ADVの感想ばかり書いているブログと化している | アドベンチャーゲーム研究処

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アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【さよなら2021年号】

ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者・うしろに立つ少女 COLLECTOR'S EDITION -Switch

『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』 65

 

 このシリーズ自体は、88年当時の性能だからこそ許容された表現や演出を「ファミコン」(ディスクシステムだけどね)というフォーマット内で嚙み砕いた点が偉大なのであって、ADVとして見れば昔のスタンダードナンバーであり『ポリスノーツ』とかと同じでパロディ世界のごっこ遊びという側面はあると思うので、ここまで高水準に翻訳されてプレイすると仔細に描かれすぎて違和感は正直あるんじゃないかなと。原作はデザイン的にフラグ立て(捜査の体験と展開の発見)を重視したつくりになってるんだけど、今プレイすると定速テキスト送りにあのバランスは遊ぶ上でネックにしかならないので、UI面で近代化した今回は原作の楽しさとの折衷案にはなっている印象。いろいろ思うところはあるけど、恐らくコマンド総当たり系で映像的にここまで手が込んでいるものって現代ではそうお目にかかれないだけに、このジャンルが好きなら遊ぶ価値は絶対ありでしょう。

 

『ファミコン探偵倶楽部 後ろに立つ少女』 60

 

 むしろ今回のリメイクで問題だったのはこっち。上でも言った通り近年のコマンド総当たり系のADVでは抜きに出たディテール表現をしてるんだけど、原作自体はあくまでホラー的な不気味さをファミコン特有な表現でやってるのが魅力なので、物語を仔細に描けば描くほどリメイクの魅力と原作の魅力が相殺する関係になってしまっていて、トータルかなりベタなものを遊んでいる印象に落ち着いちゃってる。原作は消えた後継者と比べるとどう行動すればフラグが立つのか予測が立てれるように設計されていて、ゲームプレイにもある程度流れができている(インタラクティブな演出に舵を切っている)こともあって、いろんなものをスムーズに見せすぎちゃってる今回よりニンテンドーパワー版の方が自分は評価したいかな。

 

ワールズエンドクラブ -Switch

『ワールズエンドクラブ』 52

 

 一応、打越鋼太郎&小高和剛最後のデスゲームと銘打って発表された経緯もあるので、『ダンガンロンパ』や『極限脱出』シリーズの終着地点なんだろうけど、設定はデスゲームではなくポストアポカリプスだし、着想的に絶対出てくるであろうサバイブ要素はほぼ無視してるし、ロードムービーしながらクラスメイトのエピソードを描く様は修学旅行のそれだしで、最初に伝わってくるのがデスゲームに疲れましたという作り手の意思表示なのは、この作品を定義づけるアイデンティティという点で正直どうなのかなと。アップルアーケードで中盤まで先行配信してしまった為か、ミステリ的なタネアカシが進めば進むほど無茶なご都合主義の応酬になってしまっていて、逆説的に中盤までのロードムービー的な成長物語は白々しさが色濃くなってゆき、最終的に「結局この修学旅行って何だったの?」というテーマのなさに行きついてしまう構造的な迷走を感じる。TOOKYOGAMESの既出作品はどれも00年代に流行ったデスゲーム的な想像力の延長戦という印象がついてまわっているので、結局キャリアの最後までゾンビを撮り続けたロメロよろしく、最後までこの路線に付き合っていくつもりなんだろうか。

 

Chicken Police - Paint it RED!

『Chicken Police』 59

 

 奇天烈なビジュアルに反してハードボイルドを成立させるだけのディテールと演出はしっかりしていいるし、キャラクターを中心とした世界観の構築にもつながっているので、狙いと効果がちゃんと因果関係で結べている手堅い作品。話が予定調和な部分も含めて”安心して遊べる”1作と言えるんじゃないかな。惜しむべきはトークを楽しめてナンボなジャンルにして翻訳文が頭に入って来づらい点と、序盤は世界観の説明に偏重しすぎていて話が進まないことがハードルとなっている点かな。海外ゲームということで謎解きに脈略と納得感がなさすぎたり、改行が3行以上だとテキストを読み切る前に1行目が文字送りされてしまう謎の仕様だったり、最初の言語設定が英語だったりと、メーカーは日本に合わせる気は特になしなのも潔しと取るべし。

 

探偵撲滅 - Switch

『探偵撲滅』 58

 

