まだまだ、テレビやネットニュースに心を痛める日々が続いています。

 

各局のアナウンサーも少しずつ能登半島の震災現場に入ってきたようで、現地からのレポートも多くなってきました。

 

 

 

能登半島地震は元旦に起きたことで自治体やメディアの動きが少し遅いように見えましたが、どうやら「半島」という地形もネックだったようです。

 

つまり、半島の奥まで行く道が少なく、その道が無数の土砂崩れや陥没などでなかなか通れなかったようなのです。

ネット回線が通じず現地の状況が分かりにくいのと同時に、高齢者が多いためSNSで情報の共有というのもなかなかできず、行ってからじゃないと通れる道が分からないという状況だったみたいです。

 

 

支援物資のトラックが渋滞し、重機もあまり入れていない状況のようなので、まだまだ一般人が行っていい状況ではないようです。

 

 

 

こういう事態になるとすぐに「国がやるべきことをやってくれていない!」と騒ぐ人がいますが、政府は地震の後すぐに「現地からの要請を待たずにプッシュ型の支援をする」と発表していましたよね。

 

本来なら、災害時は被災自治体からの支援要請があって初めて国が動くものなんですよ。

自治体の「自治」は最大限認められているんです。

 

ただ大きな災害の時は、自治体の体制が整うのにも時間がかかることが多く、それを待っていると人命に直結するため、近年、大災害の時は要請がなくても支援物資の配送や自衛隊の派遣をすることが増えています。

 

阪神淡路の時に、自治体からの要請を待っていて初動が遅れたことに対する反省もあったのでしょうか。

 

 

今回は確かに物資の搬入が滞っているように見えますが、道がズタズタで車が通れていないのであれば、支援物資の滞留はやむを得ない部分があります。

 

政府が海外の支援を断ったのも、被災地域が狭く細く、移動が困難なため大人数を展開できないからだと思います。

複数の地域から大量の人員を送り込める場所であれば全てがもう少し早く動くんでしょうが、今回のように迂回する道もない地域では、人海戦術のための人間を送り込むのがそもそも難しいということです。

 

東日本大震災の時は被災地域があまりに広範囲で、その隅々に支援物資を送るのに手間取りましたが、今回は道が狭く大型車両が通れないことによる滞りです。

 

政府のせいでも自治体のせいでも、ましてや被災者のせいでもありません。

そこは間違わないようにしなくてはいけません。

 

 

 

7日から一般車両を通行止めにして支援物資を運ぶのを優先するそうですが、つまり個人で支援物資を運ぶとかボランティアに行くとかは、今の段階では邪魔にしかならないということですよね。

 

また、ここ数日被災地での窃盗について多くの情報が上がってきています。

東日本大震災の時も熊本地震の時も、住人が避難所に行ってる隙を狙って住居侵入が多発していました。

特に福島では地域丸ごとごと避難していたので、窃盗はかなり多かったようです。

本当にどうしようもない外道はいつの時代でもいるわけですが、そういった泥棒を警戒して全国から警察が集まりパトロールを強化していたのは知っています。

(おかげで、ナビに目的地の住所を入れようと車を止めた途端、職質されましたチュー日本の警察マジ優秀!)

 

そういった泥棒たちを中に入れないためにも、当面は一般車両の通行止めはやっていいと思います。

重機が入れない以上、人海戦術による清掃などもできませんし、ボランティアも迷惑なだけになってしまいますから仕方がないですね。

 

被害が少なかった地域ではボランティア募集が始まってきたようですが、やはり市内在住者に限るそうです。

まあ、窃盗犯が多発している状況では外部の人間をあまり入れないというのも正しい判断だと思います。

 

 

東日本大震災のボランティアも、だいたいはボランティアセンターで用意したビブスをつけて活動していました。

ちゃんと正規の窓口から派遣されたボランティアですよと分かるようにです。

 

それをつけずに家の中に見知らぬ人間が入ってきたら泥棒ですよってことですね。

 

 

そういった、まだ準備が整っていない場所に行くのは現地の方々に迷惑をかけるだけなので、ボラ経験が豊富な方であってもしばらくは現地の方から直接依頼を受けたというような場合を除いては行かないのが賢明だと思います。

(被災地をアクセス稼ぎや売名に使うYouTuberや政治家には本当に腹が立ちますねプンプン 

 

 

 

そしてもう一つの重大事故。

JAL機と海保機の衝突事件をきっかけに、なぜかペットの機内持ち込みについて話題になっているようです。

 

