたりした

今までありがとう
この場所で
私を輝かせてくれて

いつものように
連絡ノートに目を遠し
同僚の書いたサインに
何度も目をやった

1日を終えるころ
店長やみんなから
お菓子をいただいた

長い間
ほんとうに
お疲れさまでした
美香さんに会えて良かった
これからも
お店に遊びに来てくださいラブ

みんなが
そういって
見送ってくれた

それから
社長夫妻に誘われて
お食事会を
していただいた

採用になった
あの日のことは
一生忘れません
そう告げた



店の通路に出たあと
私は
店の方を向いて
深々と一礼をした

社長と面接をした日

採用の電話に
飛び上がって喜び
晩御飯に家族に報告した夜

あんな大きな
ショッピングモールで
働くんだと意気込んで
建設中の店舗の周りを
車で走ってみた朝

初日に着る服を
みんなで選びに行ったこと

の素材の勉強会に
参加したこと

メーカーさんに
の畳み方を
教えてもらったこと

オープニングの日に
通路で
みんなで一列に並んで
いらっしゃいませを
連発したこと

売り上げが良くて
笑って飲んで
カラオケをした忘年会

クレームの電話の
対応に追われた日

セールの直前に
値札を張り続けた帰り
遅くなった夕日を見上げて
今日も
頑張ったなって
自分をほめたこと

38歳の
最年長で入った私と
若者の後輩逹が
仲が良かったこと



一礼したあと
私は
振り返らずに
その場を去ったショボーン

振り返ると
泣きそうだった

今までのことが
走馬灯のように
を駆けめぐって
泣きそうだった

いろんなことがあったけど
ここに来て
ほんとに良かったよ

学びのために
ここに
呼んでくれてありがとう
ここで
いろんなことを
勉強させてもらったよニヤリ

不思議なことに
私が退職を申し出た頃
店は
ショッピングモールの中で
別の場所に移転が決まり
違う場所に
移ることになった

そして
その場所には
改装して
違う店が様変わりしていた

まるで
私の思い出とともに
姿を消すかのように

ここでの学びは
宝石箱のようだった
キラキラ輝いて
春夏秋冬の衣装を身にまと
次から次へと来る
お客さんたちと
花を咲かせるのが
楽しみだった



ありがとう
私は
次のステージに
行くよおねがい

浄化は
どんどん
人を変えてゆく

浄化するたびに
新しい出逢いが
待っている

浄化
それは
本当の意味は
汚れを取り除いて
清めること

でも
それはきっと
違うと思う

次のステージに
行くために
自分清められること

少なくとも
私のなかでは
そう
答えが出ている