□幸福実現党党首・釈量子
 --原発ゼロの夏となりました
 政府は7月1日から9月末までの平日、企業や家庭に自主的な節電を呼び掛けていますが、大規模停電に追い込まれることもなく、「原発が動かなくても、以前と変わらない生活が送れる」という見方が広がっているように思います。しかし、熱中症による救急搬送が相次ぎ、死者も出る真夏のこの時期、国民に節電努力を強いるのはいかがなものでしょうか。
 東日本大震災後の原発停止を受け、火力発電所のフル稼働が続いていますが、運転開始から40年以上経った老朽火力発電所が酷使されているのが現状です。2013年度版エネルギー白書が「故障などによる電力供給不足に陥る懸念が依然として残っている」と指摘するように、不測の大停電が起きないとも限りません。政府として原発再稼働に向けて指導力を発揮すべきです。
 --北海道電力が電気料金の再値上げを申請しました
 原発停止により不足した電力を火力発電で補うために、石油や液化天然ガス(LNG)の燃料輸入費が膨れ上がっています。燃料費の高騰にアベノミクスによる円安も相まって、追加燃料費は年間3.6兆円にも上ります。2014年度の防衛費が約4.9兆円であることを考え合わせても、膨大なムダ金が国外に流出していることが分かろうというものです。原発再稼働が遅れれば遅れるほど、電力会社の経営は悪化し、家計や企業の負担は重くなるばかりです。企業活動が落ち込めば、産業の空洞化や失業者の増大も避けられません。
 2013年度の電力の化石燃料への依存度は88%と、40年前の石油危機時を上回っていますが、これはエネルギー安全保障上、重大な問題です。集団的自衛権の行使容認をめぐる議論でも、中東のホルムズ海峡に機雷が敷設された場合、日本としてどう対応するかが取り上げられましたが、日本が輸入する原油の8割、LNGの3割がホルムズ海峡を経由して運ばれます。万が一、海峡が封鎖されるような国際紛争が起きれば、燃料輸入が途絶し、日本経済は大混乱をきたすことになります。米国による対日石油全面禁輸が引き金となった日米開戦の教訓を忘れてはならないのです。
 米国からのシェールガスの輸入も計画されていますが、エネルギー調達におけるリスク分散を図るには、ロシアやアフリカ諸国との関係強化により、供給チャネルの多様化を図ることが必要です。しかし、エネルギー自給率6%のわが国が安定的に電力を得るには、現段階では、原発再稼働こそが生命線と言わざるを得ないでしょう。
 --鹿児島の川内原発の再稼働は、冬以降にずれ込む公算が大きくなりました
 先月中旬、原子力規制委員会が川内原発について昨年7月に施行された新規制基準を満たしていると判断。再稼働を前提にした安全審査に事実上合格したものの、地元同意の手続きなど、再稼働までにはいくつかのハードルが待ち受けます。ここは、国として早期再稼働に向けた明確な意思を示すべきではないでしょうか。
 経済発展が目覚ましい新興国では、その旺盛なエネルギー需要を賄うべく、安価な石炭火力への依存度が上昇していますが、大気汚染による健康被害が懸念されます。長年にわたり培った世界最先端の原発技術は、日本の一つの国力です。わが国は、福島原発事故から得た教訓をもとに、さらに原発の安全性を高め、安価で安定的な電力を供給することで、世界の人々の生活水準の向上に貢献する使命があると思います。安全性に疑問符が付く中国製の原発が市場を席巻するようなことになれば、原発事故の危険性は増すばかりです。
 加えて、国家安全保障の面からも、原発技術を手放すべきではありません。隣国に核保有国を抱えるわが国として、原発を稼働させること自体が潜在的な核抑止力として機能していることを見逃してはなりません。国民生活や日本経済を守るのみならず、国家の存立そのものに直結するのが実は原子力技術です。震災から3年5カ月、原子力なくして、日本を強く、豊かにすることはできないという現実に目を開くべきです。
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【プロフィル】釈量子
 しゃく・りょうこ 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。大手家庭紙メーカー勤務を経て、94年、宗教法人幸福の科学に入局。常務理事などを歴任。幸福実現党に入党後、女性局長などを経て、2013年7月より現職。
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