某社の放出品で新品不良と判断されたらしいSHURE SRH840が安価に売られているのを見つけました。SRH840はモデルチェンジして現在は2代目になっていますが入手したのは旧モデルです。まともに買えば2万円以上する高級ヘッドホンなのですが箱や付属品の交換用パッドも付いてお値段は4千円ほど。



旧モデルはネック部品がプラスチック製で破損しやすい傾向があるようで、入手したものも破損していましたがまだ原型を保っており使える状態でした。3Dプリンター用のデータサイトに該当部品のデータがあり、3Dプリンターを買う良い機会かな、と思ったりもしましたが・・・。


こちらのブログに「ATH-M50用のヘッドバンドがそのまま使える」とあり、私もこちらの記事に沿って交換してみることにしました。

SHURE SRH840の折れたヘッドバンドを修理する。(ねこじゃらし。)
https://nekojarashi.net/repair_srh840/

■ヘッドバンドを輸入する
AliExpressにはATH-M50用のヘッドバンドを売っているショップが複数あります。写真を見る限り同じ商品もあるようですが少し違うように見えるものもあり値段もバラバラです。販売数が多くて値段がこなれているショップから買ってみました。最近のアリエクはスピード配送ですと昔よりだいぶ到着が速く5日で届きました。

Small CE Store
https://ja.aliexpress.com/item/1005001586118236.html


ATH-M50純正品は合成皮革部分にでかでかとメーカーロゴがありますが取り寄せたものにはありません。スライド部分のバンドも金属製で造りは普通に良いと思います。純正品と比べたら耐久性や細かい部分の造作が劣るのかもしれませんが。






■交換作業
まず入力ジャックがあるL側から。イヤーパッドを外し、ネジ3本を外してハウジングを分解。



この時、外したネジを不注意で近くに転がしておいたところドライバーユニットの磁力に吸着されてしまい中央のドーム部分が凹んでしまいました(写真は透明なのでわかりにくいですがネジを取り外した後も凹んだ振動板)。


ラジオペンチで慎重にネジを取り外し(一般的なヘッドホンより磁力が強い感触)、周囲から空気が入らないように目張りをしてから中央部分にゴムホースを当てて口で吸い、無事ドームの凸部が回復。幸い音に影響は無かったですが破れていたら悲惨でした。ネジや金属物は吸着されてしまうので離れた場所に置く!


極性を間違えないようにはんだ付けを外す前に写真に記録し、ヘッドバンドを渡る側のケーブルのはんだ付けを外してハウジングの穴から引き抜きます。


ネジ4本を外してハウジングのパーツを2つに分け、ハンガーアームの爪を抑えているピアノ線を抜いてアームを取り外します。


取り外したアームの先のプラ部品は外せるようです。しかし、もしかすると3Dプリンターで欠損部品を作って元のヘッドバンドを再利用する日が来るかもしれないので移植しませんでした。


新しいハンガーアームを取り付けます。プラワッシャー1枚程度のぐらつきがあるかな?と思いましたが、最後まで組み立ててみるとぐらつきは無く本当にぴったりです。ハウジングのパーツには向きがありピアノ線を押さえる突起があります。ハウジングの向きや天地を間違えるとすべての作業がやり直しになるのではんだ付け前に良く確認します。


ヘッドバンドを渡るケーブルは元のそれより見た目細いですが、内部のリッツ線の太さ自体はさほど変わらないように見えます。オリジナルのケーブルは赤色と胴色で新しいものは緑色と胴色なので、赤であった所に緑をはんだ付けします。リッツ線の先端は最初から半田メッキ処理してあるのでショートしないように付けるだけ。ハンガーアームを押さえるピアノ線はほとんど効いていませんが無いよりマシ?実際にはアームが折れない限り抜けることはないでしょう。


SONY MDR-CD900(無印)にMDR-CD900STのイヤーハンガーを付ける場合と同様にハウジングの縁にケーブルが通っていた穴が残ります。元のヘッドバンドに戻す場合も視野に入れビニール系接着剤で塞ぎましたが、実際にはこの穴はハウジングの外側なので音響的には塞いでもまったく意味がありませんでした。


続いてR側を分解します。こちらは配線がシンプル。


分解中に破損しかけだったプラ部品が崩壊してハンガーアームが脱落してしまいました。風前の灯だったようです。


こちらも極性を間違えないように注意してはんだ付けしなおします。


組み立てて左右から音が出るか、位相が合っているかをチェック。

■修理完了
最初からこういう製品でしたよ、と言われてもまったく違和感の無い仕上がりです。途中でも書いた通りハウジングのぐらつきもなくピッタリです。装着感で言えば交換前の元のヘッドバンドのほうがホールド感が高く高級感がありましたが、交換後は全体にコンパクトになり取り回ししやすいです。家庭用ではなく録音現場で使う身としてはこちらのほうが使いやすい気がします。


上の写真でアームの脇にある小さな白い丸が塞いだ穴で、接着剤が乾いた後は透明になるので目立ちません。

装着時に真横から見たロゴが斜め後ろ上がりになりますが、それはそれでかっこいい!(ということにしておこう)。


実用上問題が感じられるほどの音質変化もありません(もっと耳が良い人が聞くとどうだか知りませんが)。高価なヘッドホンだけあって高音から低音まで一通りちゃんと出ます。若干高音が刺さる感じがあり、MDR-CD900STより密閉度(遮音性)が高く、低音の厚みや全体的な音の鮮烈度はSennheiser HD25ほど強くなく優等生的な音、という印象です。

本記事を参考にした修理や改造は自己責任でお願いします。

(がんくま)