2か月ほど前、お味噌を購入してくれた男性Mさん(60代)より、
お味噌についての感想を頂いた。
 
 
・・・早速(味噌の)味見をしましたところ、
食べた瞬間はるか昔の子供の頃を思い出しました。
私も田舎の農家の生まれでしたので
小さい頃に母が握ってくれた味噌だけのおにぎりの味と同じではないか
と思います。
 
・・・こんな体験はあまりありません。
母親のことを思い出すことも稀なので、こちらこそ感謝です。


(台所の棚作り)

 年上の方から、子どものころ食べた味がする、懐かしい、
という感想をもらうことは、これまでも時々あったのだけど、
ここまで具体的な舌の記憶の蘇りを知らせてもらったことは初めてで、

穏やかであたたかい気持ちをもらった。

母親が握ったおにぎりの味と同じ味がする・・
味そのものだけでなく、
子どもの頃の親との記憶を舌が呼び覚ます経験って、
なかなかないような気がするし、

「おにぎり」っていうところが、
またいいなあと思って。


(屋根作りは、冬の間は一旦お休み。再開が待たれマス。)


 Mさんはさらにうちの味噌について、
「特に感動するとか、特別美味しいというのではなく、
 普通の昔の味噌の味。」
と評してくれた。

感動した、この味噌ならダシがいらない、
このままでごはんのお伴になる、
そういう感想を頂くことが多くて、
そういう感想ももちろん喜ばしく、嬉しいのだけど、

この「昔の普通の味噌の味」がする、
という言葉は、別の気持ちが湧いた。


(味噌作りの準備。大豆を計る)

「嫁に来た頃は麴も作ったが、今はやらん。
 そいでも味噌のために大豆は毎年作る。
 味噌もな、自分とこで作るのがやっぱりウマイし、
 あげりゃあ誰にでも喜ばれる。」

「今は店に行けば、調味料だらけだな。
(○○の素も含めて)どうして今の人は
  あんなに色々必要なんだかわからん。
 ワシが見たって選べんしよ、(笑)
 味噌と醤油と砂糖と塩があって、あとは酢があればそれでいい。」

「買って来たものっていうのは、どういうわけだか次のものを試したくなる。
 あれはもっと美味しいものがあるような気がするからだが、
 結局自分で仕込んだもんがイイのよ。」



80歳前のTさんにとって、自分の手づくり味噌は、
60年ほど前にお義父さんから教わって以来
毎年作って、毎日食べてきた味。

~があればそれでいい、という言葉は、
いるだけで絵になるTさんだけに貫禄だった。


(今年1回目の麴作り 羽釜台リニューアル ) 

 

 うちの味噌作りは結婚した年から始めたから、

今年で20年になる。

 

最初は大豆も麹もすべて買っていた。

Wacが産まれた年に長野に越してきてから、

自分達で育てた大豆を使い、

育てた米を麹にしてもらうようになり、

そのうち麹も作るようになった。

 

味噌を仕込んできた年数は

まだTさんの1/3にすぎないが、

こうした感想を頂いたり、話を聞いて、
昔から手作りして食べ続けてきた味、

その地域ごと、当たり前にあった普通の味、

それさえあれば事足りるという味、

 

そういう味噌を

これからも作り続けたいと思った。