Khaosan | 詩人 黒田誉喜  Blog from globe

Khaosan

僕は今
カオサンにいる。

屋台の匂い、
湿った地面、
娼婦の香り、
イリーガルな視線。

熱気が戯れる不良の街角
かけがえのない混沌だ。

D&D INNのオレンジを
見るだけで大切な何かが
湧いてくる。

過去の記憶が過る
肥沃な路地裏。

尾翼の折れた紙飛行機みたいに
今夜、今、まさに

ここにいる僕が

言えることは、

人は自由の中で

他人の理由で

毎日、杞憂しているってことさ。

そして、今、座っているこの椅子も
きっと誰かの想い出の場所なのさ。


左耳にはロックギターが
右耳には見知らぬビートが

その狭間で僕は無言のまま
多国籍が行き交う通りの
Open Barで
甘ったるいアイスコーヒーを
飲んでいる。

過去の甘ったるい僕が
沈没した街で

僕は今夜
一寸先の闇を
情熱の炎で照らす。

ありもしない未来や過去を
時計の針で測ろうとするのはやめて

僕が今、何を想うか
僕が今、何をしたいか

今の僕自身を

羅針盤の針にして、

地球の磁力も重力も関係なく

星のみえない空を見上げ

とりあえず

目の前の氷の溶けかけた
甘ったるいアイスコーヒーを
飲み干し、

独り微笑みを溢し

やりたいことを、
やりたいときに、
やりたいようにやる。

僕がどこに居ようと
関係ないんだ。

旅行者の集う路地裏。

鼻を突く、
この星の匂いがする。

僕は今、
カオサンにいる。

ニールヤングが聴こえる。

もう少しだけ、

もう少しだけ今夜は、
この街に居よう。



黒田誉喜












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