家庭用向けADVシリーズものの現在地 | アドベンチャーゲーム研究処

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アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【概要】

移植は最新作とカウントしていません。

 

【家庭用向けADVシリーズものの現在地】

 

『探偵 神宮寺三郎』シリーズ

 

ダイダロス:ジ・アウェイクニング・オブ・ゴールデンジャズ - Switch

最新作:『疑惑のエース』(2019年7月31日)

 

 ご存知2度の権利元解散を乗り越えた長寿シリーズ。長寿化では必須なファンの循環を、FC(ステレオタイプなコマンドADVにハードボイルドを乗せてた時代)、PS・SS(斎藤竜也氏の設定をベースに実質のリブートを図り、映像的な進化を行っていた時代)、アプリ・DS(短編化と演出の簡素化でスケールダウンしつつも話のバリュエーションを増やした時代)の少なくとも3回は行っており、それぞれでファンを獲得しているからこそ、移り変わりの激しい業界でもシリーズが継続できているといえる。

 

 ただし、基礎のフォーマットとしていたアプリがスマートフォンへの移行に(権利元の解散と低予算が原因で)一切乗れなかったこともあって、3DSで復活した際にはフィーチャーフォンで時代が止まったような表現力と内容に対し何らしかのテコ入れが必要だったものの、セールスの固定化によって採算性の面で適切なアップデートができず悪循環に陥っていたと思われる。だからこそ、近代的にアップデートを図った『ダイダロス』というリブートを仕掛けているが、その企画意図の実践は作品・プロモーションともに失敗。いや、大失敗している。ほぼゲリラ的に配信した『疑惑のエース』はあるものの、内容はガラケーレベルで内輪向けという印象は強く、実際リリースが止まっている状況がその証左と言えるだろう。『ダイダロス』自体は立ち位置としては外伝なだけに、このまま散るより本編でもうひと勝負して散ってほしいが、そこまでアークシステムワークスがするかというと。ファンは根強いシリーズなので、何年かして需要が温まったタイミングでの復活と時代に即したアップグレードに期待したい。

 

『逆転裁判』シリーズ

 

大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟- -Switch (【数量限定特典】「蔵出し設定画」「蔵出し楽曲」が手に入るダウンロードコード 同梱)

最新作:『大逆転裁判2 成歩堂龍之介の覺悟』(2017年8月3日)

 

 カプコンがクラッキングを受けて『7』が開発中であることがリークされてしまっている関係で、多分新作が出るんでしょうねとしか言いようがないシリーズ。セールス的には国内市場が主戦場で、海外マーケットに注力していっているカプコンの方向性とは差異があるのでシリーズ停止の可能性は十分あっただけに、一安心ではある。長期シリーズだが未だに『1~3』のトリロジーパックが展開されていることからわかるように、シナリオ・ルール上で得られる快楽性は成歩堂シリーズで完成されてしまっており、『4』以降はシナリオの出来不出来が評価対象になってしまっている(ゲームとしての楽しさで新規性が見いだせなくなってしまっている)印象は否めず、このシリーズについて回っているマンネリ打破というお題目にケリをつけないことには商業的に先細る可能性は高いと思われる。逆に言えば、ハードもSwitch基準となり据置マルチで発売濃厚で、シナリオも『4』からの王泥喜シリーズが『6』で完結している関係でゲームシステム面のアップデートが図れるタイミングと考えられ、大幅な刷新を期待したいところだろう。

 

『サウンドノベル』シリーズ

かまいたちの夜 輪廻彩声

最新作:『かまいたちの夜  輪廻彩声』(2017年2月16日)

 

 『真』の頃に大事な娘とまで言っていた『かまいたちの夜』の美少女ゲーム化が今のところ最終作。実写ベースで日本が舞台、しかもテキスト主導のゲームゆえに海外展開に弱いのがネックで、国内市場の鈍化もあってスポンサーとしてセガがしっかり金を出してくれていたと思われる『428 封鎖された渋谷で』以降はリクープを優先してなのか規模縮小していった経緯があるので、シリーズの復活はスパイクチュンソフトの現状からみるとかなり厳しいという印象は否めない。実質的にチュンソフト文脈で生き残っているのは海外での高評価を受けた『極限脱出』から始まる打越鋼太郎ディレクションシリーズだが、サウンドノベルというより美少女ゲームを一般向けに翻訳している傾向が強く、かつてのサウンドノベルファンへは内容的にも商業的にもリーチが届いていないからこそ国内では存在感が薄いのだと思われる。

