陸上自衛隊は内陸部の移動発射車両から発射して海上の敵艦艇を攻撃する地対艦ミサイルを保有している。現在88式地対艦誘導弾と12式地対艦誘導弾の2種類を運用しており、ともに射程は150~200km以上とも言われる。

 

地対艦ミサイルを運用する部隊として5個地対艦ミサイル連隊が編成されている。元々はソ連の上陸部隊を迎え撃つことを念頭に開発されたミサイルであり、冷戦終結に伴い活躍の場が無いように思われたが、海洋活動を活発化している中国海軍の動きを牽制する上で、一層重要性を増していると言えよう。

 

中国海軍が太平洋に出るには、九州・沖縄などの南西諸島そして台湾近海を通過しなければならない。日本地図を逆にして見ると分かりやすいが、南西諸島と台湾が中国に対して蓋をするような形になっている。

 

したがって、地対艦ミサイルを大量に配備することで、中国海軍を牽制することが可能となる。特に有事の際には中国海軍艦艇にとって飛来する地対艦ミサイルは大きな脅威となる。

 

ただし、5個地対艦ミサイル連隊のうち、4個は北海道と東北に集中的に配備されており、九州・沖縄方面には1個連隊しか配備されていない。依然としてロシアを念頭に置いた冷戦型のシフトである。

 

現状ではロシア海軍が日本に直接与える脅威は低下している。したがって北海道に1個連隊だけ残し、あとの3個連隊は九州と沖縄に配置換えをしてはどうだろうか。

 

奄美大島と宮古島には熊本の第5地対艦ミサイル連隊隷下の1個中隊がそれぞれ配備されており、今後は石垣島にも1個中隊を配備する予定である。

 

しかし、1個中隊の編成は6連装発射車両は4両だけなので、同時に発射できる地対艦ミサイルは24発である。近年の中国海軍の防空能力は飛躍的に向上しており、中途半端な発射数では迎撃される可能性もある。1個中隊ずつの配備では不十分である。

 

できれば南西諸島には北海道と東北から配置換えした3個連隊を加えた4個地対艦ミサイル連隊を集中配備したいところである。地対艦ミサイルで中国海軍艦艇の防空能力を超える飽和攻撃を実施できる体制を取れば、中国海軍に大きな脅威と行動の制約を与えることができるはずだ。