もう20年以上前のこと
高崎駅近くにひっそりとあった喫茶店

見つけたのは、お茶の先生に紹介された皮膚科に通ったとき
この頃、遅れてきたニキビと酷いニキビ痕に悩まされていた


蔵みたいな建物の入り口

高校生以下お断り
大人数のグループお断り
大声のおしゃべり、携帯電話お断り

たぶんこんな感じの貼り紙があった

石の階段を数段上がり
重い扉をあけて高めの敷居を跨いで中に入る

最初はなかなか入れず
石段の前で何回も悩み
皮膚科治療が終わる頃にようやく入った

中年の店主の「いらっしゃい」の声

大きな木で作られたカウンター数席
四人掛けの木のテーブル席が4つ
座り心地のいい深さと柔らかさと重さの椅子

メニューは確か
何種類かのコーヒーと
ホットケーキとコーヒーゼリーと
奥様手作りのケーキと
厚切りトーストとトーストをくり貫いたカレー

コーヒーのこと聞くと、10分くらいはコーヒーについて話す店主

気づかないくらいに音楽が流れている

最初は緊張した
でも、その喫茶店が気になり大好きになり、仕事終わりほぼ毎日、いつも二時間くらい座った

本を読んだり
資格試験の勉強をしたり
ただ、ボーッとしたり

数年通ったある日、突然
「お休みします」の貼り紙

その紙が剥がれるのを待ち、やっぱりほぼ毎日まえを通り
ある日、開店しているの見つけて入ると、奥様が立っていた

ご主人はお店の営業中に倒れて、そのまま亡くなったそうだ

その後しばらくして
奥様は別のご夫婦にお店を貸した

そのお店は以前とは違い
わりと気さくなご夫婦が営み、コーヒーもブレンドメインになり、お客も明るく話す人が増えて

私は行くのをやめた
カウンターもテーブルも椅子もそのままだったのに

路地だったから足が遠のき、数年後に行ってみると駐車場になっていた
ここには停めたくないなぁ、と思った


今朝、あの喫茶店が猛烈に懐かしく思い出された

きっかけは、最近の友人(♂)からのコーヒーを飲もうと言う誘い

友人と行くことを思ったら、あそことあそこのお店は、一緒に行きたくないと思っている

この苦手の根っこ
友人が、病気をして障害者手帳を有してから誘われるようになったこと

ここに引っかかる自分がいる

やっぱりかちーん、と思う


でも今は
気づいたままに、ほおっておく

ほおっておく、と言う許しを自分にあげる


友人の誘い、今は断る

一杯のコーヒーを、どこで誰と一緒に飲むのか、そこに今の自分が映るから

ある日、友人がいれてくれた紅茶
あったかくて、優しい気持ちになった


読んで下さって、ありがとう

つくし野ひろみ