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毎年7000頭生まれる「競走馬」の多くは引退後に行方不明…競馬業界のタブーに挑む衝撃のルポ(レビュー)

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 二〇二三年の有馬記念を制したのは前年の日本ダービー馬「ドウデュース」だった。騎乗の武豊に「千両役者ここにあり」とアナウンサーが叫ぶほど見事なレース運びだった。

 

  このような中央競馬会の重賞レースに出走できる馬はひとにぎりだ。  競馬業界では毎年約七千頭のサラブレッドが生産され、一方では約六千頭が引退する。ではその引退馬はどこへ行ってしまうのか。 

 

 この話題は長らく競馬業界のタブーであった。種牡馬となったり乗馬クラブに引き取られたりするのはごく一部。多くが行方不明であることを知った著者は衝撃を受ける。

 

  ペットショップなどで販売される犬や猫には終生飼養を目的とするマイクロチップ装着が義務付けられている。馬のそれはペット業界と違い、主に血統管理のためのものである。  だから引退後、肥育場に行く馬は名前や経歴は破棄されマイクロチップも読み取らない。名無しの馬肉となる。

 

『セカンドキャリア 引退競走馬をめぐる旅』片野ゆか[著](集英社)

 

 だがここ数年「引退競走馬」を支援し、セカンドキャリアを作ろうとする活動が活発化している。取材を始めてすぐ、ハンディキャップがある子どもたちの支援活動をするセラピーホース「ラッキーハンター」に出会った著者はその可愛さに魅了され共同オーナーにまでなってしまった。それほど競走馬のころから愛嬌があり、厩舎のスタッフからも愛される存在だった独特の馬だそうだ。 

 

 この馬が引退後にセラピーホースという場所を得たのは僥倖だった。  骨折した馬は殺処分という常識を覆した馬主、支援団体を組織する競馬界のレジェンド調教師、馬語を理解するというリトレーニング責任者。 

 

 そして世界的な動物愛護の風が日本の業界を動かした。 

 

 思いもかけない方法で引退馬を飼養する人たちの話を読むと、動物好きの私は心が疼く。私も何か引退馬の役に立ちたい。読み終わるとすぐにネットで検索を始めた。

 

 [レビュアー]東えりか(書評家・HONZ副代表) 千葉県生まれ。書評家。「小説すばる」「週刊新潮」「ミステリマガジン」「読売新聞」ほか各メディアで書評を担当。また、小説以外の優れた書籍を紹介するウェブサイト「HONZ」の副代表を務めている。

 

 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 

Book Bang編集部

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~転載以上~

 

 

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