愛用中のRODE BLIMPもどきなショットガンマイク用のカゴ風防をステレオマイクに対応させるため、5pinXLR仕様へ改造しました。

過去記事の続きです。
marantz ZP-1 のペリペリ音対策
marantz ZP-1のクッションマウントを交換する

■検討
利用したいマイクは、ステレオ・モノラル切換マイクであるSANKEN CSS-5と、モノラル専用マイクのSANKEN CS-30です。CS-30は使う必要がないのでは?と思われるかもしれませんが、サイドの切れはCS-30のほうが上ですし、たかが数十グラムとはいえCSS-5のほうが重いのでモノラルでしか収録しないのであればCS-30を使いたい時があります。なおかつ、CSS-5がトラブった時に他のマイクが使えないと現場で詰むので、5pin化改造はするが通常の3pinマイクも使えるようにしておきたい。

そこで登場する秘密兵器がノイトリックのNA3F5Mです。


XLR3pinメスのHot/Cold/GNDが5pinオスのL+/L-/GNDヘ出力されます。こんなニッチな鉄砲玉(変換コネクタのこと)なんか無いだろ、とダメ元で検索したらありました。音声用ではなくDMX用ですが、試してみたところファンタム電源も含めちゃんと機能します。サウンドハウスのAXX235もこれと同じ接続のようです(現物は未確認)。


Aliexpressにも同等品があったので予備品として購入しました。



寸法はNA3F5Mとまったく同じで、重量はやや軽いです。




こちらは分解できます。1番ピンのGNDがコネクタ外周と短絡する接続になっています。NA3F5Mは短絡していません。


【追記】この中国から取り寄せたNA3F5M互換品をCS-30に取り付けて実際に録音で使ってみましたが、かご風防を上下に振った際にノイズ量に変化がありましたので調べたところ、3pin側のロックが甘くて振ると2mm程度緩むことがわかりました。GNDの接触量が変化して音に出るようです。マイク側コネクタとの相性なので、接続部をパーマセルテープでガッチリ固定するといくらかマシになりましたが、値段の差が出ました。


CS-30は全長が295mmと長いマイクで、これに鉄砲玉を挿し更に中継ケーブルを挿すと風防内に入らない可能性がありました。物理的にギリギリ入っても振り回した時にマイクやケーブルが当たると実用になりませんし、風防に当った風が中で減速するだけの距離も必要です。なのでZP-1のコネクタをL字型にして逃げないと駄目かも、とすら思っていました(後述)。現物を装着してみたところCS-30にNA3F5Mを挿した長さは352mmで、なんとか普通のコネクタでも大丈夫でしたが、これがZP-1で使えるマイクの最大長でしょう。かご部分の長さは前後のドーム型キャップを含めて47cmで、キャップを外した真ん中部分が355mmなので、これより長くなるマイクは実用にならないと思います。


Sennheiser MKH-416やRODE NTG-1/2等はCS-30より短く、鉄砲玉を挿しても問題ありません。残念なことにNA3F5Mの重量が64g加わるのでCS-30の軽さのメリットはスポイルされてしまいました。

■改造作業
古いケーブルを外します。グリップ部分のネジ2本を外して金属製のコネクタカバーを引き出します。

コネクタカバーからXLRオス3pinを取り外すために、黄色い矢印のネジを右に回して内部へ押し込み、ネジごとピン部分を引き抜きます。

端末部分は熱収縮チューブなどを使わず短く配線されています(この短さが重要)。


ケーブルを切断し、ピン部分とコネクタカバーを外して古いケーブルをグリップから引き抜きます。元のケーブルの外径は6mmでマイク側の3-11C(メス)コネクタの先端から取り外した3-12C(オス)ピンの根本までの長さが49cm、コネクター部分を除いた純粋な配線長は45cmでした。両端のはんだ付けに使う配線余長を考慮すると素材として必要な4芯+シールド線の長さは48cm位です。今回はカッド撚りの3ピン用マイクケーブル、カナレL-4E6Sを4芯+シールドケーブルとして流用しましたが、コネクタカバーの穴が狭くてL-4E6Sよりわずかでも太いケーブルだと通りません。L-4E6Sに熱収縮チューブを被せるともう駄目です。ママレモンを塗っても駄目でした。

