マニアックな読者の皆様、お早うございます。

いよいよGWも明日で終わりますね。
旅行や買い物で疲れ果てている方も多いと思いますが、明後日からは仕事モードに切り替えて頑張りましょう。

さて、相場が上昇し始めると証券会社や銀行は「収益が上がるこの機を逃してなるものか!」と、様々な怪しいデリバティブの拡販に奔走します。
通貨オプションや通貨スワップは基本的に法人しか契約できない数億円単位の超ハイリスク商品ですが、個人向け商品の中にも信じられない様なハイリスクロウリターンのものが存在します。

日経平均リンク債は、(一般に扱われている国債や社債等の)債券ではなくハイリスクが潜む極めて複雑な商品で、主に証券会社が表向きの高金利で、運用先に困っている(金融知識が無知な)顧客の購買欲をそそり、契約に持ち込んで手数料を稼ぐには打って付けのデリバティブ商品です。
実際に、巧みなセールストークに騙されて思わず購入した年配の方も少なくないようです。

これはオプション取引の一種で購入者は発行体に対するプットオプションの売り手になり、裏目に出れば投資金額の半値八掛けは当たり前と言う極めて損失リスクの高い商品に成り、本来は機関投資家の相対取引が主であり、個人向けに販売出来る事自体疑問である。

例えば、仕組み預金とかEB債などもその中の一つですが、本日は仕組債でも(最も購入者の多い)代表格である先述した日経平均リンク債なるものを分析してみましょう。
これは数ある仕組債の中の一例なので発行体の名前は伏せて置きます。

    例 日経平均リンク債 年率3.10%(税引前)

商品名

 2015/11/20満期 早期償還条項付ノックイン型日経平均株価連動円建社債

発行体

海外金融公庫(公社)

格付(※1)

A2(Moody's)/A+(S&P)

売出価格

額面金額の100%

利率(年)

3.10%(税引前)

発行日

2013/5/17(金)

発行額

8億円

利払日

年4回払 2月、5月、8月、11月の各20日(30/360ベース)
※初回 2013/8/20

満期償還日

2015/11/20

お申し込み単位(額面)

50万円以上、50万円単位

当社売出期間(予定)

2013/4/25(木)9:00~2013/5/15(水)18:00

当初日経平均株価

条件設定日(2013/5/20)の日経平均株価終値

早期償還判定水準

当初日経平均株価×110.00%(小数第3位を四捨五入)

早期償還日

満期償還日を除く各利払日

早期償還評価日

各早期償還日の5取引所営業日前

ノックイン事由

観察期間中の日経平均株価終値が一度でもノックイン判定水準と等しいかまたはこれを下回った場合

ノックイン判定水準

当初日経平均株価×70.00%(小数第3位を四捨五入)

観察期間

2013/5/20(受渡日)から最終評価日(償還日の5予定取引所営業日前)までの期間

最終日経平均株価

最終評価日の日経平均株価終値

最終評価日

満期償還日の5取引所営業日前

早期償還

各早期償還評価日の日経平均株価終値が、早期償還判定水準以上の場合、本債券は直後の早期償還日に額面金額の100.00%と当該利払期日に支払われるべき利金の支払をもって早期償還されます。
※早期償還した場合、利金は当該早期償還日分までのお受け取りで、以降の利金はお受け取りできません。

満期償還

本債券は、早期に償還または買入消却されない限り、満期償還日に下記の条件にて償還されます。
(1)ノックイン事由が発生しなかった場合、額面金額の100.00%現金にて償還
(2)ノックイン事由が発生した場合、額面金額×(最終日経平均株価 ÷ 当初日経平均株価)の現金にて償還
(ただし0は下回らず、額面金額を上回りません。円未満四捨五入)

取引所営業日

東京証券取引所の営業している日を取引所営業日といいます。

営業日

東京、ロンドンの銀行営業日(利払日、償還日が営業日でない場合は、翌営業日に繰延べます。ただし、繰延べた結果、翌月になる場合は前営業日に繰上げます。)

  • ※価格は額面100に対するパーセント表示を記しております。
  • ※本債券の売出は、当社約款規程集 PDFです。新しいウィンドウで開きます。第6章「外国証券取引口座約款」に基づいて行っております。
  • ※本債券に関しましては、契約締結前交付書面と目論見書のWEB閲覧又は郵送請求をされていない場合は、ご注文は受付できませんのでご注意ください。
  • ※本債券は、ユーロ市場で発行された円建債券です。
  • ※当初日経平均株価等の条件は、原則条件決定日の翌営業日にお客様のメッセージボックスへお知らせいたします。また、ログイン後の「債券」>「取扱実績」ページ内でもご確認いただけます。
  • (※1)金融商品取引法第66条の27の登録を受けていない者が付与した格付(無登録格付)です。
    本債券の格付に関しては、 「無登録格付に関する説明書」 PDFです。新しいウィンドウで開きます。をご覧ください。

