左右セットの小型パワードスピーカーで2016年発売と、うちのブログ記事では珍しくバリバリの現行商品。しかし外箱に打痕があり、本体背面のボリュームの軸が曲がっています。売り主によると通電はするが音は出ず、修理できるかわからないのでジャンク品として売るとのこと。保証は効かないが破損箇所以外は限りなく新品です。もったいない。


曲がったボリュームを回すとぐるりと一周してしまいます。ロータリーエンコーダ?まさかなあ。アンプが入っているアクティブ側(L側)の裏蓋を外して分解開始。小さい基板はBluetoothの受信基板です。ケーブルにスポンジが巻いてありますが、いずれ加水分解でベタベタのボロボロになるぞこりゃあ。



大きいほうの基板はプラスチック製のバスレフ穴付き裏蓋と一体化しており、基板を止める黒いタッピングネジとボリュームのナットを外してもまったく動かず、外れません。


結論から言えば、電源スイッチとパッシブ側へ接続するスピーカー端子のはんだ付けを外し、裏蓋と基板の外周の間にカッターの刃を入れて四辺をぐるりと止めている接着剤を切ることで基板を取り外せました。が、外してみるまで裏蓋と基板の間の内部の構造がさっぱりわからずどこにどれくらい刃を入れれば良いものか探り探りでかなり苦労。分解前にこの写真↓が見たかった・・・!



電源スイッチとスピーカー端子はスルーホールで、振動に対するヒビ対策なのか基板裏面にもランド面があります。吸い取り時に溶けたハンダが部品の足に沿って流れたために完全に外れず、基板取り外し時にランドのパターンが剥離しました。これを防いで綺麗に外すためには裏蓋と基板を上に見上げる状態に設置し、重力を利用して下からハンダを吸うしかないと思います。


また、接着剤はゴム状のものですが、接着面(基盤縁の白い斜線が印刷されている部分)にも細いパターンがあり、カッターの刃で削ってしまう可能性があります。というか基本的に分解修理のことを考えられていない造りに思えます。実売価格が8,000円を切っているので仕方がないのかな。背面を下にして落下させると同じ故障が起こり得ると思いますが。


破損しているボリュームは基板に垂直に付くタイプです。B503と印字されているので50kΩ Bカーブ2連のようです。このタイプは"9mm vertical dual potentiometer"で検索するとALPS、Alpha、BI/TTなどいくつかのメーカーが作っていますが、秋葉原だと千石電商2号店で売っているALPS製のRK09L-1240-F15-CO-B503が交換品として使えますので早速買ってきました。



モノタロウで買えるRK09L124000Zもたぶん使えると思うのですが、そちらはセンタークリック付きになります。


ボリューム固定用の2箇所のランドが剥げていますが、このランドはどことも導通が無いので爪で固定すれば問題ありません。ボリュームの向きを間違えないように取り付け、配線のスルーホール6穴はしっかりはんだ付けします。

あれ?ふと気付くとD21が無い。カッターで接着剤を切っている時に外れてしまったようです。DCジャックの芯側と電解コンデンサーのプラス側の間に入っているので逆接対策用と思います。チップ部品が無かったので、その辺にあったジャンク基板から外したDiを再利用で付けました。


ALPS製のボリュームと交換すると軸長は問題ありませんが、軸径とネジ溝の外径が元の部品より太いので、裏蓋の穴を広げる必要があります。テーパードリルを使って10mm穴にしました。なお残念ながらナットは付けられません。密閉固定が気になるなら爪楊枝で隙間にバスボンド注入です。


また、軸が元のローレット型からD型になりますので、ツマミも要交換です(ツマミ角度は0度)。


仮配線で動作確認が取れたので組み立てます。接着剤は密閉性を考慮して固着後も体積が減らない、弾性が残るタイプ(セメダインスーパーX)を使いました。


ネジで基板を固定してから電源スイッチとスピーカー端子をはんだ付けし、基盤裏で剥がれて断線してしまったパターンの代わりにジャンパ線を1本飛ばしました。


搭載されているアンプはTi製のTPA3130です。


鳴らしてみました。サイズはFOSTEX 6301Bより一回り小さく、軽い。静かな個人の部屋で使う分には良い音量ですが、複数人がいるやや騒がしい場所で使うには絶対的な音量が足りません。なるほど、より安価なPC用の小型スピーカーとは別格な音ですね。レビューに書かれているように指向性が鋭い感じで、周囲の反射の影響が出やすいですが、耳に向けて設置できれば定位はしっかり見えます。小口径なので超低音は出ませんが、高音もいまいち伸びませんで金属系の倍音に伸びがありません。そのせいか中音域の解像度が高いように感じられます。これと鳴らし比べるとFOSTEX PM0.4のほうが肉厚でビビッドな音に感じます。Bluetoothよりアナログ入力のほうがスッキリと澄んでいて良い音ですが、BTがあるとスマホや他のPCから配線を切り替えずに音が飛ばせるので、普段使いにはとても便利です。ノートPCと共にアマゾンプライムのカメラ用リュックサックに入れて、こたつトップで使えるDAW編集セットとして学生向けの貸し出しに使います。

(がんくま)