時々
母に逢いたくて逢いたくて
でも
もう逢えないことは、分かっているから

寂しくてたまらなくなる時がある。

いつもは、その湧いてくる思いに
適当な区切りをつけ
起き上がるのだが


今日は、その寂しさに
浸ってみようと思った。


母とは、生きている間
愛憎と葛藤
そして
執着の限りをつくした。


のたうち回るような
いろいろな思いがあったはずなのに
今は、
ただそれを
セピア色の無声映画のように感じる。


色鮮やかに浮かぶのは、
母と腹を抱えて笑った時間だけだ。

時間というものは、
粋な
優しい魔法をかけてくれる。


母は、とてもユーモアのある子供みたいな
人だった。

美しい優しい香りのする人だった。

母と笑い合ったそのシーンを思うと
もう二度とその時間が返らない寂しさと

同時に

陽だまりのミルクティーのような
とろんとした空気に包まれる。

ミルクティーのようなそのぬくもりを
そっと
ポケットにしまい
私は、また生きていく。


ポケットが今日は、あたたかい。




るみ子