28日に仕某納めとクラブ納めで、さあ休みだーと思って昨日の昼に起きたら、咽の痒みとくしゃみが…花粉症みたいでなんか嫌ですが、来年を無事迎えられることをまずは喜びたいと思います。


さて、年末ということで、今年も独断と偏見に基づくいろんなベストを発表します。一丁前に"Genius & Cortez Awards"なんて名前を付けてしまいました。

 

 

 

 

HIGH SCHOOL VIBE AWARD

Lil Wayne - Start This Shit Off Right ft. Ashanti & Mack Maine

 

まずは、なんだか高校時代を思い出させてくれるようなヴァイブの曲ということで、7年ぶりにアルバムをリリースしたリル・ウェイン(Lil Wayne)のこの曲に賞をあげたいと思います。トラックの感じもアシャンティ(Ashanti)の声も、00年代前半くらいのヒップホップの感じがして、カメラの向こう側の世界に憧れていた気持ちを思い出しました。とは言っても、その頃は特段ヒップホップを聴いていたわけではないのですが…。この曲のMV出てほしいですね。アーティスティックさとかどうでもいいから、みんなで赤いカップ持ってわちゃわちゃしてる、楽しそうな感じのやつ。

 

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BEST CLUB BANGER

Travis Scott - NO BYSTANDERS

 

クラブでかかれば問答無用でブチ上がる曲ということで、トラヴィス・スコット(Travis Scott)のこの曲を選びました。今年は昨年に比べてクラブに行く頻度がやや落ちてしまいましたが、アルバム『ASTROWORLD』がリリースされた直後にBX CAFEでこの曲を聴いた時の興奮は、それはそれはテンアゲでした。「自分の酒は自分で買え(Buy your own booze)」というリリックに反して、自分のお金でもいいからみんなでテキーラを乾杯したくなりました。ちなみに、僕の言う「テンアゲ」の「テン」は"ten"なので、若い子が言ってるの(あっちは「テンション」らしい[1])とは違います。最近ではドレイク(Drake)との「SICKO MODE」人気が確立されるにつれ、この曲がかかる頻度が落ちてしまった印象ですが、僕は今でも密かにこの曲がかかるのをフロアの隅っこで待っています。

 

 

 

 

HOT 16: BEST FEATURED VERSE

J. Cole - "Pretty Little Fears" (6LACK ft. J. Cole)

 

J・コール(J. Cole)は今年も大活躍でしたね。アルバム『KOD』も悪くなかったですが、個人的にはそれ以上に客演ヴァースでの活躍が光っていたように思います。この曲のコールのヴァースは特に素晴らしくて、なかなかコール以外のラッパーには書けない実直なヴァースだなと思います。歌詞対訳記事をリンクしているので、お読みいただければ幸いです。キャリアの円熟期を迎えてComplexが言うところの「ビッグ・ホーミー・ステージ」に達した[2]コールに学ぶことはたくさんあります。曲がりなりにもヒップホップに携わるもうすぐ30歳の人間として、自分にできることは何だろうかと考えさせられますね。

 

 

 

 

BEST LIVE PERFORMANCE

Anderson .Paak & The Free Nationals @ 豊洲PiT (2018/07/31)

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今年はいろんなライブを観に行って、後悔したものなんて一つも無いくらい、どれも楽しかったのですが、その中でどれか1つを挙げよと言われれば、僕はアンダーソン・パーク(Anderson .Paak)とフリー・ナショナルズ(The Free Nationals)の単独来日公演を挙げます。ステージ上で歌ったりラップしたり踊ったりドラムを叩いたりするアンディが、とにかく楽しそうで楽しそうで。彼らに促されるままに身体を動かしていると、こちらまで楽しくなりました。自分で書いたレポートを読み返してみたら、その時の気持ちを思い出して少し幸せな気分になれたので、文章に残しておくのっていいなと思いました。

 

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SONG OF THE YEAR

 
これは自分の中でぶっちぎりです。やっぱりテラス・マーティン(Terrace Martin)好きだなー俺、と思いました。リリースされたその日から何度もリピートし、ライブで聴いた時には朝焼けを見ているような気持ちになりました。
 
