司法試験を目指すようになったのは、失われた自分の5年間を取り戻すには文系資格の最高峰である司法試験に合格するしかないと思ったからだった。
ただ、法曹界を目指すに値する信念があったわけでもなく、突き詰めれば「女にもてたい」という不純な動機によるものであることには変わりなかった。
当時の心境を今思えば、高校時代に彼女ができていればこんな苦労しなくて済んだのだろう。
一般と同程度の幸せで十分満足したであろう。
しかし、彼女ができなかったことを取り戻そうとして足掻いたが何もできず、結局変態性欲に走ってしまった。
さらにそれが拍車をかけて今度は人生一発逆転を狙い東大を目指すようになってから、完全に歯車がくるってしまった。
この時の自分は現状のすべての不満を高校選びを間違えたことに収斂させていた。
そして大手予備校に通い司法試験に合格することを考えたが、しかし、そうはしなかった。
宅浪を長く続けていたせいか、大学の授業に出席して講義を聴くことが全く肌に合わず、講義形式の授業にはついていけないとその時悟っていた。
そのため、当時流行り始めたカセット通信を選択し、通信講座で勉強を始めた。
大学2年、23歳の秋である。