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アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【概要】

Nintendo e-shopが終了するのでDSソフトの見直し記事を書いていたら、

量が膨大になって下書きの収集がつかなくなってるらしい。

 

【今年遊んだADVの感想です】

 

ジャックジャンヌ - Switch

『ジャックジャンヌ』 68

 

宝塚的な特殊な演技環境を舞台にした学園もの、という設定的には変化球な作品だけど、用いている文法は古典的な少女マンガという印象。学園パートは演者側、舞台パートは観客側になるよう視点の転回を行っており、劇中劇を多重構造で楽しませる作劇的な特徴は『ガラスの仮面』にかなり近い。同作をかつて中島梓(栗本薫)が「演者に最高最期の一番はないのでは」と指摘していた通り、本作もクライマックスへ進むほど着地点に納得感が伴わない(最後の劇が締めくくりにふさわしい舞台、作品という印象まで至らない)というウィークポイントこそ共有しているんだけど、学園ものとして演者の視点数を増やすなど横幅が出るよう工夫を施してありドラマ的にはかなり作りこまれたものを感じる。ゲームとしてみると学園生活の疑似体験がメインアプローチと思われるが、ヒロインによってルート分岐する構造が学園内でのヒロイン格以外のキャラとのコミュニケーション機会を阻害していて、成長物語としてみても主要キャラのために世界がある天才集団の話にしか映らない点で、乙女ゲームであることが全体への悪影響を生み出しちゃっているかな~という所感は避けられない。分岐より没入感へ舵どった、もっと『金八先生』的な作りの方が合ってる作品かと思う。

 

ガラスの仮面 第5巻 舞台あらし 1 (白泉社文庫)

最新刊が出たのは10年前だけど、話が進まなくなったのは30年以上前(作者が最終決戦の演劇が描けなくて、ずっと時間稼ぎをしている状況なんです)。分かりやすく言えば演劇が題材のスポコンジャンルなんだけど、試合ベースで進んでいくスポーツ部分を劇中劇に置き換えドラマとして厚みを持たせた多重構造や、呉智英も評価したご都合主義を恐れない作劇、天才型の主人公だが感情移入を阻害しない巧みな視点転回など見どころがかなり多い作品。ガラ仮自体ネットでイジられすぎてて、触れたことのない読者を敬遠させてるトコロはあるけど、『二人の王女』に入る前くらいまでは文句なしに少女マンガではトップグループの作品なので、読んだことがないなら気が向いたら触れてみても良いかも。

 

春ゆきてレトロチカ -Switch

『春ゆきてレトロチカ』 54

 

実写ドラマの犯人当てゲーム、という初報で真っ先に『トリックロジック』(犯人当てに特化した短編集ゲーム)の発展系を思い浮かべたんだけども、システム・ゲームデザインともに「犯人当て」の体をなした普通の映像進行のゲームという印象。『トリック×ロジック』は選択肢に頼らず推理のアウトプットを受け入れるシステム作りを重視して、それをゲーム側に伝えるために総当たりで方法を探すという「プレイヤーの推理を表現させる」為にいろいろ犠牲にしていたタイトルだったわけだけど、これに関しては(ディレクターの本意ではなさそうだけど)推理パートで選択肢を総当たりして情報を集めて、解決編の選択肢で推理をアウトプットするというアベコベなデザインになっていて、「犯人を当てさせる」というゲームルールがそもそも用意できていない。かと言って犯人当てのドラマとしては、トリック自体に面白みがないため、推理する物語として厳しい出来と言わざる得ない。連作ドラマとしては楽しめたので、犯人当てを最重視して話としてつまらないというこのアプローチのウィークポイントを補完しようとしているのは評価できるけど、それは想定した面白さとは別方向という気持ちにはなるかな。いやでも、歴代スクエニ実写ゲームでは間違いなく楽しめる方の作品です。

 

Root Film(ルートフィルム) -Switch

『ルートフィルム』 47

 

 やってることは今どき珍しい旅情ADVなわけだけど、島根というロケーションを活かすようなドラマの紐づけも没入感の演出もできてないので、かなり平坦なゲームという印象。狙い的にロケーション数には拘った作品と思うけど、同じカット割り・アングルが続いているので、画面として「興味のない観光雑誌をパラパラ読み続けてる」ような退屈さを感じる。河野一二三というと、個人的にはストーリーテラーというよりゲームデザイナーというイメージなので話がつまらないのは良いんだけど、やはりゲーム的な没入感が確立できていないゲームプレイ&デザイン作りだったのはちょっと残念。解明編は若干シナリオ面で持ち直しているので、そこは評価。