これはあれですよね。

もしJAL機に大勢の死傷者が出ていたら、きっと持ち上がらなかった話題ですよねえー

 

誰も死者が出なかったから、貨物として扱われて死んでしまった2匹のペットを「かわいそう」と思える心理が働いたんです。

もし大勢の方が亡くなっている時に2匹のペットについて話題にしたら、きっと「大勢の人が亡くなってるんだぞ」と叩かれるのは想像がつきます。

でも誰も亡くなっていないから、だから「ペットが可哀想」という心理状態になったんだと思います。

 

もちろん「ペットは家族だ」「生き物を貨物扱いするな!」という考えは十分理解できるんですよ。

私だって、ペットを虐待する人間は全員地獄に落ちろと思っている人間ですしね。

 

 

ただこの話は「ペットは家族」という感情だけでひとくくりにすべき話じゃないと思うんですよ。

 

日本の航空会社の中にもペットの機内持ち込みを試みようとしている会社はあります。

欧米では機内持ち込みは普通なので、そのうちそれが主流になるのかもしれません。

そこは私も反対じゃありません。

 

アレルギーや動物嫌いの人の権利を訴える人もいますが、多分それはあまり大きな問題じゃないでしょう。

なぜなら、適切なキャリーバッグの中に入れていれば今でも普通に電車の中に持ち込むことが出来るので、そこはあまり気にしなくてもいいと思うんです。

まあ、一番後方の席に喫煙室のような衝立を置くとか、そういうので十分対応できるんじゃないでしょうか。

 

 

でも、今回の場合はそれが問題なんじゃないんです。

 

「緊急時にはいかなる荷物も持ってはいけない」

 

という問題を「ペットが可哀想。だから客席に持ち込みOKにしろ」と、肝心の部分から目を逸らした論争をしているのが問題なんです。

 

つまり、たとえ足元にキャリーバッグを置いていたとしても、先日の事故のように脱出シューター(スライダー)を使うような事態になった時は、それは機内に残して身ひとつで脱出しなきゃいけないということなんです。

 

自分で、自分のペットを見捨てる決断をするんですよ?

そっちのほうが残酷じゃないですか?

私はそっちの方が後悔すると思うんですけど…。

 

 

じゃあなぜキャリーバッグを残していかなければいけないかというと、キャリーバッグも「荷物」であって、シューターによる脱出の時は全ての荷物を置いていかなければいけないからです。

 

「荷物と生き物を同列に語るなよ」と言う人もいるかもしれませんが、家族だと思っているのは飼い主だけであって、その他の人達にとっては「脱出時の邪魔になる荷物」でしかないのです。

 

もしキャリーバッグを抱えている人を他の客が見たら、どういう感情になると思いますか?

そりゃあ「あれを持って行っていいなら自分もひとつくらいは荷物を持って行ってもいいよな?」って感じですよね?

 

誰かひとりがルールを破れば統率は一気に崩れ、そこから争いが起こりパニックが広がるんです。

 

今回の脱出が奇跡と呼ばれるほどスムーズに進んだのは、誰も荷物を持たず身ひとつで脱出したからです。

飛行機に乗ったことがある人なら皆さん経験していると思いますが、機内で人間が渋滞するのは、荷物入れから荷物を降ろしたり足元に置いていた荷物を身につけたりする時です。

その動作が、一刻一秒を争う緊急事態では邪魔になるのです。

 

炎上の恐れのない脱出と今回のようないつ爆発するか分からない切羽詰まった脱出は違うと思いますが、少なくとも今回のような状況下では、ペットのキャリーバッグは絶対に持ち出しを禁じられていたと思います。

そこを頭に入れず「かわいそう」だけで論争するのは無意味です。

 

 

もうひとつ、硬い荷物を持ったまま脱出シューターに乗ると、他の乗客に怪我をさせる恐れもあります。

たぶんこれも「ペットは家族」と言っている人達は分かっていないんだと思います。

 

 

今回、370人いた乗客のうち、怪我をしたのは15人ほどだったと報道されていましたが、その人達は一体いつ怪我をしたのでしょうか。

海保機と衝突したとはいってもJAL機は通常の着陸をしていたので、その時点で怪我人はいなかったはずです。

 

つまり、怪我人のほとんどは脱出時に怪我をしたということになります。

 

 

実を言うと、シューターを使っての脱出はかなり危険なんですよ。

脱出時の映像も流れていましたが、脱出のスピードは1人につき1~2秒の間隔でした。

 

