芸人の頃、憧れているものがありました。
それは「単独ライブ」。


普段、僕たち若手芸人のライブと言えば、十数組の芸人が出演し、それぞれ持ち時間の中でネタを披露するだけのものが主流でした。
つまりライブ自体は2時間あったとしても、自分たちの出番はせいぜい5分程度しかありません。

その僅か5分の中に、自分たちがやりたいことを詰め込んで見せなければいけないのです。

しかもその5分はいつかやってくるチャンスに備えて、オーディションや賞レースのために作っているネタなので、いつのまにか「自分が本当にやりたいこと」ではなく「お客さんにウケやすいネタ/オーディションに受かるためのネタ」に変化してしまいます。
(多くの芸人は、そこの噛み合わせが上手くいかずに迷走してしまいます)



でも単独ライブは違います。
約2時間、自分がやりたいこと、面白いと思うことをひたすら詰め込んで表現することができる場です。

ライブのタイトル、チケット料金、コンセプト、音響、映像、ネタ、エンディングの演出……。
1から10まで、完全オリジナルで自分の頭の中を放出することが許されているのです。

もちろん、そこに足を運んでいるお客さんは全員、自分を観に来てくれている。

こんなに幸せな状況ないだろうな、と思っていました。


しかし当時の僕たちは実力不足。
人気も無いので単独ライブをやることは1度たりともありませんでした。
やったところで面白いものを見せる自信がないし、会場を埋め尽くす集客力も持っていなかったのです。

芸人を引退した僕の心残りとなっていることの1つが、「単独ライブをやれなかったこと」。




あれから時が流れ、2018年の大晦日。

僕は名古屋でカウントダウン・イベントを開催していました。
会場は満席。
最初から最後までとにかく盛り上がりました。

そして元日は始発で東京に戻り、その足で原宿ヒミツキチに向かい、今度は朝から晩まで新年のイベント。
こちらは満席とはいきませんでしたが、それでも元日という無茶な日程にも関わらず、たくさんのお客さんに来ていただきました。


とにかく疲れたけれど、とにかく面白かったです。ずっと笑ってました。
名古屋も東京も、参加してくれた皆様のお陰です。
ありがとうございました。


残り10秒、ギリギリでミッションを達成した奇跡のカウントダウン。
ぷあ〜選手権やゴミ箱シュートみたいなアホな企画での盛り上がり。
深夜のセミキノ探検隊。
元旦早々、自販機がある野外まで出てくれた子供たち。
身体を張った対決に付き合ってくれた、vsそめくま。
全力のワニ。

どれも素晴らしかったです。
何か1つでも欠けていたらあの盛り上がりは無かったし、全く同じように盛り上がるイベントは二度と存在しません。現場はナマモノなのです。


僕たちはあんな感じのイベントをよくやっているわけですが、よく考えたらこれこそ単独ライブであることに気が付いた次第です。

企画を練り、タイトルを決め、とにかく面白いと思うことを詰め込み、全体のバランスや時間配分を考える。これはまさに単独ライブ。

芸人が舞台でネタを披露するようなライブではなく、観客参加型にしているので単独ライブらしさは感じられませんが、結局やってることはそういうことです。


形は違えど、あの頃やり残したことを別の角度から叶えていたみたいです。


名古屋の皆様、東京の皆様、年末年始のイベントはいかがでしたか?
楽しんでいただけましたか?
もしかしたらお口に合わなかった方もいるかもしれません。
好き放題やってごめんなさい。

でも僕はあれを面白いと信じてやっています。


さて、2019年はどんなことをやっていきましょう。

面白いと思える単独ライブをどんどん打っていきたいです。

よろしければ、またお付き合いください。


そんなわけで「セミキノコ JAPAN TOUR 18→19」ありがとうございました。

今年もよろしくお願いします。




【名古屋・東京のお気に入りのくだり】
ぷあー選手権(セミ軍vsキノコ軍)
除隊×2(セミキノ探検隊)
大蛇と勇者の剣(セミキノ探検隊)
ビンカン選手権(エンディング)
子供の名前を覚えよう(蝉茸さんチ) 
泥棒を撃退せよ(蝉茸さんチ)
父親のリストラ→復活のコイン(蝉茸さんチ)
聖火点灯式(ハイパーオリンピック)
万歩計パシュート(ハイパーオリンピック)


【ボツネタ(の一部)】
二人羽織ダンスダンスレボリューション(セミ軍vsキノコ軍)
毒キノコを食べる(セミキノ探検隊)
水中探索(セミキノ探検隊)
離婚ルーレット(蝉茸さんチ)
近所のクレーマーを撃退する(蝉茸さんチ)
姑のイビリに耐える(蝉茸さんチ)
親の財布からお金が抜かれている(蝉茸さんチ)
ドーピング検査に引っかかってメダル剥奪される(ハイパーオリンピック)
たほいや柔道(ハイパーオリンピック)



それでは、また次回。