 

 

Nintendo Switch版 冤罪執行遊戯ユルキル

『冤罪執行遊戯ユルキル』 43

 

 何かを思い出すなと思ったらアレだ、『式神の城』。もう10年以上前から何度も何度も同じところをグルグル回ってバターになってしまったデスゲームという素材をSTGでどうアレンジするのかが見せ場だったものの、基本的にはアウトプット過程の障壁にすぎず、作品を特徴づける何かとか、没入感になっていないのは残念。『ダンガンロンパ』チルドレンのADVとして見ると、ミステリ的な構造が浅く情報収集で物事が終始していて議論に発展性がないとか、推理のアウトプットがいい加減すぎて解法に納得感が薄いとか、テキスト面での練りこみ不足は指摘を避けられない。正直、STGは全く遊ばないので、もしかしたらSTGとしてなら凄く楽しいソフトという可能性は否定できないし評価不能でも良いんだけど、システム演出としてSTGが入っているADVと考えてこの点数でよろしくお願いします。

 

AI: THE SOMNIUM FILES(アイ: ソムニウム ファイル) -Switch 【CEROレーティング「Z」】

『AIソムニウムファイル』 54


 前提として、近年の探偵ゲームではしっかりと金をかけて画面を作ってるし、ストーリーラインを引っ張るトリックは提示できていると思う。同じ打越作品だった『EVE Newgeneration』の時点で気づてはいたけど、ストーリー的な仕掛け(オチとヒキ)ありきで、既存の探偵ADVの重視する会話劇を楽しませるとか魅力的なキャラクターとか没入感を演出するゲーム作りとかに対する無関心は否めず、クリエイターの才能的にこの題材じゃないんじゃないかなという印象は着いて回るトコロ。ストーリー的なオチ以外で、捜査してる過程で記憶に残ったのはウケ狙いのギャグやクリックの反応っていう意味では、打越味が強すぎなソフトなのかもしれないけども。

 

Coffee Talk - Switch

『コーヒートーク』 50

 

 ドラマを描くというよりも、喫茶店でのコーヒーブレイクを疑似体験させる方向性のソフト。同じジャンルで言うと亜種まんがタイムきららだった『VA-11 Hall-A』より『BarOasis』に近く、プレイヤーに癒しとかチルアウト的なものを楽しむ精神性があるかで評価は変わるかと思われる。世界観的にはメンインブラック的なものと言えば想像しやすく、現実世界の時系列にフィクションの設定が拡張されていく部分が、コミュニケーション的には面白みになっているので、個人的にはそこをもっと深く描いて欲しかったけど、このソフトの本質はそこじゃないだろうしね。恐らく続編を重ねるほど新鮮味がなくなり、マンガ誌の微妙なポジションの長期連載みたいな惰性のつまらなさを生み出すと思われるので、Part2でどう拡げる気なのかは若干気になる。

 

 

ドキドキ文芸部プラス! - Switch

『ドキドキ文芸部プラス』 50

 

基本的には裏切りと不意打ちのフォーマットと思われるソフトなので、現在の評判が浸透している状況だと100%のパフォーマンスには至らないんじゃないかな。個人的にはキャラクターをフィクション上の存在と割り切っているのは良く見るけど、もう一歩PCゲームらしい仕掛けに踏み込んでるところは評価。話としての親和性も考えてるとは思うものの、仕掛けが面白みになっているかは疑問符だし大筋のストーリーはやはり再放送の世界でつまんないと思うのでこの点数。

 

『7年後で待ってる』 40

 

 話だけで見るともう何度目だよというタイムリープものなんだけど、問題は既視感だらけの設定よりもキャラ数が多い割に心情描写の書き込み不足が目立つ点で、特に終盤は「女の子にこういう行動取ってもらいたい」という着想ありきな相手の感情に対する想像力に欠如したような展開を辿っており、フィクションとして男のナルシシズム以上のものは感じられなかったのが痛かった。あえて言えばツクール制のADVをクオータービューに移し替えたようなビジュアル面が特色なんだろうけど、演出的に特筆するような要素にまでは行ってない。

 

【コメント】

もしかして、今回の記事で一番評価高いのは『ガラスの仮面』なのでは?

