以下の情報は2023年9月時点の実例です。譲渡方法は変遷しますのでAvidのWebサイトで最新の方法を確認するようにしてください。実例中で行ったのはPro Tools Ultimate Perpetual Licenseの譲渡です。Perpetual Studio Licenseの譲渡も同様に行えるはずですが、金額やリンク先などが一部異なります。サブスクリプションライセンスの譲渡は行えません。ライセンス譲渡はAvidアカウント内の製品登録情報の書き換えで行われますので、譲渡する側とされる側は2人ともAvidにアカウントの登録がある前提です。



■大雑把な流れ
1.譲渡する側とされる側双方で必要な情報を用意
2.iLokから譲渡する製品をdeactivateしてiLokアカウント内(クラウド)に戻す
3.AvidのWebサイトからライセンスの再登録申請の書類(PDF)をダウンロードして必要事項を記入
4.Avid shopサイトでASC(Avid Support Code)を購入(事実上の譲渡手数料)
5.ASCの番号を使ってAVIDのカスタマーサービスに再登録申請のケースを開く
6.申請内容に不備がなければAvid側作業で申請から5営業日程度で譲渡完了

■譲渡に必要な情報
【譲渡する側(前所有者)が準備】
・製品が登録してあるiLok ID
・Avidアカウントに登録しているメールアドレス
・Avidアカウントに登録している氏名と住所
・電話番号(※必須ではない)
・印鑑
・譲渡する製品のSYSTEM ID
SYSTEM IDはAvidアカウントの自分の製品リスト("View My Products")から見るか、iLokマネージャーに自分のアカウントでログインしていれば確認できます。


【譲渡される側(新所有者)が準備】
・Avidアカウントに登録しているiLok ID
・Avidアカウントに登録しているメールアドレス
・Avidアカウントに登録している氏名と住所
・電話番号(※必須ではない)
・印鑑
・費用11,550円と支払い手段(クレジットカード、paypal、Google Payのいずれか)
・AvidのWebサイトへアクセスするためのパソコンとWebブラウザ
※スマートフォンでのアクセスは推奨しません。
・ドキュメントスキャナー(コンビニ複合機でもOK)
・ASC番号(後で説明します)

■どちらがAvidに手数料を支払って申請をするか
中古売買やオークション等で店舗を介さず見知らぬ人同士で直接ライセンスを譲渡する場合、どうしても氏名やメールアドレス等の個人情報を共有することになります。基本としては譲渡する側(前所有者)が手数料を払って手続きをするよりも、譲渡される側(新所有者)が主体的に手続きをすることをお勧めします。何故なら、譲渡する側が手続きをする方法ですと譲渡される側のiLok IDやAvidアカウントの登録情報を知ってしまうので、一旦ライセンスを移行し代金が支払われた後で再びライセンス移行を申請して取り返す事が可能であるからです。実際に売買を行って作業を始める前に、当事者間で作業手順や支払いのタイミングを話し合ってトラブルを避けるようにします。なお、手続き途中に書類を郵送する場合は、譲渡される側の住所氏名を譲渡する側へ伝える必要があります。

■譲渡する側の作業
元の持ち主は、iLokマネージャーを使ってライセンスをiLokからdeactivateしてiLokアカウント内に戻します(対象製品を右クリックしてdeactivateを選択実行する)。


以下のライセンス再登録に関するページを開き、下の方にあるリンク先から「Avid オーディオ製品 再登録申込用紙」のPDFをダウンロードします。

Avid Pro Tools オーディオ製品の再登録方法は?
https://avid.secure.force.com/pkb/articles/ja/faq/en363631

「Avid オーディオ製品 再登録申込用紙」(直リンク利用は非推奨)
https://resources.avid.com/SupportFiles/PT/Avid_Audio_TOO_form_202307_JP.pdf

PDFの3ページ目が提出する申込用紙ですので上半分に必要な情報を記載し、印刷・捺印します。


記入内容に間違いが無いか確認できたら、譲渡先に郵送します(届いた届かなかったトラブルを避けるために受け取り確認ができる簡易書留やレターパックを利用すると安心です)。

■譲渡される側の作業
「Avid オーディオ製品 再登録申込用紙」のPDFの1~2ページが手続き方法の説明書になっていますので、あらかじめダウンロードして熟読しておきます。この用紙で手続きができるのは、

・Avidハードウェア製品(本記事では対象外)
・ProTools HD/UltimateではないVersion9以降のProTools Studio、プラグインとその他のオーディオ関連ソフトウェア
・ProTools HD/Ultimateソフトウェア

の3つです。ProTools HD8以前ですとライセンスがiLokアカウント内にある場合はASCを用いずに他人のiLokとの間でライセンストランスファー(有償)が可能で本記事の対象外とします。

Ultimateの手続き方法は2ページ目に記載があります。


譲渡元から書類が手元に届いたら内容を確認し、必要な前所有者の情報が全て記入されているかどうかを確認します。確認できたら記入の練習用にコピーを取っておくと良いでしょう(最終的にはPDFかPNG等の画像データとしてAvidへ提出することになるので、捺印したあとすぐスキャンして以後の作業は画像ファイルに記入していく手もあります)。

