珈琲のお味は深煎りで私好みでした。
ゆっくり飲みながらぼんやりと花蓮の街を思い出します。
夕方と夜のあいだ。
この微妙な時間帯に外が暗くなるのを眺めていると不思議な気持ちになります。
逢う魔が時ってやつですね。(お店を出てからそれを再び感じることに)



忙しく歩き回っていると、旅の途中で感じたことや思いついたことを忘れがちです。
歩きながらメモを取れないので、どうしてもゆっくりと腰を落ち着けた時に
思い出しながらその時のことを書き留めたりしています。
その場でしか感じ得なかったことを、その瞬間に閉じ込められたらいいのに。

目の中にカメラが入ってて、頭で考えたことはダーっと文字に変換されて
体にくっついているメモリにインプットされたらいいのに。
どこかへ出かけたり、なにかを見ているといつもそんな風に考えます。


人の記憶というのは、決してなくなるものではないと聞いたことがあります。
覚えてないだけであって、完全に忘れているわけではない。
覚えてないというのは寂しいことですが、頭の中の引き出しには限界があるんでしょうね。
何もかもを覚えていようとすると、きっとすぐに満タンになってしまうし、
頭に入れておきたいことが入るスペースがなくなってしまう。



例え引き出しを増やしたところで
綺麗に並んだ本棚のようにサクサクと整頓できる自信もありませんが。
でもインプットがなければアウトプットもない。
文字を書くにしても絵を描くにしても、
自分がいろんなものを見て、触れて、実際に体験しなければ
何も生まれるものはないなと常々思います。
だからこそ知らないことをもっと知りたい。
行ったことのない場所に行ってみたい。
そんな旅欲は、旅に出るとさらに高まるのでした。



ゆっくりと静かなカフェで珈琲を飲んでいると、
そんなことをぐるぐると考えます。

すっかり夜の時間になった外の気配を感じたので
お店を出て宿の方へ戻ることにしました。


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