これだけだと寂しいので、今年気に入った36曲をプレイリストにしてみました。Spotify版はこちら、Apple Music版はこちらです。よかったら聴いてみてください。自分好みのプレイリストを作ってみると、「俺のプレイリストが誰のよりもイケてる」って気分になれるのでオススメです。
 
 
 
 

ALBUM(S) OF THE YEAR

気に入ったアルバムを10作品ご紹介します。一昨年が15枚、昨年が17枚だったので、「え、少な」と思われるかもしれませんが、今年はアルバム単位で作品を聴く機会がすごく減ってしまったのが正直なところで、20枚とか50枚とかは挙げられないです…すみません。加えて、今回は10作全部に順位を付ける気分じゃなかったので、気に入った7作品(7 ALBUMS THAT I LIKED LISTENING TO)と、特に気に入った3作品(3 ALBUMS THAT I LOVE.D LISTENING TO)といった感じでお届けします。いずれもリリース日付順にします。

 

7 ALBUMS THAT I LIKED LISTENING TO

Black Panther: The Album

Image via @TopDawgEnt on Twitter

 

TDE (Top Dawg Entertainment)のCEO=アンソニー・"トップ・ドッグ"・ティフィス(Anthony "Top Dawg" Tiffith)とケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)がエグゼクティブ・プロデュースした、映画『ブラックパンサー』のインスパイア盤です。自分はネットの時代になってからヒップホップを聴き始めましたが、その前は映画のサントラって、DJのミックスCDみたいに、新しいアーティストを聴き始める絶好の機会だったんですよね。本作はまさにそういう役割を果たしているように感じて、サウンウェイヴ(Sounwave)の"Make soundtracks great again.. #TDE #BlackPanther"というツイートがしっくりきました。どの楽曲もいいし、映画を観てみると、その内容とリンクするようなところもあり2倍楽しめました。一方で、アルバムにコンセプトを持たせることに拘るケンドリックにとって、この作品はプレイリスト的な作品だったのではないか、というDJBoothの考察記事が面白かったので、よかったら読んでみてください。

 

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Teyana Taylor, K.T.S.E.

Image via XXL Mag

 

プッシャ・T(Pusha-T)がCEOを務めるレーベル=GOOD MUSICから5週連続でリリースされた作品の中で、振り返ってみれば一番気に入ったのが、ティヤーナ・テイラー(Teyana Taylor)のこの作品でした。ソウルフルで時折力強い歌声とトラックが、新しさと懐かしさの両方を感じさせるような内容だと感じました。「Gonna Love Me」を聴いていると、下北沢のLITTLE SOUL CAFEに来たような気分になります。「Hurry」は、家族が居る場所で聴くのは気まずいけどいい曲です。そして一番好きな「Never Would Have Made It」に関しては、鳥のさえずりから流麗なピアノ、太めのベースライン、タイ・ダラ・サイン(Ty Dolla $ign)のブリッジ、「あなたがいなければここまでこれなかった」というメッセージまで全部好きです。ちなみに、同曲のリリックにある"The road to hell was paved with good intentions"(地獄への道は善意で敷き詰められている)という言葉は、予備校時代に現代文の先生から教わって知りました。忘れたくない言葉です。

 

 

Buddy, Harlan & Alondra

Image via @Buddy on Twitter

 

コンプトン出身のラッパー=バディ(Buddy)のデビュー・アルバムです。ギャングスタ・ラップのメッカで生まれ育った彼ですが、あまりそういう出自をシリアスに捉えず、いろんなものにオープンな印象を受けます。さすが、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)に可愛がられるだけありますね。全体的にオシャレな作風です。洋楽ラップを10倍楽しむマガジンさんにリリック解読を寄稿した「Trouble On Central」が特に好きですが、若さ全開の「Shameless」や、スヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)とのウェッサイ・マナーな「The Blue」あたりも好きです。そういえば、LAとオークランドに行っていたので、10月の来日公演には残念ながら行けなかったのですが、彼、日本におけるウィードの相場が分からない自分でも分かるくらい、ボられてましたよね? Instagramのストーリーで見て笑いました。

 

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Travis Scott, ASTROWORLD

Image via @trvisXX on Twitter

 