【さよなら2021年号】

ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者・うしろに立つ少女 COLLECTOR'S EDITION -Switch

『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』 65

 

 このシリーズ自体は、88年当時の性能だからこそ許容された表現や演出を「ファミコン」(ディスクシステムだけどね)というフォーマット内で嚙み砕いた点が偉大なのであって、ADVとして見れば昔のスタンダードナンバーであり『ポリスノーツ』とかと同じでパロディ世界のごっこ遊びという側面はあると思うので、ここまで高水準に翻訳されてプレイすると仔細に描かれすぎて違和感は正直あるんじゃないかなと。原作はデザイン的にフラグ立て(捜査の体験と展開の発見)を重視したつくりになってるんだけど、今プレイすると定速テキスト送りにあのバランスは遊ぶ上でネックにしかならないので、UI面で近代化した今回は原作の楽しさとの折衷案にはなっている印象。いろいろ思うところはあるけど、恐らくコマンド総当たり系で映像的にここまで手が込んでいるものって現代ではそうお目にかかれないだけに、このジャンルが好きなら遊ぶ価値は絶対ありでしょう。

 

『ファミコン探偵倶楽部 後ろに立つ少女』 60

 

 むしろ今回のリメイクで問題だったのはこっち。上でも言った通り近年のコマンド総当たり系のADVでは抜きに出たディテール表現をしてるんだけど、原作自体はあくまでホラー的な不気味さをファミコン特有な表現でやってるのが魅力なので、物語を仔細に描けば描くほどリメイクの魅力と原作の魅力が相殺する関係になってしまっていて、トータルかなりベタなものを遊んでいる印象に落ち着いちゃってる。原作は消えた後継者と比べるとどう行動すればフラグが立つのか予測が立てれるように設計されていて、ゲームプレイにもある程度流れができている(インタラクティブな演出に舵を切っている)こともあって、いろんなものをスムーズに見せすぎちゃってる今回よりニンテンドーパワー版の方が自分は評価したいかな。

 

ワールズエンドクラブ -Switch

『ワールズエンドクラブ』 52

 

 一応、打越鋼太郎&小高和剛最後のデスゲームと銘打って発表された経緯もあるので、『ダンガンロンパ』や『極限脱出』シリーズの終着地点なんだろうけど、設定はデスゲームではなくポストアポカリプスだし、着想的に絶対出てくるであろうサバイブ要素はほぼ無視してるし、ロードムービーしながらクラスメイトのエピソードを描く様は修学旅行のそれだしで、最初に伝わってくるのがデスゲームに疲れましたという作り手の意思表示なのは、この作品を定義づけるアイデンティティという点で正直どうなのかなと。アップルアーケードで中盤まで先行配信してしまった為か、ミステリ的なタネアカシが進めば進むほど無茶なご都合主義の応酬になってしまっていて、逆説的に中盤までのロードムービー的な成長物語は白々しさが色濃くなってゆき、最終的に「結局この修学旅行って何だったの?」というテーマのなさに行きついてしまう構造的な迷走を感じる。TOOKYOGAMESの既出作品はどれも00年代に流行ったデスゲーム的な想像力の延長戦という印象がついてまわっているので、結局キャリアの最後までゾンビを撮り続けたロメロよろしく、最後までこの路線に付き合っていくつもりなんだろうか。

 

Chicken Police - Paint it RED!

『Chicken Police』 59

 

 奇天烈なビジュアルに反してハードボイルドを成立させるだけのディテールと演出はしっかりしていいるし、キャラクターを中心とした世界観の構築にもつながっているので、狙いと効果がちゃんと因果関係で結べている手堅い作品。話が予定調和な部分も含めて”安心して遊べる”1作と言えるんじゃないかな。惜しむべきはトークを楽しめてナンボなジャンルにして翻訳文が頭に入って来づらい点と、序盤は世界観の説明に偏重しすぎていて話が進まないことがハードルとなっている点かな。海外ゲームということで謎解きに脈略と納得感がなさすぎたり、改行が3行以上だとテキストを読み切る前に1行目が文字送りされてしまう謎の仕様だったり、最初の言語設定が英語だったりと、メーカーは日本に合わせる気は特になしなのも潔しと取るべし。

 

探偵撲滅 - Switch

『探偵撲滅』 58

 

