「あれから、１５年。(５４)～The fish which escapes～」
※決してOAされなかった出来事。
オレの為に、OAに穴をあけちゃったオレの為に、
番組がこの時だけは、話を差し替えてくれたんだ。
１５年経ったから、もうオレ
白状しても良いですよね？
……………………
あの頃のオレは何を考えてたんだろうなあ…
番組とスタッフさんには、本当に大迷惑をお掛けしたよ。
大迷惑どころか、呆れられてたかも知れない。
下手したらさ、オレの起こした行動で、番組がなくなってた可能性もあったんじゃないだろうか…
あの時、ちょうど女性週刊誌さんとか、特集してくれてた時期だしさ。
下手したらとんでもない特集になってたよね。
ごめんなさい。
……………………
それは本当に些細な事がきっかけだった。
はじめて理由を話します。
この事件は番組関係者しか知らない話で、決して世間に公表される事はなかった。
あんな事したオレを守って下さったんだよね…
そして、理由も聞かれなかった。
ただ、事件後も暖かく迎えてくれた。
だから、はじめて理由を話します。
その日は確か、痩せたおじさんがアパートメントに来て、日本での商品のデザインの展開を打ち合わせしてた。
なんか記憶が曖昧なんだけど、
打ち合わせが終わった後、痩せたおじさんが帰って行ったんだ。
テーブルにね、封筒があったの。
普通なら見ないよね。
見たら駄目だよね。
知ってる。
だから、その事を１５年間黙ってたの。
ここまで書いたら気付くよね。
そう、オレは封筒の中身を見ちゃったんだ。
ごめんなさい。
前話までに書いたいろんな事があって、オレはかなり疑心暗鬼になって混乱してた。
だから見た。
駄目だけど、わかってるけど見た。
日本での商品のハンガーイラストなんかが入った書類。
もちろん、凝視する。
うん、なんとか大丈夫。
ふと、何かメールのやり取りのコピーらしきものが見えたんだ。
【阪急百貨店開催初日、GOくんを帰国させて、うめだ本店に来店させたいとの意向があるんですが】
【オーディション時から、NYメンバーの帰国用オープンチケットはそれぞれ用意してあるので、GOくんのチケットも、もちろんありますが、
GOくんにはNYのお店の件もありますし、今帰国させて、その場に行かせるのは、
将来を見据えても時期早々に思います。】
それは、痩せたおじさんと、日本のスタッフルームの女性のAPさんとのメールのやり取りが記された文章だった。
ふと、思った。
オレ、もう日本に帰れないんじゃないか…
（↑冷静に考えると有り得ないけど、この時オレ、もうおかしかってん。）
その後、ディレクターホッティさんが、作業風景を撮りにアパートメントに来た。
「ねえ、ホッティさん
あのね、オレって１０年、２０年ずっと日本に帰れないの？」
「GOくん、何また馬鹿な事言ってるの？
GOくん一人のコーナーがそんなに長く続くはずもないし、番組自体もそんなに長くやる番組珍しいし。」
ホッティさんを凝視した。
「はい…」
その夜、いろんな考えがぐるぐる頭を巡る中で
オレはアパートメント地下のコインランドリー室に居た。
洗濯はしないと…
臭くなる。
ぐるぐる回るランドリーを見てると、オレの頭の中もより一層、ぐるぐる回る。
NYに来てどれくらい経ったのだろう…
３万ドル、達成出来るのかな？
いや、３万ドル達成しなければ当然、日本に帰るんだよね。
日本は恋しいけど、帰ったら負け犬になっちゃうんだよね。
３万ドルは絶対達成したい！
でも、出来るのかな…
阪急で販売する商品、本当にオレのデザインで、ちゃんとつくってくれるのかな？
AKIUE-GOじゃなくても、オレのデザインした商品ちゃんとつくってくれるのかな？
オレはブヨちゃんのとこに入らないといけないのかな…
まさか人生で、ブヨちゃんみたいな人と、接する事になるなんて思いもしなかったな…
途中からしゃしゃりでないで欲しいな…
怖いな…
人生わからないよね…
…日本、恋しいな。
きっと、帰れないんだよね…
んじゃ、オレ
この国で住むわ。
誰も知らないとこ行って一人で住むわ。
なんだか、疲れたな。
……………………
「真夜中のコインランドリー
冷たい雨が窓を叩いて
最後の服を洗い終わったら
この街を出て行こう」
雨は降ってなかったけど、涙の雨が降って来たんだ。
くっさいセリフだけど、本当なの。
頭の中で、考えがハチャメチャで自分の考え方も、矛盾だらけで
オレ、ぜんぶ嫌になった！
ぜーんぶ！
最後の服、洗い終わったら出て行こ…
The fish which escapes.
………………
次回から、きっとOAの内容とまったく違う、
「ご あきうえの秘密の大冒険」。
子供だったな。
もう、これ笑い話になる時期だよね？