この記事ではどの部門でも、好き勝手にフェイバリットを選んで書いていますが、もし「今年のベスト・アルバムは?」と訊かれれば『ASTROWORLD』と答えます。クラブ・バンガーに満ち溢れているし、耳を凝らして聴いてみると、下掲の関連記事で挙げるような面白い言葉遊びが多いです。また、Complexにおけるサイハイ・ザ・プリンス(Cyhi The Prynce)のインタビューでなるほどなと思ったのが、このアルバムでトラヴィスは自分が何者かを語っているという点です(「トラヴは人生でたくさんのことを経験してきたけど、自分が何者なのかを多くの人に語らなかったんだ。だから、それが俺の仕事だった—このアルバムでもっとパーソナルになるよう彼に促すことがね」とは彼の弁です)。DJスクリュー(DJ Screw)やグッディ・モブ(Goodie Mob)、スリー・シックス・マフィア(Three 6 Mafia)といった南部のOGたちへのリファレンスから、ラ・フレイムがどういう人間なのか、彼にとって何がリット(lit)なのか、といったことが、これまでに比べてかなりくっきりしたように思います。そして何より、彼のツアーはめちゃくちゃ楽しそうですね! 『DAMN.』ツアーの前座もよかったですが、トラヴィスが作り出す遊園地を、ぜひ一度体感してみたいものです。

 

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Mac Miller, Swimming

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先日、本作収録の「2009」を聴いていたら、不覚にも泣いてしまいました。「時々、もっとシンプルな道を通れればよかったと思う/俺の家と同じくらい大きな悪魔を持つんじゃなくて」「本当に俺は神様を信じ始めようとしてる/大変なことになっても俺はテンパらないし、アラームを鳴らさない」といったラインから、マック・ミラー(Mac Miller)が心に抱えていたであろう闇と、それでもなお気丈に振る舞おうとする様子が伝わってきたからです。『Swimming』は全編にわたって美しく、その美しさは歌詞の所々に現れるネガティビティさえも凌駕してしまっています。ケンドリック・ラマーによれば、マックもそんな人だったのだそうです。マルコムについて、彼は「あいつは何があっても笑ってて、人にかわいそうだなんて思わせなかった。それが大好きだった」と話しています[3]。ただ、それが彼の早すぎる死に繋がったのかもしれないと考えると、やっぱり悲しくて、やりきれない気持ちになります…。このアルバムは、自分が人生でよりハードな局面に立たされた時に、もう一度聴くと決めています。マックの豊かな感受性と強さで紡がれた言葉の意味に、その時でないと気づけないだろうから。でも、そうでない今聴いても、本作は文句なしで彼の最高傑作だと思います。ありがとう、マック・ミラー!

 

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Anderson .Paak, Oxnard

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アンダーソン・パークの音楽は、良い意味でみんなの音楽だなと感じます。先日「Tints」を聴いていたら、この曲はバディものの映画のハッピーエンドで流れたらハマるなと思いました。Bad Boys 3あたりで、どうでしょうか? 本作はひたすらに完成度が高い印象を抱いたので、例えば前作『Malibu』(2016年)みたいに、ちょっと風変わりなのが気になって繰り返し聴いてしまうというよりは、聴いたら満足してしまうようなところが正直ありました。ただ、アンディの音楽はライブまで含めて一つのパッケージだと思っているので、このアルバムの曲をライブで演るのをぜひ観たいなと思っています。

 

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Meek Mill, Championships

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ミーク・ミル(Meek Mill)出所後初のアルバムです。下掲の関連記事でも書きましたが、収監されていた経験が彼を成長させたことが窺える、熱いアルバムでした。音楽的にも、こういうラップやビートは今でもクールだなと安心させてくれる内容です。

 

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3 ALBUMS THAT I LOVE.D LISTENING TO

