今度は、父の夢をみた。

私は、見た目は、今の43歳のまんまだったけど
小さな子供みたいだった。

麻雀に行くと言う父に

『ちょっと待って』

といい

『抱っこして』

と言った。

父は、ちょっと困ったような
でも仕方ないなという優しい顔をして
腰を下ろしてくれた。

だから
父の膝に乗り
父の首につかまった

『だれと行くん?
どこに行くん?』

『……』

やわらかにはぐらかす父に
その時
ひとつ言葉を飲み込んだ。



  『いかないで』




そっか
私は、小さなころ
父にそう言いたかったんだなぁ。


父が徹夜麻雀で夜留守をする時
私は、いつもひどく不安だった。

父がいないのに
泥棒が来たら皆殺されちゃうかもしれないと
父のいない夜をとても怖れた。


父がいれば少しも怖くなかった。


でも一度もそれを父に
言ったことは、ない。






言ってしまったら
男の自由というものを奪ってしまうと
困らせてしまうと
子供ながらに感じてた。

そして
言っても
きっと父は、行ってしまうんだと
諦めてた




『行かないで』




男の人を好きになる度に
言いたかったのもこの言葉だったなぁ


行かないで
ずっとそばにいてよって