「きゃああああっ!!」

   
  キョーコの悲鳴にだるまやの女将が

  部屋に飛び込んできた。

  「キョーコちゃん、どうしたの!」

  女将がキョーコに目をやると

  キョーコはすやすやと眠っていた。

  (…寝言だったのね。)

  女将はホッとして部屋を出ようとした。

  すると、キョーコはしゃべり始めた。

  「敦賀さん、こんなところでダメです!

  誰かに見られたらどうするんですか!

  私は敦賀さんの想い人でもないし…

  聞いてますか?え?そんなの嘘です。

  私は信じないです。ダメです!」

  女将は首を傾げた。

  (…妙にリアルな初夢だねえ。何故

  敦賀さんなんだろう?敦賀さんは

  楠さんと付き合ってるし、キョーコ

  ちゃんは何だかんだ言っても

  尚くんじゃないのかい?)

  キョーコは眠りながら笑顔を

  見せていた。

  (…楽しい夢をみているようだね。)

  女将はそっと部屋を後にした。

   
  数時間後。

   キョーコはがばっと起きるとバス

   ルームに駆け込んだ。

   そして、鏡を見て顔を赤らめた。

   首筋や肩にくっきりと残る

   薔薇色の跡。

   (…敦賀さん、好きです。)

                End