 最終作 『かまいたちの夜 輪廻彩声』は美少女ゲームとしてリブートしたから…というより、現代スペックへアップグレードするには明らかに予算が組めていないし企画も練れてない(=原作をスポイルしたものしか提供できない)状況でのリメイクをスパイクチュンソフトが監修止まりで慣行しているのを見るに、親会社的には過去資産としか見ていない可能性が高く、大きく仕掛けるというより『街』や『かまいたちの夜2』『忌火起草』などのプレイ環境が消失しつつあるソフト整備に期待する方が賢明なのかもしれない。

 

『ダンガンロンパ』シリーズ

 

ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期 - PS4

最新作:『ダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』(2017年1月12日)

 

 最終作の『V3』で「フィクションに依存せず現実に帰れ」とファンへ伝えたうえでシナリオの小高和剛氏がスパイクチュンソフトを退社してしまい、実質的にはシリーズは終了しているようなものだし、人狼・デスゲーム自体が話の展開や仕掛けが固定化されているだけにこれ以上続けても再放送に陥るのは目に見えている状況かとは思うんですが、スパイクチュンソフトがオリジナルのアドベンチャーを新作で出す場合はこのシリーズの看板が必要と予想されるのであえて言及。端的に言えば別のライターを立てた上での『4』は多分ない、小高氏は関わっても監修、『ザンキゼロ』的な企画のADVバージョンなら世に出る可能性はあるんじゃないの。ただしデスゲームを脱したブランディングをしないと後には続かないだろうから、我々の予想する題材ではない可能性が高いのでは。以上。

 

『名探偵コナン』シリーズ

名探偵コナン ファントム狂詩曲 - 3DS

最新作:『名探偵コナン ファントム狂詩曲』(2014年4月17日)

 

 家庭用ゲームの高予算化の煽りと、スマートフォン市場に児童・カジュアル層が取り込まれた関係で、コンパチヒーロー(ガンダム・仮面ライダー・ウルトラマンの御三家)さえもウルトラマンが脱落しているのが現状のキャラクターゲームなわけですが、その御多分に漏れず映画の興行は右肩上がりの『名探偵コナン』シリーズも今世代はパッケージゲームの展開できていない状況。一応、ダウンロード専売で『スケボーラン』という文字通りコナンのキャラが出てくるだけのランゲームは配信されているものの、「人気原作のキャラグッズ」であっても「原作のゲーム化」ではないというのが実態かと思われる。

 スマートフォンではソーシャルゲームが2本並行しているのが示す通り、現状のゲーム展開はキャラクター消費のマネタイズ化という意味が強まっていると考えられるが、とはいえGBから始まってWS・PS→GBA・PS2→DS・Wii→3DSと、シリーズの休眠期間を置かずにプラットフォーム遍歴に付き添っている唯一のキャラものADVであり、現在でも探偵系ではキャラクターゲームの最大風速が出せるIPなのは間違いないので、マーケット的な相性の良いであろうSwitchが好調な内にパッケージが復活しないとタイミング的に難しくなっていくと思わるる。

 陥った原因は3DS世代でスパイクチュンソフトの開発していた~曲シリーズが最終作『ファントム狂詩曲』で数字の落ち込みが激しかった(約1.6万本でランキングからフェードアウト)ことと、「名探偵コナン」ブランドとして現状キャラゲーをソーシャルゲームとはいえ仕掛けていることがネックになっていると思われ、つまり潜在市場としてヒットする可能性はあるものの掘り起こし済みのものにわざわざ会社が勝負をかけるかは微妙なのではと。こればかりはIPの力というよりめぐり合わせの要素が強そうなので、忘れたころにひっそり発表される可能性が高いかな。

 

なぜ日本は〈メディアミックスする国〉なのか (角川EPUB選書)

そもそも家庭用のキャラクターゲームというメディアミックス項目自体が、ドラゴンボールやガンダムなど継続して展開し十万程度のセールスも確保された選ばれしIPの通る狭き門になってきており、単価を抑えて仕掛けたいキャラクターIPの場合、家庭用ゲームよりスタートアップの資金が安く抑えられキャラクターの人気を現金化しやすいソーシャルゲームにシフトしている現状があるため、『名探偵コナン』クラスのブランドさえも勝負をかけるのが難しくなっていると考えられる。

 

『レイトン教授』シリーズ

 