Nipsey Hussle, Victory Lap

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『Breakfast Club』のパーソナリティー=シャーラメイン・ザ・ガッド(Charlamagne Tha God)からラッパーのC.O.S.A.氏まで、多くの人がベストに挙げる本作。そのサウンドは確かにウェッサイでありながらGファンクとは異なり、そのアプローチは確かにギャングスタでありながら、N.W.Aやスヌープのそれとはやや異なります。ニプシー・ハッスル(Nipsey Hussle)は全編にわたり、ストリートやラップ・ゲームを生き抜くためのゲーム(知恵)をドロップしています。その内容は驚くほどに現実主義的で、新時代のハスラーと形容したくなるものです。また、彼の口から語られる経験には、スローソン・アヴェニューや、59thストリートと5thアヴェニューの交差点付近にある祖母の家までもが登場します。これほどまでに従来のやり方に囚われず、それでいてフッドに軸足を置いた仲間思いなアルバムが、ここ数年であったでしょうか? 今年ドロップされたこと自体が嬉しかった作品の一つですが、内容も期待を裏切らず、さらに嬉しくなりました。自らのブランドを築くことに強く拘ってきたクレンショー・ネイティブの、戦略的遅咲きメジャー・デビューです。

 

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SABA, CARE FOR ME

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Image via @sabaPIVOT on Twitter

 

従兄弟であり、自身が所属するPIVOT GANGのクルーでもあるジョン・ウォルト(John Walt)を失ったサバ(SABA)。そんな彼が心を癒すために選んだ手段は、彼が言うところの「カリグラフィー(CALLIGRAPHY)」でした。"I'm so alone"というラインで幕を開ける本作は、孤独と憂鬱に苛まれるサバの心の追体験です。その過程でビートは時に激しく、時に穏やかに、また時にせわしなく、時にゆったりと流れていきます。そこに乗るサバのラップも然りです。ウォルトを失ってから、サバの心の中の空は、アルバムのアートワークがそうであるように、色彩を失っていたのかもしれません。しかし、「カリグラフィー」を通して気持ちを浄化した彼は、晴れない空は無いのだと教えてくれているかのようです。一通りの追体験を終えたリスナーの心には、クリアな空が広がっているはずです。サバが来日公演で見せてくれたエナジェティックなパフォーマンスは、彼が「カリグラフィー」を経て次のステージに向かっていることを確信させてくれて、これからがますます楽しみになりました。

 

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Jay Rock, Redemption

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光に照らされ、空を見上げながら一人ストリートに佇むジェイ・ロック(Jay Rock)。その後ろには、口論しているカップルや、ドラッグ・ディーラーや娼婦と思しき若者たち、そして警察官の姿が。バイク事故を経て「ギアが変わった」と話すロックは、「救済(Redemption)」を経験した一人として、自らの経験を彼らに伝えます。「ES Tales」や「Rotation 112th」といった楽曲においては、これまでと変わらずヴィヴィッドにフッドの日常を描き出していますが、サウンドの面で新しい領域にチャレンジしたことが感じられます。建設的な意見であれば批判も受け入れる、柔軟なロックの姿勢がもたらした進化なのでしょう。また、「OSOM」や「Broke +-」においては、コミュニティ・リーダーでなくモチベーターとして、自分が学んだことをフッドの人々に共有しています。「King's Dead」や「Wow Freestyle」では遊び心も忘れていません。これもまたドロップしたこと自体が嬉しく、内容も素晴らしい作品でした。「俺は勝ち組一家の一部にすぎない、マーロン・ジャクソンと呼んでくれ」と謙虚にラップするロックですが、いよいよ彼自身の勝つ(Win)番がやってきました! Win, win, win, win!

 

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というわけで

今年も一年、本ブログをお読みいただきありがとうございました。ブログの更新は毎回Twitterでお知らせしていて、その反応を見ては「あ、これはバズったな」「これはイマイチか…」などと考えていたのですが、今年はRTやLikeの数だけが全てじゃないなと思わされることが多かったです。Twitter以外経由で「え、こんな方が読んでくれてるの?」と思うような方から嬉しいお言葉を頂くこともあり、それらに本当にモチベートされました。ニプシーじゃないけれど、目先のハイプに惑わされすぎず、しっかり自分の納得いく記事を書いていきたいなと思っています。今後ともよろしくお願いします。それでは、よいお年をお迎えください。

 

 

 

 

[1] テンアゲ、テンサゲ|若者言葉辞典~あなたはわかりますか?~

[2] J. Cole, ‘KOD’ - The Best Albums of 2018 | Complex

[3] Kendrick Lamar and Macklemore Remember Mac Miller | Open Late with Peter Rosenberg - YouTube