『歴史通』のインタビューについて(※追記あり) | 有川ひろと覚しき人の『読書は未来だ!』

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『歴史通』という雑誌で著者インタビューを受けたときのことが取り沙汰されているようなので経緯をご説明。

 

・「狂韓国」という過激なタイトルの特集の号に、『空飛ぶ広報室』プロモーションの一環として受けたインタビューが掲載され、「私、自衛隊の味方です」というキャッチとともに著者名が表紙に載った。

 

この事実が

 

・「狂韓国」などという特集をするヘイト雑誌に寄稿するプロパガンダ作家

 

というレッテル貼りに使われているようです(一部の方だと思いますが)。
実際の記事を確認していただければ、寄稿ではなく『空飛ぶ広報室』に関する著者インタビューであり、内容もいつも発信していること以上でも以下でもないのですが、レッテル貼りをしたい方には

 

・「狂韓国」という過激なタイトルの特集号の表紙に、有川浩の名前が載った

 

ということが都合良く切り貼りできる事実ということになるのだろうなぁ、と思います。
捏造の仕組みはこのようなことなのだろうなぁ、とも。

 

自分のインタビューが掲載される雑誌で、掲載号には他にどのような特集が組まれるかということは、著者には確認できません。
それは連載雑誌においてすら同じです。
例えば、私はいくつかの雑誌で小説を連載していたことがありますが、その連載期間中に
「自分の連載以外にどのようなコーナー・特集が組まれるかという報告」
が来るということはありません。
また、雑誌側にもそれを連載陣に逐一報告する義務はありません。
なので、AKBさんやジャニーズタレントさんを大叩きする記事が載った週刊文春に連載していたからといって「週刊文春に連載を持っていた有川浩もアンチAKB、アンチジャニーズに違いない!」と言われても困ってしまいます。

 

今回のこともそれに近く、
「保守系の雑誌」という認識はしていたものの、保守的な思想自体にアレルギーはないのでインタビューのオファーを受けましたが、掲載号の巻頭特集をこのような過激なタイトルで組まれることは全くの予想外でした。
(重ねて申し上げますが、私のインタビューはこの巻頭特集には組み込まれていません。全く別のコーナーです。依頼書では「自衛隊の特集」と説明され、雑誌の割り振りも自衛隊のコーナーになっています)

 

また、自分以外の特集や記事の確認ができないのと同様に、掲載号の表紙の確認もできません。

確認できるのは自分のページのみです。

表紙のキャッチコピーでは「私、自衛隊の味方です」という言葉が私の文言のように使われていますが、私はインタビューの中でこうした文言は使っていません。

手元に残っている原稿では

【「彼ら(自衛隊)を差別する人はいっぱいいるんだから、彼らの味方でいる人が少しくらいいたっていいじゃないか」と思うので、私は何を言われようとも、これからもそういうスタンスで書き続けると思います。】となっています。

編集部側でこの部分をかいつまんでコピーを考えたのでしょうが、かいつまみすぎて私の発言とニュアンスは変わっています。しかし、雑誌の表紙でこうしたコピーがつくという事前の報告はされていません。

『歴史通』編集部が非常識なのではなく、雑誌は「自分のページ以外の確認はできず、他のページの内容の報告もされない」のが普通なのです。

(私のことに関して、『歴史通』が非常識だった点を挙げるとすれば、本人が喋っていない文言を本人の言葉のようにキャッチコピーに仕立てたことだと思います)

 

個人的には、物議を醸している「狂韓国」というタイトルは、記事がどのようなことを訴えようとしていたにしろ、タイトルそのものが誹謗中傷になっている時点で、アウトです。
(保守的な思想自体にはアレルギーはありませんが、この記事のタイトルの付け方は内容以前に私個人の感覚としてアウト、という判断です。保守派にとってもマイナスにしかならない記事タイトルの付け方だと思います)
ですから、掲載誌を受け取ったときに、「今後はこの雑誌からオファーが来たら要注意だな」と思いましたし、実際これ以降はオファーが特になかったということもあって、ご縁を持っていません。

 

総合して、

 

・掲載号の特集を知らされておりませんので、「こんな特集を組む雑誌に寄稿するなんて」という非難については、「寄稿していませんし、私のインタビュー自体は問題の特集とは無関係です」と回答するしかありません。

 

・ただし、雑誌側には全ての連載陣、掲載者に雑誌の全コーナーの概要を報告する義務はないので、掲載号の特集の説明がなかったことは、雑誌側の落ち度ではありません。よって、「特集の説明がなかった」ことは雑誌側の責任を追及するべきことではありません。

 

・プロパガンダ作家というレッテル貼りについては否定させていただきますが、何を以てプロパガンダとするかは個人の判断基準があるでしょうし、自衛隊に肯定的な作家はプロパガンダ作家だと思われる方がそう思われるのは自由です。ただし、私はプロパガンダを目的として小説を書いたことはない、ということは変わらず主張させていただきます。

 

回答としては以上のようなことになります。

というか、4年も前の雑誌が何で取り沙汰されているのか謎だったのですが、総理大臣夫人がこの雑誌に対談のコーナーを持っているということが原因だったそうで。
総理大臣夫人も毎号の特集を報告はされていないと思いますよ、ととんだもらい事故の当事者として一言だけ。
一回オファーを受けて連載を持ったら、突然降りるということはできませんし、オファーされた時点で雑誌の将来の特集記事まで見抜けというのは、それこそエスパーか何かじゃないと。
雑誌の編集方針については、編集部が責任を負うべきものだと思いますし、掲載誌に登場している人物は全員連座だ、というのは、さすがに無理筋だと思います。

 

編集部に対しては、ヘイト雑誌と言われてしまうようなタイトルの付け方は、発信する主張自体を貶めると思いますので、編集方針についてご一考いただきたいと願うばかりです。
注目を集めようと過激なタイトルに走ることは、長期的には決してプラスにならないと思います。
保守系雑誌を目指すなら、保守の名刺となれるような誌面を目指すべきではないでしょうか。
「狂韓国」と刷り入れられた名刺を、第三者に渡すことができるかどうか?
もし「狂日本」という名刺を渡されたらどう思うか?
それを考えていただけたらなぁ、とこれは独り言ですが。
私は「狂韓国」という名刺も「狂日本」という名刺も、渡されたら距離を取ると思います。

 

追記(2017/03/22)

『歴史通』編集部のほうに本文最終部分の旨を意見として正式に申し上げました。

四年も前のことを蒸し返すようで申し訳ないのですが、と前置きしてお伝えしたところ、ご迷惑をおかけして申し訳ないと謝罪をいただき、見出しの節度などについても今後考えていきたいとのお返事をいただきました。

雑誌の編集方針に本当に問題意識を抱いている方は、編集部にきちんと意見をお伝えしてみてはいかがでしょうか。

節度のある苦言であれば汲んでいただくきっかけになるのではないかと思います。

 

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