レイトン ミステリージャーニー カトリーエイルと大富豪の陰謀DX - Switch

最新作:『レイトンミステリージャーニー カトリーエイルと大富豪の陰謀』(2017年7月12日)

 

 世界累計1700万本、国内市場では唯一の単一パッケージ(フレンドリー版込み)でのミリオンセールを達成したADVタイトルではあるものの、DS時代に流行したカジュアルゲームはスマートフォンへ需要が吸収された上に、ソフトの企画やゲームデザインそのものが初代DSへ合わせすぎて3DS世代への移行に失敗(上画面重視でP&Cとしてのテンポ感がスポイルされたのが代表的)してしまい急速に需要が収束しており、シリーズ内でのファン層の循環とアップデートの必要な状況が6~7年前からみられていた。実際、最新作の『レイトンミステリージャーニー』は女児にターゲティングを改めており、レベルファイブの得意とする大型のメディアミクスで普及を図る戦略が取られ、従来のレイトン教授とは異なる商業展開となっていたが、売り上げ的には右肩下がりに歯止めは効かず続編も出ていない状況が示す通り失敗したとみられる。

 このシリーズはDS時代に任天堂が販売をした関係で海外でもカジュアルゲームとして人気が高かったので、IPとしてはある程度の資産価値があると思われるものの、現状の家庭用ゲーム市場で活躍できる場がなく、かといってかつての客がいたスマートフォン市場には企画がミスマッチな状況で、レベルファイブのお家事情(大量離反とプロジェクトの長期化)的にも複数の大型プロジェクトを捌ける状況とは考え難いため、市況・会社的な都合ともに宙ぶらりんという印象は強い。まあ逆に言うと、レベルファイブというソフトハウスは世相を読みながら新興ニーズを生み出す企画を作ることはできても、環境変化に適応しながらファン層を引っ張るような芯のある作品作りはしていないしできないと思っている。そうですね、結局こういう締め方になるので申し訳ない。

 

『レイトンセブン』発表当時の映像。超つまんなそう。

最盛期当時の主要層は恐らくアイテム探しや脱出ゲームなどへ吸収され爆発飛散していったと思われる。このシリーズはモバゲー時代から人狼ゲームでカジュアル層へアプローチしようとしていたが、人狼自体がカジュアルなものではない(推理力の格差や同時参加の必要性など)ので客層とは乖離があった。ゲームシステムそのものを再定義しようとしたレイトンセブンがなかったこと(しかも2報では人狼ゲーム化)になってしまったことから考えても、やはり新機軸とカジュアルが相反する状況に対しギャップを埋めるアイデアが思いつかなかったのが国内外でライトユーザーが離れていってしてしまった原因なのかも、というのが後出しじゃんけん的な所見。

 

『科学アドベンチャー』シリーズ

 

ROBOTICS;NOTES DaSH - PS4

最新作:『Robotics;Notes DaSH』(2019年1月31日)

 

 『Steins;Gate』で大幅に知名度を向上させたシリーズではあるものの、科学アドベンチャーというIPとして見れば『Robotics;Notes』『Chaos:Child』『Occlutic;Nine』と着実に存在価値はなくなっており、ファンの興味を再び惹くような『Steins;Gate』に続く作品が必要なのが7~8年くらい抱え続けている課題。なのは誰の目から見てもな話というか、MAGES.自身も『Steins;Gate』の蛇足を何度も書き加えてる現状把握していないわけがなく、だからこそ『Anonymous;Code』がここまで長期化しているんでしょうと。あえて言えば、このシリーズはオタクとオカルト科学がかなり重要なワードになっているので、そのガジェットを『Steins;Gate』(2009年)当時よりアップデートする必要はあるんじゃないかなとは思います。

 商業戦略としてはマンガ・アニメ・小説・ゲームを並行して攻勢をかける一般的なメディアミックスをそこそこ大規模に行うのが特徴で、ゲーム原作ではあるが『Occlutic;Nine』はアニメ先行(恐らく視聴者の絶対数が多いアニメで知名度を高めゲームのヒットにつながったPSP版『Steins;Gate』と同じサイクルを狙っている)して展開し失敗しているので、恐らくゲーム先行で出すんじゃないっすかね~くらいしか思いつく言葉はない。MAGES.自体がコロプラに買われ完全子会社になっており、今後については心配されるので頑張て下さい。

 

【コメント】

記事のネタ的に早めに書き上げた記事です。