前の人が無事着地をしたかどうかなんて確認もせず、後ろからどんどん人が下りてくるわけです。

 

歳を取った人は着地と同時に尻もちをついてしまうかもしれませんし、体重のある人がいるとスピードが落ちて後ろから来た人が衝突するかもしれません。

あのスピードで人が下りてくるので些細なことで団子状態になってしまうわけです。

 

そうやって転倒し重なり合って怪我をしないよう、力のありそうな男性を最初に下ろし、降りてきた人を素早く引き上げて団子にならないように協力してもらうのです。

 

今回そうしていたかどうかは分かりませんが、少なくともマニュアルではそうなっていたはずです。

 

シューターに寝転がると衣服との接地面積が増え摩擦により降りるスピードが遅くなります。

なので上体を起こしたまま、両腕を前に伸ばして降りていきます。

下で待っている人はその腕を掴んで素早く立たせ、団子にならないように横にどかします。

 

私が知っているのはこんな感じだったと思います。

 

 

もし、誰かが下でコケて団子状態になっていて、そこに硬いキャリーバッグを持っていた人が衝突したら、下にいる人間に怪我をさせる可能性があります。

ハイヒールを履いている人はそれを脱いでシューターに乗らないといけません。

大勢の人が降りるシューターに傷をつけてもいけませんし、前の人に怪我をさせるリスクがあってもいけません。(ハイヒールがいかに凶器になり得るかは満員電車でヒールに足を踏まれてみればわかります。骨が折れたかと思うほど痛いんです)

 

なので、両腕にキャリーバッグを抱えたまま降りるなんて、許されるわけがないんです。

というか、許されてはいけないんです。

 

 

 

乗務員の方々がそこで起きるリスクを想像し、安全なドアだけを開け、全ての人が取り得る最善の行動をとれたから奇跡は起きたのです。

 

私のようなどんくさい人間であれば、シューターの着地で絶対に捻挫くらいはしてしまいそうですが、それでも誰かの命を危険にさらすことのないよう行動しなくてはいけないのです。

 

荷物は持つなと言われていますが、多くの方がスマホをもって脱出していました。

自分の上着のポケットに入るなら、スマホや財布くらいは持ち出せると思いますが、それ以外の荷物は誰も持ち出さなかったと言われています。

 

荷物の中には大切なものや高価なものもあったかもしれませんが、それを皆さん置いて脱出したのです。

そしてその判断が迅速な脱出に繋がったわけです。

 

 

 

 

ペットの命は軽いんだ、なんて言うつもりはないですが、避難所だってペットの持ち込みは禁止されています。

環境が決して良くない避難所で、ペットの面倒までは見られないからです。

避難所が広く、食料にも余裕がある場所なら許されるかもしれませんが、それは地域によるため全ての避難所にそれを求められても困ります。

 

過去の災害の時、ペットがいるからと避難所に入らず車生活をしていた人の映像を見たことがありますが、そんな過酷な場所で「ペットは家族」と言って、人間と同じ扱いをしろなんて言えますか?

極限下では、家族は家族で面倒を見るしかないのです。

 

東日本大震災の時、原発事故があって避難所に逃れた人たちの多くが、すぐに帰れると思ってペットを家に置いたままにしてきていました。

そしてそのまま帰宅できなくなってしまったのです。

 

鎖につないだままの犬や家に閉じ込められたままの猫がどうなったかは想像がつくと思います。

すぐに家に帰れた人もいましたが、帰宅困難地域になった場所はそのまま放置されてしまいました。

 

帰ってこれないかもと鎖を外されていた犬もいましたが、鎖に繋がれたままの犬は餓死していました。

 

しばらくして、被災地域のペットたちにエサを与えに行くというボランティアも生まれていましたが、非常時のペットの命は人間と同じじゃありません。

 

そこは頭の片隅に常に置いておくべきことです。

 

 

 

そもそも論として、引っ越しなどの移動を除けば、私はペットを旅に連れていく行為は反対です。

自分はペットと離れたくないのだとしても、ペットにとってストレスになるからです。

 

ペットが旅を楽しむと思いますか?