他のコネクターから5pin部分を移植します。


ノイトリックの5pin製品はピン部分をネジで固定する構造にはなっていないので使えず、

ITTキャノン(5-12C)のピン部分を移植しました。固定がタッピングネジなので、ネジ頭の外周をヤスリで削ってコネクタカバーの穴にぴったり通るようにします。



さきほど短さが重要、と書いたようにコネクタカバー内のピン裏の配線余長が1cm位しかありませんで、極力短く作る必要があります。私は1.5cmで作ったのですがそれでも長すぎました。熱収縮チューブを抜け止めに使い、無理やり配線を押し込みました。



元のケーブルと同じルートでケーブルを引きまわし、マイク側の5pinコネクタ(NC5FXX)を付けます。L-4E6Sだと被膜色ではL/Rの区別が付かないので、テスターで調べてL側2本にマジックで印を付け、L/Rを間違えないようにはんだ付け。




NC5FXXとNC5MXXを使ってZP-1から録音機へのケーブルも作成します。録音機はZOOM F8なので別途XLR5-11CからXLR3-12Cx2本ヘの分配ケーブルが必要です。作ったケーブルの先を直接3-12Cx2本にするほうが接点数は減らせますが、現場ではミキサーバッグの外側でケーブルを切り離したい場合が時々あるのと、利用頻度は少ないながら5pin入力があるミキサーを持っているので両端5pinとしました。個人的感覚では3mのブームポールには7.5m位のケーブルが使いやすいので、カナレMR202-2ATで製作。



ZP-1のケーブルをそのままステレオマイクに挿せると大変スッキリして満足感が高く、録音のモチベーションが上がります。


鉄砲玉装着で普通のマイクも挿せます。


現行品のRODE BLIMPやMicoliveのグリップはZP-1とは違うデザインになっていますが、同じような改造が可能かもしれません。


■5pin L字型XLRコネクタについて
長いマイクをどうにかしてカゴ風防の中に収めるために、L字型のXLRコネクタの利用を検討しました(結局、使わずにすみましたが)。この時、使えるかも、と思ったのがノイトリックのNC5FRCです。


しかしNC5FRCはデッドストックとなっているらしく、現行品のNC5FRXはNC5FRCよりも大きくて風防の断面直径内に収まりません。コンパクトなNC5FRCがどうしても必要な場合どうしたら良いのか?

・解決方法その1
秋葉原のCompuAceや千石電商で購入できるカモン(COMON)社製のコネクタを改造する方法です。同社の製品には5pinのラインナップが無いので、3pinのL字型コネクタCA-FLを買ってきて、これにノイトリックのNC5FXXのインサートが入るのか試してみました。



入ります!逆にCA-FLのインサートはNC5FXXに入りません。カバーとインサートのかみ合わせ部分の凸凹のサイズが微妙に異なるのでしょう(途中までは入るので無理やり押し込めばいけるかもしれませんが、そっちの需要は無いはず)。


NC4FRC/NC5FRC/NC6FRC/NC8FRCにあたるものがどうしても要るんじゃ!という方には朗報です。国内調達で完結するのが利点ですが、ニコイチなのでちと無駄が多い。

・解決方法その2
中国のコネクタメーカーYONGSHENGの製品にNC5FRC相当のもの(YS1865)があってeBayやAliexpressで購入できます。



実際に輸入してみましたが品質はカモン製より上です。というかYongsheng(永生?)は寧波ノイトリック(Ningbo Neutrik® Trading Co., Ltd.)のブランドらしく、同社は日本のノイトリックジャパンと同様にNeutrikグループの企業でYS(YongSheng)やNYS(Ningbo Yongsheng)で始まる型番のノイトリック製品(REANブランドのフォンプラグなど)はここの製造だそうです。発注から到着まで2週間以上かかりますが、急ぎでなければこれを買うと良いと思います。



オス側(NC5MRC)の場合はCA-FLをCA-MLに、NC5FXXをNC5MXXに、YS1865をYS1875に読み替えますが、オス側については現物確認をしておりませんので同じことができるかどうかは不明です。

(がんくま)