【NY観劇日記⑥】4月 | 椿座通信2

椿座通信2

復活しました。劇作家・脚本家、西史夏のブログです。

群衆が写しだす女の狂気

I Puritani 」(清教徒)

 

Bellini1835初演)

Saturday,April26,2014,8:00-11:25pm

 

Conductor:Michele Mariotti

Production:Sandro Sequi

 

この連載、長すぎる…という声を聞いたので手短に。

旋律の美しさで知られるベッリーニの代表的オペラのひとつ、清教徒。自腹で取ったのは、3階下手バルコニー席。チェネレントラ、コシと比較すると地味な演目といえるのか、客席は空席も目立つ。

 

オペラカーテンのあるオーソドックスな演出。

始まる前に、劇場スタッフが現れ「エルヴィラ役のOlga Peretyatkoの声が不調だが、降板せずに出演する」という説明がある。

エルヴィラは「狂乱の場」と呼ばれるコロラトゥーラ技法の見せ場がある。本オペラのハイライトであり、みんなこれを聞きに来てる。さて、大丈夫か。

ちなみに若いイタリア人指揮者とプリマドンナは夫婦。プリマは本作がMETデビューの美貌のロシア人。アルトゥーロは、オハイオ出身黒人テナー歌手のLawrence Brownlee

 

全三幕を通して、見下ろす舞台いちめんギッシリの大合唱団が圧巻だった。

一幕最後、恋人アルトゥーロが婚礼前に別の女と逃げたと勘違いしたエルヴィラが狂気の兆しを見せる。合唱団はエルヴィラを写しだす鏡。困惑した表情で、逃げ惑うエルヴィラの行く手を遮る。合唱団員それぞれちがった演技が秀逸に機能する。エルヴィラは、人々によって追い詰められ、狂気を増してゆく。

 

二幕冒頭、狂乱の場。うつろな表情で歌いまくるエルヴィラ。ハイトーンはやっぱり抑えつつ、最期まで声を割らすことなく歌い終えた。拍手喝采。

 

METは常に代役が控える虎穴。チェネレントラでの、代役アリア・アンコールを観た後でのこの好演は印象深かった。