 恐らく家庭用のミステリADVでは最も忠実にメフィスト賞的なもの(つまり『コズミック』なんだけど)をゲームへ移植した作品。わかりやすくダンガンロンパの進行フォーマットを用いているわけだけど、物語の表現母体はそっちという印象で、間延びしたテキストやレスバと化した口頭テーマ語りを含め、良い点も悪い点もコピペという印象がついて回るところ。ゲームの狙いやドラマの深度に段階付けがいまいちできておらず、全体的にインタラクティブの切り込みは浅いけど、細かいことを気にしなければベタなソフトとしてそれなりに遊べるのでは。

 

 

『ネクロバリスタ 最期の一杯』 40

 

 フル3Dでアングルを取り入れてるのがアイデンティティなソフト。実際カット割りへの拘りは感じるところではあるんだけど、細かいテキスト送りに合わせてカットも頻繁に変わってしまい、映像表現としてはせわしない印象に行きついているのは本末転倒な気もします。ストーリーとして見ると、設定を詰め込んだもののそれを魅力的にプレゼンできてないというオタクがやっちゃう例のあれで、特にナードの自己陶酔レベルなテキストに付き合わされる導入部やサイドシナリオの出来はかなりしんどい。中盤くらいからやりたいことはわかってくるんだけど、ドラマとしては積み重ねのものを最終話だけ見させられる感じで、プレイヤーと作り手で没入感への差を強く感じた作品。

 

 

シンソウノイズ ~受信探偵の事件簿~ - PS4

『シンソウノイズ 受信探偵の事件簿』 42

 

 西澤保彦的な能力者というガジェットを用いた青春ミステリもの、と思ったら100%がっかりするであろう作品で、美少女ゲームというジャンルにミステリ要素がプロットとして載っているだけという印象。スピード感皆無なテキストも、ミステリとしてストーリーラインを引っ張るよりキャラを優先している構成も、出来に対して自信のなさが透けて見える簡易的なトリックも、良くも悪くもそれが美少女系ノベルゲームフォーマットだからという根拠以外に許容できる理由がなく、つまりこのジャンルに対して理解がないと見ていてきつい。

 

 

真 流行り神1・2パック - Switch 【CEROレーティング「Z」】

『真流行り神』 39

 

 近現代では珍しいマルチシナリオで設定自体が分岐するタイプのサウンドノベル。どう考えても構造は『流行り神』ではなく『夜光虫』とか『最終電車』などの90年代に生まれた『かまいたちの夜』チルドレンで、10年代にこれをするのは逆にチャレンジングだなとは思うけど残念ながらゲーム的な意味づけはできていない。よく言わてるシナリオがグロスプラッタ一辺倒なのも問題なんだけど、謎の引力でプレイヤーへ「気持ち悪い」と思わせるためとしか思えない行動をとりまくる登場人物たちが一番不快な原因かな。超えてはいけない一線を越えてるシナリオ(醤油・生贄編)はあるけど、あの頃のサウンドノベルを思い起こさせるノスタルジーも少し感じて憎み切れないところはある。

 

 

LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶 - PS4

『ロストジャッジメント 裁かれざる記憶 』 評価不能

 

 「いじめ」がモチーフの「学園もの」というワードだけ決め打ちして作ってると思うんだけど、その出発点からするとゴールのスケール感が大きくなりすぎてシナリオとゲームに因果関係が結べていない(半グレやチャイマに追われながら部活動の外部顧問をさせるゲームプレイになんの違和感も覚えなかったのだろうか?)のは明らかで、前作と同じくアクションアドベンチャーゲームのムービー部分が探偵もの止まりという印象は強い。つまり如何にムービーでサスペンスをされても、ゲームプレイに落とし込んでないので探偵として捜査し真相にたどり着いている感は全然なかったし、ネタにしてるものに対して結局暴力(アクション)で解決しちゃうのもゲーム側にシナリオ展開が拘束されてるように感じちゃうよねっていう。これらは前作から見られてる病状ではあるけど、「龍が如くのフォーマットで別ジャンルにアプローチ」色が薄まって、設定の変わった龍が如くになりつつあるのは大規模な探偵ゲームとして期待していた側としては残念かな。全国に1万人いるか微妙なニーズではあるけど。

 

【コメント】

一応レビューっぽいものを書いている以上、

100点満点の作品はある種の基準として定義するのは責任と思うので、

あえて言及しますと…アニメ版『宝島』が100点満点です。ここの基準じゃ評価不能だけどね。

 

宝島 Blu-ray BOX

 

