「異常な雰囲気でしたね。まさに、空前絶後のド迫力マッチ。アンドレとハンセンが戦うのですから。熱狂したファンの拍手、歓声、どよめきが飛び交って、見ていた僕も圧倒され、身体が震えたのを今でも覚えています。その一方で、僕たちは潰れた会社の人間ですから、みじめな想いも抱いていてね。
そんな試合の後、僕と木村さんが敵のリングに上がったんです。メインで戦うタイガー戸口選手とアントニオ猪木さんがいました。山本小鉄さんもいたな。
リングアナが木村さんにマイクを渡したんです。そうしたら、木村さんの第一声が、『こんばんは』。会場からドッと笑いが起こりました。失笑です。当たり前ですよ。普通は啖呵を切って、猪木さんに殴りかかって、蹴っ飛ばして、マットにねじ伏せて、『ぶっ殺してやる』とやってもいいところでしたから。でも、木村さんはそうしなかった」
プロレスラーっていうとアメリカ人のイメージだったんですけど、ヨーロッパの選手も居たんですね。
ヨーロッパと言えば、ビル・ロビンソン辺りですか？
昭和の全日本プロレスまで手を広げてるなんて勉強熱心ですね、ヨーロッパといえば、今でもウィル・オスプレイとか新日本プロレスで活躍している選手も居ますが、この時代だと国際プロレスっていう団体がヨーロッパルートに強くて、ビル・ロビンソン、アンドレ・ザ・ジャイアント（初来日時はモンスター・ロシモフ）ダイナマイト・キッドなんてのは国際プロレスが日本デビューじゃないですかね。
昭和のプロレスって、新日本プロレスと全日本プロレス以外にも団体があったんですね。
テレビ放送が打ち切られて経営が立ち行かなくなって、80年代の頭の方に潰れちゃったんでリアルタイムでこの団体は見ていないんですが、元・国際プロレスのレスラーが新日や全日に上がってるのは見ていました。
国際プロレスって有名な選手とか居たんですか？
う～ん、一番有名なのは国際プロレスを辞めて猪木に挑戦状を叩き付けて、大型に本陣対決って話題になったストロング小林ですかね。
私が子供の頃はストロング金剛って名乗って風雲たけし城とかのバラエティで活躍していましたけど、あとは全日に行ったマイティー井上、鶴見五郎、阿修羅原、アポロ菅原とか居るんですが、私の子供の頃に見ていたのはラッシャー木村、寺西勇、アニマル浜口のはぐれ国際軍団ですね。
ラッシャー木村は見たことがあります。
マイク持って面白いこと言う人ですよね？
キャリア後半の全日本プロレス時代はマイクパフォーマンスで会場を沸かせていましたけど、国際プロレスが倒産して直ぐに新日本プロレスのリングに上がっていた頃は、猪木の敵役として髪切りデスマッチで負けたのに坊主にならずに逃走したり、猪木とはぐれ国際軍団の3対1という屈辱的なマッチメイク組まれちゃったりもするんだけど、観客から大ブーイングを浴びるヒールレスラーだったんですよ。
この頃のプロレスって金曜8時とかに放送していたんで、裏番組が太陽にほえろだったり金八先生だったりと、馬場・猪木ってのは単なるプロレス会社の社長だけじゃなくて、ゴールデンの番組プロデューサーの役割も担っていて、新日本プロレスはラッシャー木村率いるはぐれ国際軍団と抗争してた時期が一番視聴率を稼いでいたみたいです。
国際プロレスの吉原社長は最後の一手として、新日本プロレスとの全面対抗戦を画策していたようなんですが、そこまで団体の体力が持たずに北海道巡業の途中、羅臼町民グラウンド特設リングでの興行を最後に倒産してしまったそうです。
もう選手のギャラも払えない状態なんだけど、冗談じゃねぇ！ って帰ろうにも電車賃も無いし、ただ巡業回って日銭を稼いでその日の飯を食うので精一杯だったとのことで、倒産が決まった途端にみんなバラバラになっちゃって、新日との対抗戦に参加したのはラッシャー木村、アニマル浜口、寺西勇の3人しか居なかったので、はぐれ国際軍団として参戦たみたいですね。
アンドレとハンセンの伝説の試合の後に潰れた団体のレスラーが殴り込みを掛けるんだから、そりゃ～バツが悪かったでしょうね。
実際私も国際プロレス自体は見たことないんですが、倒産後チリジリになったレスラーたちは、華はないけどしっかりとした仕事をこなすレスラーという感じで、場末の寂れたスナックの様な大人の雰囲気の団体だったのかもしれませんね。
ｱﾅﾀﾊｰ よく次から次へとプロレスの話が出て来ますね！
あと、このレスラーは見ておいた方がいいとか、オススメのレスラーっていますか？
そうですね～昭和のプロレスで入門編としては、初代タイガーマスクは外せないですよね！
また、長くなるのでタイガーの話は次回ということにしておきましょう！
最近は仕事の合間にこんな会話ばかりしてるんですが、初心者がこんな話を聞いて楽しいんだろうか？ と、不安になります。 