すごい異才な才能を持つ友人から「今度本を書きたいのだけども」という相談を受けて、僕は「他人の相談事をネタにして生きてきた」という業を背負って生きている人間なので、自分の考えをブログという形で書いていきます。
■ 本=教科書的な世界
はじめて本を書いた時の衝撃って今でも忘れられなくて、本って僕は本当に「魔物が潜んでいる」と感じたのです。
たとえばなんですけど、こういうブログの文章とかでも、「いいね」とか読んでくださっている方からの反応が良い記事でも
・本にして、紙に印刷して、縦書きにする
となると、読み手として手に取ると全く感触が変わってくるのです。同じ文章なのに。
また、本という形にすると、どうしてもひとつひとつの「説明」とか「私はこう思う」を言い表すことが「固く」なっていってしまう。
「本は教科書。ブログは鼻歌」
という感覚が僕にはあるのですが、本ってどうしても「ちゃんと説明しないといけない」という箇所が多いから、教科書的に固くなる気がします。その固さを取るためには、僕はブログが大事になんじゃないかと思っています。
別に「ブログを書いた方が良い」という勧めをしたいわけではなくて、ブログって「曲として完成させなくて良い、鼻歌の集大成」になってくれるものなのです。
ブログって全部の投稿なり、全部の記事に「私はこう考えます」というオチとか結論をつけなくても良い、すごい希少なメディアなのです。「書いてて面白くなってきたけど、明日朝早いからもういいか!おやすみなさーい」を言えるメディア。
もう少し、メディアという形で言うとブログの「鼻歌の集大成」ってラジオに近い気がして、ラジオって「うーん、それはわかんないなぁ」と言えるメディアなのです。
「わー、その話題すごい面白いけど、ちょっと今回はこのテーマにも触れなきゃいけないから、今度また違う機会でやりましょう」
って言えるメディア。
それが、テレビになるとテーマがもうちょっとカチッとしなければいけない。だって、ある健康番組で肝臓の大切さを伝えている時に、「私は豆腐ダイエットを大失敗しました。多分、豆腐の上にカツ丼を載せたからだと思います」とか、そういう面白い話にあんまり脱線出来ない。
本ってそういう意味で「きちんと説明しなければいけない」とか「テーマをある程度きちっと決めなければいけない」という意味で、やっぱり教科書的であり、テレビ的な世界でもあると思います。
■ 伝わりにくいことを、ここぞとばかりに書く
本を書く上で、僕が一番大切にしてきたことって
「他人に簡単に受け入れられないようなことを、ここぞとばかりに書く」
というものでした。
喋りが上手い人って、文章を書くのが苦手だったりします。そしてその逆に「こんな美しくて力強い文章を書く人ってどんな人だろう」と思って、その著者の講演会とかに行くとすごく「喋るのが苦手」と公言している人も多いのです。
ですから、本を書く上ですごく重視しなければいけないポイントが
「普段自分が喋っている言葉が、何%ぐらい相手に伝わっているか」
という客観的目安になるんじゃないかと思っています。
「大体この人がみんなの前で喋ると、70%ぐらい伝えたかったことと、相手が理解するポイントが合致する」
ってなると、つまり、話が上手くて、その人の話をみんなが「うんうん」とスムーズに聞いてくれる場を作ってきた人って、もしかして文章にすると「なめらか」過ぎるかも知れない。
人に話して「うんうん」って聞いてもらえる話って、文章にすると、完全にスルーされる話になる可能性があります。
「え、それどういうことですか?」って引っ掛かる話の方が、文章にすると面白くなる。そこから変な空気をちゃんと放つことができる。
本は格闘だと思っています。一番「伝えたいけど、この感覚をわかってくれる人いるかなぁ」と不安になって、もがいて格闘する気持ちだけが面白さになると信じるしかない。笑
「あー、私はね、こういうアイデアを元にこの商品を開発したら大ヒットして。今ではハワイに年9回行ってます」
って、多分「ふーん」で終わるのです。
「なんでこんなどうでも良い商品を開発しようと思ったか」
って、そういう「どうでも良いところ」って、他人が一番聞きたい。
本を書く上で一番大きな「基盤」って、これは個人的な意見なのですが「スムーズに構成がいかなくて良い。スムーズに行く時こそ用心しなきゃいけない(=私は今ではハワイに年9回行ってます)」んじゃないかと思います。
一番伝えにくいテーマの泥沼にちゃんと顔面ごと突っ込む。
10人中3人の人が「わー、これを良く言語化してくれた」と言ってくれることを目的に、顔面ごとちゃんと泥沼につっこむ。でも、泥沼の住人になってしまってはダメで、ちゃんとシャワーを浴びて身を綺麗にする大切さも知っている人。
まとまっていないのですが、ブログという鼻歌の集大成メディアなのでこれにて失礼します。