【概要】

移植は最新作とカウントしていません。

 

【家庭用向けADVシリーズものの現在地】

 

『探偵 神宮寺三郎』シリーズ

 

ダイダロス:ジ・アウェイクニング・オブ・ゴールデンジャズ - Switch

最新作:『疑惑のエース』(2019年7月31日)

 

 ご存知2度の権利元解散を乗り越えた長寿シリーズ。長寿化では必須なファンの循環を、FC(ステレオタイプなコマンドADVにハードボイルドを乗せてた時代)、PS・SS(斎藤竜也氏の設定をベースに実質のリブートを図り、映像的な進化を行っていた時代)、アプリ・DS(短編化と演出の簡素化でスケールダウンしつつも話のバリュエーションを増やした時代)の少なくとも3回は行っており、それぞれでファンを獲得しているからこそ、移り変わりの激しい業界でもシリーズが継続できているといえる。

 

 ただし、基礎のフォーマットとしていたアプリがスマートフォンへの移行に(権利元の解散と低予算が原因で)一切乗れなかったこともあって、3DSで復活した際にはフィーチャーフォンで時代が止まったような表現力と内容に対し何らしかのテコ入れが必要だったものの、セールスの固定化によって採算性の面で適切なアップデートができず悪循環に陥っていたと思われる。だからこそ、近代的にアップデートを図った『ダイダロス』というリブートを仕掛けているが、その企画意図の実践は作品・プロモーションともに失敗。いや、大失敗している。ほぼゲリラ的に配信した『疑惑のエース』はあるものの、内容はガラケーレベルで内輪向けという印象は強く、実際リリースが止まっている状況がその証左と言えるだろう。『ダイダロス』自体は立ち位置としては外伝なだけに、このまま散るより本編でもうひと勝負して散ってほしいが、そこまでアークシステムワークスがするかというと。ファンは根強いシリーズなので、何年かして需要が温まったタイミングでの復活と時代に即したアップグレードに期待したい。

 

『逆転裁判』シリーズ

 

大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟- -Switch (【数量限定特典】「蔵出し設定画」「蔵出し楽曲」が手に入るダウンロードコード 同梱)

最新作:『大逆転裁判2 成歩堂龍之介の覺悟』(2017年8月3日)

 

 カプコンがクラッキングを受けて『7』が開発中であることがリークされてしまっている関係で、多分新作が出るんでしょうねとしか言いようがないシリーズ。セールス的には国内市場が主戦場で、海外マーケットに注力していっているカプコンの方向性とは差異があるのでシリーズ停止の可能性は十分あっただけに、一安心ではある。長期シリーズだが未だに『1~3』のトリロジーパックが展開されていることからわかるように、シナリオ・ルール上で得られる快楽性は成歩堂シリーズで完成されてしまっており、『4』以降はシナリオの出来不出来が評価対象になってしまっている(ゲームとしての楽しさで新規性が見いだせなくなってしまっている)印象は否めず、このシリーズについて回っているマンネリ打破というお題目にケリをつけないことには商業的に先細る可能性は高いと思われる。逆に言えば、ハードもSwitch基準となり据置マルチで発売濃厚で、シナリオも『4』からの王泥喜シリーズが『6』で完結している関係でゲームシステム面のアップデートが図れるタイミングと考えられ、大幅な刷新を期待したいところだろう。

 

『サウンドノベル』シリーズ

かまいたちの夜 輪廻彩声

最新作:『かまいたちの夜  輪廻彩声』(2017年2月16日)

 

 『真』の頃に大事な娘とまで言っていた『かまいたちの夜』の美少女ゲーム化が今のところ最終作。実写ベースで日本が舞台、しかもテキスト主導のゲームゆえに海外展開に弱いのがネックで、国内市場の鈍化もあってスポンサーとしてセガがしっかり金を出してくれていたと思われる『428 封鎖された渋谷で』以降はリクープを優先してなのか規模縮小していった経緯があるので、シリーズの復活はスパイクチュンソフトの現状からみるとかなり厳しいという印象は否めない。実質的にチュンソフト文脈で生き残っているのは海外での高評価を受けた『極限脱出』から始まる打越鋼太郎ディレクションシリーズだが、サウンドノベルというより美少女ゲームを一般向けに翻訳している傾向が強く、かつてのサウンドノベルファンへは内容的にも商業的にもリーチが届いていないからこそ国内では存在感が薄いのだと思われる。

