Twitterで音楽に関するツイートをすれば、当然ながら相応の反応がある。しかし、格闘技に関するツイートにはほとんどリツイートもいいねも無い。どちらも同じくらい好きなのに、というよりむしろ、自分の人生において付き合いが長いのは後者のほうなのに、これでは寂しすぎる。そうだ、自分は音楽ライター/ブロガーでありこそすれ、格闘技ライター/ブロガーでないからいけないんだ。ならば、なってしまおう—そんな軽い思いつきから、アマチュアキックボクシング11戦6勝5敗という微妙な戦績をひっさげて、本記事にて格闘技ブロガーとしてデビューする。テーマはもちろん、来年(2022年)6月の開催が発表された那須川天心vs武尊戦である。

 

 

Image via ゴング格闘技

 

 

この試合が持つ意味の大きさについては改めて説明するまでもなかろう。ヒップホップでいえば2パック(2Pac)とザ・ノトーリアス・B.I.G.(The Notorious B.I.G.)のビーフ…いや、違う気がするし、そもそも格闘技の話をするのにヒップホップの喩えを無理に持ち出すのはやめよう。一部では「魔裟斗vs山本“KID”徳郁に匹敵する注目度」などという声も聞かれるが、両元選手に最大限の敬意を払いつつ、そこにもしっかり反論しておきたい。団体こそ違えどキックボクシングの王者である二人が雌雄を決する本試合が持つ意味と、半ばお祭りムードの中で行われた往年の名勝負のそれとは、比べるまでもない。

 

 

 

 

 

あの記者会見に至るまでにどれだけの障壁があったかは想像に難くない。武尊が天心に対して「存在を恨んだ時期もあった」と打ち明ければ、来年4月のRISEでキックボクシング引退を予定していた天心は、榊原信行代表からのキックボクシング現役延長の提案に対して「しつこいな(と思った)」と、正直な心情を吐露した。そのいずれも偽らざる思いなのだろう。体重は前日計量で58kg・当日計量で62kgの契約、ワンキャッチ・ワンアタックまで認めるキックボクシング・ルールで妥結している。55kgがベスト体重の天心側と、K-1でスーパー・フェザー級(60kg契約)を主戦場とする武尊側とが、双方歩み寄った結果なのだろうが、今後も判定基準やラウンド数など、いくつかの“難所”を迎えることが予想される。今はただそれらがクリアされ、両者ともに怪我なく試合当日を迎えることを祈るばかりだ。

 

 

本試合決定に至るまでの詳しい経緯については他メディア/ブログに譲るとして、少なくとも直近の半年ほどでは、この試合の実現に強く拘ってきたのは武尊のほうだ。本年11月、天心がInstagramで「今思ってる事とか結構ちっぽけだよ」とキャプションすれば、武尊が「あなたがちっぽけだと思っていることは あなたが思うよりも大きいものだよ。」とサブツイートを返したことも記憶に新しい。それらの言葉は試合の実現に向けた調整が難航していることを暗に示すばかりでなく、両者のスタンスの違いをも浮き彫りにした。元はといえば本年6月の中立な舞台で両者の対戦が予定されていたというのだから、試合が流れたことで、来年4月のRISEを最後にボクシング転向予定の天心が、その実現に積極的でなくなるのも無理はない。同様に、所属団体であるK-1の独占契約を理由に「逃げている」などといわれのない誹謗中傷を浴びてきた武尊が、本試合の実現を希求するのもまた道理である。

 

ただ、本来であれば試合を受ける義理などない天心が、記者会見場に現れたという事実そのものが、彼にとって本試合が特別なものであることを物語っている。その証左とでもいうべきか、彼は会見中に突如として誰も居ないはずの右後方を振り返るなど、いつになく落ち着かない様子を隠しきれずにいた。会見後のツイートでは「メリークリスマス🎄サンタです🎅」とおどけてみせたが、それもまた、ファンにとって本試合がどれだけ切望されたものであるかを理解してのことであろう。

 

そうとはいえ、やはり二人は異なるタイプの格闘家だ。会見中、何よりも二人のスタンスの違いを明らかにしたのは、記者からの「相手よりもどの部分が勝っていると思うか」という質問であった。「気持ちでは世界中どの選手にも負けない」と答えた武尊に対し、天心は「マインドっすかね」と素っ気なく返し、詳述を求められても「そこは雰囲気で」と答えるにとどめた。この違いは、ルールに関する質問への回答にも現れている。「この試合に判定やドローは要らない。延長無制限ラウンドでやりたい」と答える〈気持ち〉の武尊に対し、「引き分けは要らないっていうか、そこまでもってかなきゃいいっていう話ですよね」と答える〈マインド〉の天心。〈マインド〉側からすれば延長無制限ラウンドという発想自体が甘えなのかもしれないし、〈気持ち〉側からすれば無制限延長ラウンドは当然導き出される結論なのだろう。この両者のスタンスの違いは、来年6月にどのようなかたちで具現化されるのだろうか。

 

 

※文中敬称略

 

 

 

 

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