この話は何回もしたり、書いたりしている話だし、登場人物にご迷惑がかかるかも知れないのですが。

 

もう10年以上も前になる話なのですが、何の因果か「占い」というものをお仕事にさせて頂いて、その時ってもう何か毎日が「必死」でしかなかった記憶があるのです。

 

もちろん今は今で必死なのですが、口コミだけでやって、自分でも当たるかどうかわからない占い(すみません)をして、何をやったらお客さんに喜んでもらえるかとか、「何も未来が見えない場所で、手探りでやっていた」という毎日があったりしました。

 

その時はまだ若かったこともあって「絶対に1位をとってやる」みたいな。どうでしょう。もう本当に抽象的で具体的ではない目標を立ててやっていたり、深夜のラーメン屋で「仕事とは」とかそういう話もしていました。今はもうさっさと家に帰って寝ます。

 

一般的なお仕事とはなかなか言えないところで、ご飯を食べていく。

 

そのためには「何がなんでも自分が必要とされる人間にならなきゃいけない」と思って、仕事で自己実現をしようと思っていたのです。

 

占いの仕事を何年か続けた後、幸いにも色々な人に手助けしてもらったり、お客さんにおにぎりとかをもらいながらもやっていた頃、僕には2歳年上の兄がいるのですが、その兄に呼ばれて名古屋まで出張しに行ったことがありました。

 

2歳年上の兄は、犬の卍丸(こっちゃんの先代のパグ犬)と末弟である僕を何かと心配してくれて、それで自分の会社の人に僕を紹介してくれて、それで出張で見に行く機会がありました。その出張の機会があった時に「あ、もう自分の仕事を自分の自己実現にしちゃいけない」と強く感じたことが起こりました。

 

何人か兄から紹介された人を占った後、20代前半ぐらいの容貌の女性が席に着きました。

 

その人は少し体調が悪そうに思ってしまいました。

 

その人がやっているお仕事に関しても、そのお仕事は今まで彼女がやってきた専門分野とかけ離れていた世界であったり、無理をする毎日で日々消耗していくような話もありました。

 

それまでの自分だったら、「今の仕事を辞めて、違う世界に行くのもありなんじゃないか」と勧めていたと思います。

 

だけど、今でも覚えているのですが、その人の目がとても強くて、とてもじゃないけど「こちらがなんのカロリーも使っていない、ありふれた言葉を伝える」なんてことはできないと直感的に感じました。

 

ここの部分をブラック企業推奨みたいな形で読まないで頂けたら嬉しいのですが、「頑張って、乗り越えて、周りの人に恩を返していきたい」と言うその女性に向かって、楽を取るようなことを提案することはできませんでした。

 

人は生きていて、楽を取れない時がある。楽を取りたくない時がある。

 

その人から1時間占いをして5千円の料金を受け取った時の感覚を今でも覚えているのです(※ 兄紹介強制割引キャンペーン)

 

自分が仕事で受け取るお金は、誰かの生活によって、誰かの気持ちによって、誰かの誠意によって用意されたお金だと。

 

それを感じた時に、「もう自分の自己実現のための仕事をするタイミングではないのかも」と思いました。

 

あの時に渡されたお金があったから、自分はプロとしての自分を持つことができました。

 

人間って、もちろん努力とかもあるかも知れないけど、誰かによって与えられた想いとかモノによって「何者かになる」ってあるんじゃないかと思いました。

 

大切な初心として、書き残していたいと思いました。