AvidのWebサイトへ行き、自分のアカウントでログイン。

「Avid オーディオ製品 再登録申込用紙」のPDF記載のURLからAvidショップサイトヘ行き、ASC(Avid Support Code)を購入します。ASCとはAvidに有償サポートを依頼するための権利で一般的な技術サポート等にも用いられるものです。本来はライセンス譲渡専用の手続きや手数料ではありません。
※ASCの説明 https://www.avid.com/ja/learn-and-support/single-incident-support

購入するASCは譲渡対象製品により異なりますので、PDFを確認し、間違って別製品用のASCを購入しないように注意します。以下に記載のURLと価格は2023年9月現在のものです。

Pro Tools Ultimate用のASC(\10,500+税)
http://shop.avid.com/ccrz__ProductDetails?sku=AR-AV-ASCPTH-00


ProTools Studio用のASCはこちら(\4,400+税)
http://shop.avid.com/ccrz__ProductDetails?sku=AR-AV-ASCPTL-00


支払い方法はクレジットカード、Paypal、GooglePayのいずれかに限られます。Avidショップサイトは重くて反応が悪く途中で反応が無くなったりします。根気がいります。無事ASCが購入できたらAvidから電子メールが届きますが、そこに再登録申込用紙へ記入が必要なASC番号は書かれていません(SKUとOrder No.のみ)。


【ASC番号の確認方法】
Avidアカウントへログインし、"View My Products"(私の製品を見る)の中にASCがあるかどうかを確認します。無い場合は「まだダウンロードしていない製品」をクリックするとあります。アクティベートボタンを押すと自動でダウンロードコードが入りますので「製品の登録」をクリックします。



"View My Products"に戻ると下記のようにASCが表示されているので、開くと9桁のサポートコードが見えます。


これを再登録申込用紙に記入します。


以上で必要な情報が揃いましたので、間違えないように再登録申込用紙に記入して完成させ、アップロードできるようにPDFやPNGのような画像データにします。会社や自宅にドキュメントスキャナーが無い場合はコンビニの複合機でスキャンしてUSBメモリー等で持ち帰ります。

PDF記載のURLから"Using Your ASC"(ASCを使用する)画面へ行き、有効なASC番号を入力しSubmit(提出)します。
http://avid.force.com/ASC/ASCWebToCaseHomePageJA


サポートケースの入力フォームが開きます。前述のようにこのフォームはライセンス譲渡専用ではなく問い合わせ汎用です。プルダウンメニューで順次DAWから"ProTools Ultimate Software"を選び、必須項目をすべて記入します。


国と言語にJapan/Japaneseが選択できるので、私の場合は名前や内容を日本語で書きましたが、その後の返信は外国人の担当者名ですべて英語で来ました。一応Avid側が対応してくれて日本語でやれましたが、本来は英語利用が前提のようです(と言っても書類自体が日本語なのだけれど)。


添付ファイルの追加をクリックして画像データ化した再登録申込用紙をアップロードします。私は最初スマホ(Android)のChromeでやっていましたが、PDFをアップロードできませんでした。最初からパソコンのブラウザを使ったほうが良いと思います。

次へをクリックして登録内容を確認するとケース(事案)として登録され、ケース番号が発行されます(ライセンス譲渡専用のサービスではないので問い合わせの1つとして扱われます)。ケースとして登録したという英文のメールが届き、このメール中のURLや、単一サポート案件のページにケース番号を入力することで「ケース詳細」が表示できるようになります。



ケース登録の確認から1~2時間後に、Avidカスタマーサポートの担当者から「内容を確認したのでライセンス移行作業を進める、5日以内に連絡する」という受理確認の文面の英文メールが来ました。申請したのは水曜日の昼頃で、週末は営業日に含まないと思っていたので火曜日か水曜日あたりに連絡が来るのかなと思っていたら、日曜日に日付が変わった頃の午前1時くらいに「作業を完了した、ケースはこちらで閉じた」という英文メールが来ました。



早速Avidアカウントの製品リストを見ると譲渡されたSYSTEM IDのライセンスが増えており、製品のダウンロードリンクもあります。自分のiLokアカウントにも表示されているのでアクティベートもできました。ライセンス売買であれば、この確認ができた段階で譲渡成立です。


■ProTools永続版のライセンス譲渡のゆくえ
2022年春以降AvidはProToolsの永続版の販売を停止しましたのでProToolsを新規で買う人の選択肢はサブスクリプション版購入以外になく、どうしても永続版を手に入れようと思えば本記事のように永続版ライセンスを持っている人から譲渡してもらう他に手段がありませんでした。

しかし本記事執筆当日の2023年9月22日にAvidから永続版ライセンスの再販開始案内が出ました。よって今後、本記事に沿ってライセンス譲渡を行う需要は減るものと思います。例外は古いProToolsでしか動かない古いハードウェア(HD core/accelカード等)を使いたい場合に、その頃のバージョンから継続して維持されていたライセンスを含めて譲ってもらう場合や、DTMを辞める方から市価より安く譲ってもらえる場合と思います。

本記事は2023年9月時点の内容ですので、実際に譲渡を行う際にはAvid公式Webサイトで必ず最新情報をご確認下さい。

(がんくま)