 恐らく家庭用のミステリADVでは最も忠実にメフィスト賞的なもの(つまり『コズミック』なんだけど)をゲームへ移植した作品。わかりやすくダンガンロンパの進行フォーマットを用いているわけだけど、物語の表現母体はそっちという印象で、間延びしたテキストやレスバと化した口頭テーマ語りを含め、良い点も悪い点もコピペという印象がついて回るところ。ゲームの狙いやドラマの深度に段階付けがいまいちできておらず、全体的にインタラクティブの切り込みは浅いけど、細かいことを気にしなければベタなソフトとしてそれなりに遊べるのでは。

 

 

『ネクロバリスタ 最期の一杯』 40

 

 フル3Dでアングルを取り入れてるのがアイデンティティなソフト。実際カット割りへの拘りは感じるところではあるんだけど、細かいテキスト送りに合わせてカットも頻繁に変わってしまい、映像表現としてはせわしない印象に行きついているのは本末転倒な気もします。ストーリーとして見ると、設定を詰め込んだもののそれを魅力的にプレゼンできてないというオタクがやっちゃう例のあれで、特にナードの自己陶酔レベルなテキストに付き合わされる導入部やサイドシナリオの出来はかなりしんどい。中盤くらいからやりたいことはわかってくるんだけど、ドラマとしては積み重ねのものを最終話だけ見させられる感じで、プレイヤーと作り手で没入感への差を強く感じた作品。

 

 

シンソウノイズ ~受信探偵の事件簿~ - PS4

『シンソウノイズ 受信探偵の事件簿』 42

 

 西澤保彦的な能力者というガジェットを用いた青春ミステリもの、と思ったら100%がっかりするであろう作品で、美少女ゲームというジャンルにミステリ要素がプロットとして載っているだけという印象。スピード感皆無なテキストも、ミステリとしてストーリーラインを引っ張るよりキャラを優先している構成も、出来に対して自信のなさが透けて見える簡易的なトリックも、良くも悪くもそれが美少女系ノベルゲームフォーマットだからという根拠以外に許容できる理由がなく、つまりこのジャンルに対して理解がないと見ていてきつい。

 

 

真 流行り神1・2パック - Switch 【CEROレーティング「Z」】

『真流行り神』 39

 

 近現代では珍しいマルチシナリオで設定自体が分岐するタイプのサウンドノベル。どう考えても構造は『流行り神』ではなく『夜光虫』とか『最終電車』などの90年代に生まれた『かまいたちの夜』チルドレンで、10年代にこれをするのは逆にチャレンジングだなとは思うけど残念ながらゲーム的な意味づけはできていない。よく言わてるシナリオがグロスプラッタ一辺倒なのも問題なんだけど、謎の引力でプレイヤーへ「気持ち悪い」と思わせるためとしか思えない行動をとりまくる登場人物たちが一番不快な原因かな。超えてはいけない一線を越えてるシナリオ(醤油・生贄編)はあるけど、あの頃のサウンドノベルを思い起こさせるノスタルジーも少し感じて憎み切れないところはある。

 

 

LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶 - PS4

『ロストジャッジメント 裁かれざる記憶 』 評価不能

 

 「いじめ」がモチーフの「学園もの」というワードだけ決め打ちして作ってると思うんだけど、その出発点からするとゴールのスケール感が大きくなりすぎてシナリオとゲームに因果関係が結べていない(半グレやチャイマに追われながら部活動の外部顧問をさせるゲームプレイになんの違和感も覚えなかったのだろうか?)のは明らかで、前作と同じくアクションアドベンチャーゲームのムービー部分が探偵もの止まりという印象は強い。つまり如何にムービーでサスペンスをされても、ゲームプレイに落とし込んでないので探偵として捜査し真相にたどり着いている感は全然なかったし、ネタにしてるものに対して結局暴力(アクション)で解決しちゃうのもゲーム側にシナリオ展開が拘束されてるように感じちゃうよねっていう。これらは前作から見られてる病状ではあるけど、「龍が如くのフォーマットで別ジャンルにアプローチ」色が薄まって、設定の変わった龍が如くになりつつあるのは大規模な探偵ゲームとして期待していた側としては残念かな。全国に1万人いるか微妙なニーズではあるけど。

 

【コメント】

一応レビューっぽいものを書いている以上、

100点満点の作品はある種の基準として定義するのは責任と思うので、

あえて言及しますと…アニメ版『宝島』が100点満点です。ここの基準じゃ評価不能だけどね。

 

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