12月に離島防衛を想定した大規模な演習が行われる。自衛隊が離島防衛に本腰を入れ始めたわけである。
現在、中国が勢力を拡大して東シナ海に進出しているが最も懸念されるのが日本の外交、防衛力の弱体化につけこんで太平洋進出のプラットホームにするために東シナ海の離島を占拠することである。

特に尖閣諸島などには漁船の難破を装い、特殊部隊を上陸させたりして日本が対処し難い方法で占拠する可能性が高い。

では離島が占拠された場合は当然ながら自衛隊が離島奪回作戦を行うわけであるが、現在の組織や装備で効果的に対処できるのかは疑問がある。そこで、自分はあまり詳しくはないが客観的に離島防衛について考えてみたい。

陸上自衛隊の課題

現在、離島への侵攻が行われやすい沖縄、九州には2個師団と1個旅団が配置されているが、離島防衛の対処能力を持った部隊は長崎の西部方面普通科連隊くらいである。

陸自全体でも離島防衛対処能力を持った部隊は上記の西部方面普通科連隊の他に第1空挺団や特殊作戦群くらいである。これは今まで陸自が離島防衛に本腰を入れていなかった訳であり、改善の必要がある。

そのためにはまずは沖縄、九州の普通科連隊を半分海兵隊化する必要がある。

占拠された離島での偵察や工作、奪回のための作戦にはやはり海兵隊のノウハウが必要であり沖縄、九州の普通科連隊を海兵隊化するべきである。

また、上陸してからの独立した行動のためには従来の普通科部隊の編成を変えるべきだ。

例えば、普通科連隊の中隊の編成は小銃小隊や迫撃砲小隊、対戦車小隊に分離して編成されていたが、これをごちゃ混ぜで編成するべきではないだろうか。

その方が独立して一体化した作戦を行いやすい。

海上自衛隊の課題

海自は現在大型の輸送艦「おおすみ型」を保有するがいづれも航空機運用能力に乏しく、離島奪回作戦には力不足の感もする。もちろん、おおすみ型の搭載するLCACは上陸には大きな力になるが、やはり航空機を使った三次元の作戦を行うためにはおおすみ型では力不足である。

ヘリコプターを11機搭載できる護衛艦「ひゅうが型」をおおすみ型と組み合わせて運用すればいいのだが、ひゅうが型は護衛艦としての任務もあるので自前で強襲揚陸艦を持てば良いのではないか。

強襲揚陸艦を保有できれば海自の離島奪回作戦支援能力はかなり向上するはずだ。

航空自衛隊の課題

占拠された離島に陸自が上陸して奪回作戦を行うにはその前に敵の対空兵器やレーダー、拠点への爆撃や陸自上陸後の航空支援が重要になる。

まず敵のレーダーを潰すためには対レーダーミサイルを空自が保有しなければならない。

そして、敵の拠点や陸自上陸後の航空支援には精密な爆撃能力が求められる。

例えば陸自の特殊作戦群が空自に航空支援を要請した場合に特殊作戦群が要求した場所にピンポイントで爆撃する能力が必要だ。

空自はGPS誘導爆弾JDAMを導入しているが、JDAMの効率的運用のためにはJDAM投下地点の座標を戦闘機に送らなければならない。

そのためには陸自部隊に随伴して座標を送るコンバットコントローラを育成すべきである。

アメリカでは既にコンバットコントローラが活躍しているが、自衛隊もそういうノウハウを積極的に学び生かすべきである。

離島防衛についてはアメリカが本腰を入れるという保証はない。なにしろ「尖閣諸島は日米安保の適用外」と答えたアメリカ政府関係者がいたくらいだ。

自分の身は自分で守るのが基本である。上記以外にも自衛隊には離島防衛のための問題が多々あるが、陸海空の統合運用能力を高めると共に、装備や組織の改編などを通じて総合的に離島侵攻に対する抑止力と対処能力の強化が必要だ。