 最終作 『かまいたちの夜 輪廻彩声』は美少女ゲームとしてリブートしたから…というより、現代スペックへアップグレードするには明らかに予算が組めていないし企画も練れてない(=原作をスポイルしたものしか提供できない)状況でのリメイクをスパイクチュンソフトが監修止まりで慣行しているのを見るに、親会社的には過去資産としか見ていない可能性が高く、大きく仕掛けるというより『街』や『かまいたちの夜2』『忌火起草』などのプレイ環境が消失しつつあるソフト整備に期待する方が賢明なのかもしれない。

 

『ダンガンロンパ』シリーズ

 

ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期 - PS4

最新作:『ダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』(2017年1月12日)

 

 最終作の『V3』で「フィクションに依存せず現実に帰れ」とファンへ伝えたうえでシナリオの小高和剛氏がスパイクチュンソフトを退社してしまい、実質的にはシリーズは終了しているようなものだし、人狼・デスゲーム自体が話の展開や仕掛けが固定化されているだけにこれ以上続けても再放送に陥るのは目に見えている状況かとは思うんですが、スパイクチュンソフトがオリジナルのアドベンチャーを新作で出す場合はこのシリーズの看板が必要と予想されるのであえて言及。端的に言えば別のライターを立てた上での『4』は多分ない、小高氏は関わっても監修、『ザンキゼロ』的な企画のADVバージョンなら世に出る可能性はあるんじゃないの。ただしデスゲームを脱したブランディングをしないと後には続かないだろうから、我々の予想する題材ではない可能性が高いのでは。以上。

 

『名探偵コナン』シリーズ

名探偵コナン ファントム狂詩曲 - 3DS

最新作:『名探偵コナン ファントム狂詩曲』(2014年4月17日)

 

 家庭用ゲームの高予算化の煽りと、スマートフォン市場に児童・カジュアル層が取り込まれた関係で、コンパチヒーロー(ガンダム・仮面ライダー・ウルトラマンの御三家)さえもウルトラマンが脱落しているのが現状のキャラクターゲームなわけですが、その御多分に漏れず映画の興行は右肩上がりの『名探偵コナン』シリーズも今世代はパッケージゲームの展開できていない状況。一応、ダウンロード専売で『スケボーラン』という文字通りコナンのキャラが出てくるだけのランゲームは配信されているものの、「人気原作のキャラグッズ」であっても「原作のゲーム化」ではないというのが実態かと思われる。

 スマートフォンではソーシャルゲームが2本並行しているのが示す通り、現状のゲーム展開はキャラクター消費のマネタイズ化という意味が強まっていると考えられるが、とはいえGBから始まってWS・PS→GBA・PS2→DS・Wii→3DSと、シリーズの休眠期間を置かずにプラットフォーム遍歴に付き添っている唯一のキャラものADVであり、現在でも探偵系ではキャラクターゲームの最大風速が出せるIPなのは間違いないので、マーケット的な相性の良いであろうSwitchが好調な内にパッケージが復活しないとタイミング的に難しくなっていくと思わるる。

 陥った原因は3DS世代でスパイクチュンソフトの開発していた~曲シリーズが最終作『ファントム狂詩曲』で数字の落ち込みが激しかった(約1.6万本でランキングからフェードアウト)ことと、「名探偵コナン」ブランドとして現状キャラゲーをソーシャルゲームとはいえ仕掛けていることがネックになっていると思われ、つまり潜在市場としてヒットする可能性はあるものの掘り起こし済みのものにわざわざ会社が勝負をかけるかは微妙なのではと。こればかりはIPの力というよりめぐり合わせの要素が強そうなので、忘れたころにひっそり発表される可能性が高いかな。

 

なぜ日本は〈メディアミックスする国〉なのか (角川EPUB選書)

そもそも家庭用のキャラクターゲームというメディアミックス項目自体が、ドラゴンボールやガンダムなど継続して展開し十万程度のセールスも確保された選ばれしIPの通る狭き門になってきており、単価を抑えて仕掛けたいキャラクターIPの場合、家庭用ゲームよりスタートアップの資金が安く抑えられキャラクターの人気を現金化しやすいソーシャルゲームにシフトしている現状があるため、『名探偵コナン』クラスのブランドさえも勝負をかけるのが難しくなっていると考えられる。

 

『レイトン教授』シリーズ

 

