残酷な寒さを感じた『わたしを離さないで』 | 拝啓、ステージの神様

拝啓、ステージの神様

ステージには神様がいるらしい。
だったら客席からも呼びかけてみたいな。
観劇の入口に、感激の出口に、表からも裏からもご一緒に楽しんでみませんか。

拝啓、ステージの神様。


未来をこんなに怖いと意識したのは初めてです。




未来に過大な夢は抱かず、堅実志向。

最近の若者をそう表しているのをよく耳にする。

そして、そうさせたのは、彼らの親世代、今の大人たちだとも。


舞台『わたしを離さないで』。

カズオ・イシグロの原作を倉持裕が脚本にし、蜷川幸雄が演出。



舞台に登場するのは、高校生の八尋、もとむ、鈴を中心とする

とある寄宿学校の生徒たち。


未来に過大な夢は抱かず、の空気は同じでも、堅実志向なわけではない。

それは彼らの命が、期限付きであるせい。


八尋を演じる多部未華子は、透明感のあるよく通る声で、でも生徒というには随分落ち着いて言葉を発する。

もとむを演じる三浦涼介は、素直でいること、子どもでいることを、まるで自分の課題にしているように立ち居振る舞う。

鈴を演じる木村文乃は、奔放に見せて実は誰よりも窮屈そうに言葉と態度を表す。


そのどれにも共通している「寒さ」が染み出ていた。

「寒さ」が適しているだろうか、いろいろ当てはめてみるがどれも適していない気がしてしまう。

絶望、哀しみ、落胆、奇跡、運命、、、やはりどれも違う。

強いていうなら「寒さ」。

「寒さ」の中で互いの心や体を温め合ったり、「寒さ」を寄せ付けぬよう強さを意識したりする。


儚さは美しさだと、誰が決めたのだろう。

この舞台を観るまでは、そうだと信じていた。

けれど儚さは残酷なんだ。


彼女たちが生まれながらに背負わされてしまった期限付きの命という残酷な「寒さ」に、

心が痛くて痛くて、痛くてたまらなくなった。




わたしを
観劇前に、映画化された「わたしを離さないで」

を観た。2005年に発表された原作、2010年に

映画化、2014年に舞台化。映画はコンパクトに

まとまっている分、美しく見える部分もあったが

舞台は・・・・・・。



<公演日程>

2014年4月29日(火・祝)~5月15日(木)

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール


2014年5月23日(金)~5月24日(土)

愛知県芸術劇場大ホール


2014年5月30日(金)~6月3日(火)

梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