車の移動で家族と共にペット可のホテルに泊まるのなら理解できますが、飛行機に乗せるくらいならペットホテルや家族や友人にあずかってもらうのが一番です。

 

特に気圧が大きく変わる飛行機は、動物にとって過酷です。

それは例え客室に入れたとしても、です。

 

私は気圧に弱く、飛行機に乗っている間はずっとひどい頭痛に悩まされます。

それは、飛ぶ位置が高い国際線ほど酷くなります。

そんな場所に小さな動物を乗せるのは、決して動物を愛している人がする行為じゃありません。

 

 

そうやってストレスを与えて違う環境の場所に連れていって、インスタやYouTubeなどに嬉々としてペット写真を上げている人のなんと多いことか。

そういう人はちょっと人間性を疑ってしまいますよね。

 

 

そして、ペットと行動するのが普通になってしまうと、人間というのはどんどん自己中心的になってしまうようで、アメリカでは逆に機内にペットの持ち込みが禁止になるそうです。

なぜかというと、キャリーバッグに入れるという最低のルールすら守らなくなり、服の中に入れただけで飛行機に乗ってきたりする行為があまりにも多くなってきているからだそうです。

 

鼻ペチャの犬は気道が狭く、気圧の変化に耐えられないため国際線では貨物室であっても持ち込みが禁止になっています。

国際線は国内線より高い位置を跳ぶため、気圧の差で窒息してしまうんですね。

にもかかわらず、こっそりと荷物入れの中にフレンチブルドッグを隠していた人が、移動中にペットが死んだと航空会社を訴えていた記事を読んだことがありますが、これはマナーを守らない上に規約も守らなかった飼い主の悲劇です。

 

ハッキリ言います。

飛行機のような場所にペットを持ち込むのは人間のエゴです。

 

ペットは確かに家族ですが、人間のアクセサリーじゃないしイイネをもらう道具でもありません。

 

「この子は大人しいから大丈夫」

「誰にも迷惑をかけていない」

「ちゃんと自分が責任を持つから大丈夫」

こんな言葉に意味はありません。

 

 

機内に持ち込んだとしても緊急脱出時は持ち出せない。

自分が面倒を見るとかの問題ではなく、他の乗客の避難の障害になる可能性があるから。

そういう現実にしっかり目を向け、リスクを理解したうえで、最悪の時には自分がペットの命を奪う判断をする規約に署名してもらう。

その上でなら、私は機内持ち込みは反対じゃありません。

 

ただ、今回の論争の中で、亡くなった人がいるということがまるで忘れ去られているかのように見えるのが疑問なのです。

ペットも可哀想だけど亡くなった海上保安庁の方々はもっと可哀想なんじゃないですか?

 

ペットに関する訴えは、もっと時間が経って落ち着いてからでも良かったのに、あたかも悲劇に乗っかって「今だ!」と言わんばかりに自分の意見をアピールしたように見えるのが残念なんです。

 

海保の方々は地震の被災地に支援物資を運ぶ任務の途中でした。

いつもとは違う状況で、いつもよりハードな状況だったと思います。

 

私は以前、ヒューマンエラーに気付けるような仕組みを構築すべきではないかと書いたのですが、実際には進入許可のない機体が入ってきた時はランプがつくようになっていたそうです。

でも、だれも気付かなかった…。

 

重大インシデントというのはこういう、複数の見逃しが重なって起こるものなんでしょう。

 

 

 

少し前にあった「クマを殺すなんてかわいそう」というクレームもそうですが、動物を人間より優先させた思考を持ってしまうと全体が見えなくなってしまいます。

そして、「かわいそう」と感情的になると判断を誤ります。

そこは少し立ち止まって冷静にならないと、簡単に募金詐欺にも引っかかってしまいます。

 

感情はメンタルから切り離し、じゃあどうするのが良いかという方向に思考を切り替え、その情報は正しいのか分析し、最善と思われる判断をする。

大きな災害の時などは特に、感情的になるのは慎むべきです。

 

 

「かわいそう」と思う心はあっていいんです。

それが人間です。

でも、それだけで行動や発言を決めちゃいけません。

 

亡くなった人が5人もいます。

人を助けようとしてくれていた立派な人たちです。

ペット論争の前に、私は彼らの死を悼んで欲しかったです。

 

事故直後には、1人助かった海保の機長を戦犯扱いして叩いていた人もいましたが、そんな単純なものじゃないんです。

 

 

人間は感情的になり過ぎです。

そうした方がいいと思う改善は、事故に絡ませずに発信してください。

亡くなった方の存在を忘れないで下さい。

 

そのうえで、自分に出来ることを粛々と行動してください。

 

それだけで、少し心が落ち着きませんか?

 

私はそう思います。

 

 

 

以上