レイトン ミステリージャーニー カトリーエイルと大富豪の陰謀DX - Switch

最新作:『レイトンミステリージャーニー カトリーエイルと大富豪の陰謀』(2017年7月12日)

 

 世界累計1700万本、国内市場では唯一の単一パッケージ(フレンドリー版込み)でのミリオンセールを達成したADVタイトルではあるものの、DS時代に流行したカジュアルゲームはスマートフォンへ需要が吸収された上に、ソフトの企画やゲームデザインそのものが初代DSへ合わせすぎて3DS世代への移行に失敗(上画面重視でP&Cとしてのテンポ感がスポイルされたのが代表的)してしまい急速に需要が収束しており、シリーズ内でのファン層の循環とアップデートの必要な状況が6~7年前からみられていた。実際、最新作の『レイトンミステリージャーニー』は女児にターゲティングを改めており、レベルファイブの得意とする大型のメディアミクスで普及を図る戦略が取られ、従来のレイトン教授とは異なる商業展開となっていたが、売り上げ的には右肩下がりに歯止めは効かず続編も出ていない状況が示す通り失敗したとみられる。

 このシリーズはDS時代に任天堂が販売をした関係で海外でもカジュアルゲームとして人気が高かったので、IPとしてはある程度の資産価値があると思われるものの、現状の家庭用ゲーム市場で活躍できる場がなく、かといってかつての客がいたスマートフォン市場には企画がミスマッチな状況で、レベルファイブのお家事情(大量離反とプロジェクトの長期化)的にも複数の大型プロジェクトを捌ける状況とは考え難いため、市況・会社的な都合ともに宙ぶらりんという印象は強い。まあ逆に言うと、レベルファイブというソフトハウスは世相を読みながら新興ニーズを生み出す企画を作ることはできても、環境変化に適応しながらファン層を引っ張るような芯のある作品作りはしていないしできないと思っている。そうですね、結局こういう締め方になるので申し訳ない。

 

『レイトンセブン』発表当時の映像。超つまんなそう。

最盛期当時の主要層は恐らくアイテム探しや脱出ゲームなどへ吸収され爆発飛散していったと思われる。このシリーズはモバゲー時代から人狼ゲームでカジュアル層へアプローチしようとしていたが、人狼自体がカジュアルなものではない(推理力の格差や同時参加の必要性など)ので客層とは乖離があった。ゲームシステムそのものを再定義しようとしたレイトンセブンがなかったこと(しかも2報では人狼ゲーム化)になってしまったことから考えても、やはり新機軸とカジュアルが相反する状況に対しギャップを埋めるアイデアが思いつかなかったのが国内外でライトユーザーが離れていってしてしまった原因なのかも、というのが後出しじゃんけん的な所見。

 

『科学アドベンチャー』シリーズ

 

ROBOTICS;NOTES DaSH - PS4

最新作:『Robotics;Notes DaSH』(2019年1月31日)

 

 『Steins;Gate』で大幅に知名度を向上させたシリーズではあるものの、科学アドベンチャーというIPとして見れば『Robotics;Notes』『Chaos:Child』『Occlutic;Nine』と着実に存在価値はなくなっており、ファンの興味を再び惹くような『Steins;Gate』に続く作品が必要なのが7~8年くらい抱え続けている課題。なのは誰の目から見てもな話というか、MAGES.自身も『Steins;Gate』の蛇足を何度も書き加えてる現状把握していないわけがなく、だからこそ『Anonymous;Code』がここまで長期化しているんでしょうと。あえて言えば、このシリーズはオタクとオカルト科学がかなり重要なワードになっているので、そのガジェットを『Steins;Gate』(2009年)当時よりアップデートする必要はあるんじゃないかなとは思います。

 商業戦略としてはマンガ・アニメ・小説・ゲームを並行して攻勢をかける一般的なメディアミックスをそこそこ大規模に行うのが特徴で、ゲーム原作ではあるが『Occlutic;Nine』はアニメ先行(恐らく視聴者の絶対数が多いアニメで知名度を高めゲームのヒットにつながったPSP版『Steins;Gate』と同じサイクルを狙っている)して展開し失敗しているので、恐らくゲーム先行で出すんじゃないっすかね~くらいしか思いつく言葉はない。MAGES.自体がコロプラに買われ完全子会社になっており、今後については心配されるので頑張て下さい。

 

【コメント】

記事のネタ的に早めに書き上げた記事です。