ご注意

  • 本債券は、満期までの保有を前提とした特殊な仕組みとなっておりますので、中途売却される場合、売却価格が著しく低くなり、投資元本を割込むことがあります。ご購入に際しては、満期までの保有をお勧めいたします。
  • 本概要は、目論見書の記載内容の一部をわかりやすく表現したものです。(その結果、目論見書上の表現と異なる部分があります。)詳細につきましては、目論見書をご確認ください。
  • 本債券は、日経平均株価の変動に連動して利金および償還金のお受取金額が変動する仕組みを組み入れています。お申し込み、ご購入前に、「満期償還時の想定損失額」および「中途売却時の想定損失額」を必ずご確認ください。
  • 本債券の発行体の格付は引下げ方向で見直しの対象となっているため、売出期間中に格付が変更される可能性がございます。発生した際は、事象の内容を本ページ内に掲載いたします。あらかじめご了承くださいますようお願い申し上げます。

以上の様な商品概要ですが、これをご覧になってよく理解できると思う人がどれだけいるでしょうか?
逆にパッと見てピンと来る人は絶対に手を出さない詐欺的商品です。

ノックイン…70%に一度でも触れたら満期日(判定日)にその時の日経平均価格に連動して償還になる。
例えば、14000円が当初価格なら2.5年以内に一度でも9800円に触れれば連動して償還。
2年半後に8400円なら元本の60%と3.1%(30/360ベーシス)の金利しか返ってこない。

仮に1000万円の投資なら600万+77.5万=677.5万円…32.5%の損失である。

それでは、日経ダウが16000円になれば、いじゃないか?などと思う人は絶対にこの商品を購入してはならない。
何故ならば、商品内容が全く把握できていないという事になる。
詰まり、早期償還条項に書いてあるように判定基準日に110%になった時点で強制償還になる。

どういうことかと言えば、上記の場合は日経平均が15400円になった時点で元本と30/360ベーシスの金利が受け取れるだけで、日経ダウ上昇分の利益は全く享受できないという代物。

仮に上手く行っても株価上昇分の利益は全く取れずに2年半で1000万+77.5万
逆に裏目に出れば元本が50%以下にもなり得る超ハイリスク商品。

2年半の間に9800円迄下落しないと言う保証は全くないし、この様なギャンブル性の高い商品の保有期間が2年半と言うのは余りにも長い。単純に言えば1年でも長いが、期間が短くなれば数理計算上、発行条件が悪くなるので金融機関は販売しにくい訳だ。

色々と説明してもかなり複雑で分かり難いと思われるが、要はこの様な発行体が主導権を持ち、購入者が雁字搦めに条件で縛られた商品を買うなら、まだ日経平均のインデックス投信を購入する方がいいに決まっている…何故なら上昇すれば上昇しただけ素直に利益が享受できる。逆に相場が下落基調になりやばいと思えば、早めの損切りだって可能な訳だ。

リンク債の場合は下落時には「どうぞ、ノックインしない様に」とただ指を咥えて祈るばかりである。

事実、リーマンショックの時には募集額が総計数百億~数千億の日経平均リンク債が全てノックインして購入者は敢え無く撃沈した事がこの商品の怖さを物語っている。

では、発行体はどの様な運用をしているのか?
発行体が単純にプットの購入(仕組債購入者はプットの売り手)で、運用益を出すなら市場でプットを購入すればいい訳だがオプション料金コストの発生りすくがあり、それを回避する為に敢えて募集を掛ける意味があり、そこには絶対に利益を上げるための巧妙な罠がある。

発行体の運用に付いては幾つかの解説が書かれていますが、正直なところ間違っているものが多く、単にプットオプションを購入している訳ではなく、その間に何度も上下する相場の動き(ボタラリティー)の幅で頻繁な売買を行い利益を得ます。

その場合に、発行体(証券会社ではありません)は
先物を買うか合成先物を組成してデルタヘッジ(0~1)を掛けると言うのが基本的な仕組みです。ですが、単純にこのポジションを放置していてもこれだけではプラスマイナスゼロなので利益は出ませんよね。

そこで、償還までの間に相場は何回も上げ下げするので、組み込まれた自動売買プログラムに寄るデルタヘッジの調整(積み上げと解放)を繰り返すので相場が上下を繰り返す事によって利益が積み上がります。その際に、ノックイン価格(上記なら9800円)に近付けば、デルタは1に近付くのでオプションと同等の先物で対処しますが、いざ9800円になると思えば、ヘッジを一気に外す…詰まり、9850円~9900円の価格帯では恣意的にノックインさせるために大量の先物が解放されて、それに伴う日経ダウの詰み上がった裁定解消売りを誘発して現物も下落する。
そして、購入者はノックインして、30%損失の段階から株価と連動して投資金額が上下する。

発行体が確実に利益を享受出来る一方で、購入者は仮に上手く行っても雀の涙の金利がもらえるだけで、失敗すれば半値八掛け二割引の大きなリスクを抱える訳だが、こんな不条理な話があるだろうか?

兎に角、これと同じ仕組みで他社株転換社債と言うのもあるが、この場合には企業が対象なのでもっとボラタリティーが高くなり、購入者の見かけ上の金利は15%~25%と高くなるが、デフォルトや上場廃止になれば紙屑になるので最悪の事態に陥る。
実際に、ある不動産関連の企業のEBはリーマンショック後に上場廃止で紙くずになり、訴訟問題にまで発展した。

日経ダウリンク債はデフォルトはないが、今の様に昨年から50%以上上昇している過程で購入すれば下落の確率が高くそれだけ損失リスクが高くなるので絶対に購入してはいけない。            naniwa3335