「綾小路匠です。」
先日、ワールドカップで大活躍した
日本代表が目の前に現れた。
「京子です。」
キョーコは、はにかみながら挨拶した。
「ホントに綺麗だなあ。俺、大ファンな
んです。友人がファンで話を聞いている
うちに会ってみたくなって。来てくれて
ありがとう！」
爽やかな好青年にキョーコはホッと
した。
(こんな大スター、私なんかを相手に
しないな。)
事実、匠は挨拶の後は女性に囲まれて
キョーコと話すことはなかった。
キョーコの周りにきたのは…。
「ねえねえ、携帯番号教えて？」
「京子ちゃん、お酒飲んでる？足してあ
げようか？」
いかにもワンナイトラブ希望系ばかり。
キョーコは「仲居精神」でかわしてい
た。
帰り際、匠が声をかけてきた。
「京子さん、あまりお話できなくて残念
でした。よかったらもう一件付き合って
いただけませんか？」
「でも、わたし…あの」
「大丈夫です。軽くお茶でも…と。
あ、友人も会いたがってたので来てもら
うと顔が立つんですが。」
匠が言ってることに嘘は無さそうだ。
キョーコは微笑みながら頷いた。
匠と店を出る。
「えー、匠。京子をお持ち帰りだ！」
女性陣から悲鳴があがる。
「京子ちゃん、またやりましたね。うふ
ふ、敦賀さんには秘密にしておくね。」
Jリーガーに腰を抱かれてご機嫌の
真奈が耳打ちした。
「真奈さん、違うっ/////」
匠が京子を連れてきたのは有名な
台湾スイーツの店。
「匠、こっちこっち。」
手をあげた人物にキョーコは驚く。
「貴島さん！」
キョーコは驚いた。そしてその隣には。
「敦賀さん！」
「こんばんは、最上さん。」
微笑む蓮に凍りつくキョーコ。
似非紳士スマイル。怨キョも発動。
「匠と俺は高校時代の親友でさ。俺が京
子ちゃんのことばっかり話してたらこい
つ会いたいといいやがってさ。真奈ちゃ
んに頼んで京子ちゃんとの合コンセッ
ティングしてもらっちゃった。でも、よ
く参加してくれたね。」
楽しげに話す貴島の隣で負のオーラ出
しまくりの蓮に凍りつくキョーコ。
匠からメニュー表を受け取りながら
キョーコは蓮の冷たい視線に顔が引きつ
る。
「偶然、敦賀くんと会って京子ちゃん
くるよといったけど信じてくれなくて
さ。ほら、どうよ敦賀くん。」
「意外だったね。」
キョーコを睨み付けてくる蓮。
縮みあがるキョーコ。
「京子さん、このマンゴー味なんてどう
ですか？」
親切にアドバイスする匠。
だが、この場面、親切はいらないと
切に思うキョーコだった。
End