以前書いた「Classic Pro CEMPW100をMicroDotのマイクで使ってみた」の続編です。この記事だけ読んでも問題ないです。


CEMPW100はサウンドハウスが販売しているオリジナルブランド、Classic ProのヘッドセットマイクCEM-1AKをミキサーやオーディオインターフェースにつなぐための変換コネクタです。


このコネクタを分解すると出てくる基板は2線式、3線式のECMマイクカプセルをファンタム電源で駆動できる汎用基板です。この基板を2枚使ってお手軽に変換ボックスを作りました。

※本記事はCEMPW100を本来想定の用途以外の目的で使っています。本記事を参考にしての工作は自己責任で行い、販売元に苦情を寄せたりしないで下さい。

CEMPW100を分解して基板を取り出します。XLRコネクタ側にある+ネジ1本を外してピンをラジオペンチで引っ張ると基板が出てきます。基板からミニXLRコネクタ側に向けて白黒2線か白黒赤3線の配線が伸びていますので、今回の用途では基板側で切ってしまいます。基板端のランドは4か所で、上からLED/VCC/SIG/GNDです。


タカチのYM-100ケースに組み込みます。基板に付いているXLRコネクタはそのまま流用します。トモカでXLR3ピンオスの機器パネル用コネクタを2個買いました。APEX製でしたが、おそらくITT製でも同じように使えるはずです。ノイトリック製は構造が違うので使えません。


買ってきたコネクタのピンを外し、代わりにCEMPW100の基板のピン部分を差し込んでネジで固定します。これでコネクタをケースに取り付ければ基板も固定されます。


あとはケース加工をして配線するだけです。今回は2線式なので、ECMの電源は信号線に重畳されています。Φ3.5mmジャックへの配線にはSIGとGNDを使います。


入力側はΦ3.5mmのミニジャックで、モノラル2個とステレオ1個です。モノラルジャックはプラグを挿すと信号経路がプラグ側に切り替わるタイプで、通常はステレオジャックからの信号がモノラルジャックを経由して流れ、モノラルプラグを挿すとそちらが優先される配線としました。



ミキサーにつないでファンタム電源をONにして無負荷の電圧を計ると、3.69V出ています。WM-61A互換のXCM6035カプセルを使った簡易ダミーヘッドマイクと、パソコン用に安価で売られている2極式のプラグインパワーマイクをつないで動作確認を行いましたがどちらも問題なく利用できました。



BinauralEnthusiast製のダミーヘッドマイクをつないでみましたが、こちらも問題なく動作しました。ただし、BinauralEnthusiast製のダミーヘッドマイクに付属する純正のファンタム電源アダプター(下の写真左側)と比べると音の印象が異なります。


ゲインは純正アダプターのほうが上です(聴感上はCEMPW100に対して10dB位上がる感じ)。S/NはCEMPW100のほうが良いです。同じカプセルの音を聞いているのですが、純正アダプターのほうが奥行きが感じられてビビッドな感じがしますが若干ギラギラした音でリップノイズを拾いやすい印象です。中低音が膨らむのかVU計が振れやすいです。CEMPW100のほうは枯れた音というか、なだらかで地味な感じの音で耳元に近い感じが薄れます。よく聞く安価なECMカプセルの音という印象です。チェックに使った3つのマイクを差し換えて聴き比べても同じような印象です。コストとサイズ重視なCEMPW100の基板に対して、純正アダプターの中身は高級オペアンプ?なのかもしれません。

この変換ボックスを持っていると2極式のパソコン用プラグインパワーマイクを業務用のミキサーやオーディオインターフェースで安全に使うことができます。しかしCEMPW100は1本2180円しますし、今回のように基板だけ欲しい場合は基板を抜いた後の外側が無駄になってしまいます。AliExpressにこれと似たような基板があって1枚400円ほどで買えます。取り寄せてみました。


もともとはSM58のようなハンドマイクや、C451のようなペンシルマイクの胴を使ってECMカプセルを使ったマイクを作るための基板と思われます。サイズもCEMPW100の基板とほぼ同じなので同じ加工で使えると思います。ただし、この基板は2線式専用です。


また、ECMカプセル用の重畳DC電圧が無負荷で8.3V出ています(電圧はファンタム電源供給側の機器を変えても安定していました)。現在のほとんどのECMカプセルは~10V位まで動作するものが多く、乾電池と同じ1.5Vよりも5V以上の高電圧で使ったほうが出力波形上もS/N上も性能が向上しますから、カプセルが耐えられるのであれば悪くない仕様と思いました。


XCM6035カプセルをつないで音を聴いてみました。負荷時の電圧は7.74Vになりました。若干音が硬いかなという印象はあったものの、感度もS/Nも特に問題なく動作します。この基板4枚とECMカプセル4個を使うとAmbisonicsマイクが自作できるはずです。

関連記事:Classic Pro CEMPW100をMicroDotのマイクで使ってみた

(がんくま)