「男役は本物の男性じゃないのにどうして夢中になれるのか、宝塚を知らない君にとってその疑問はもっともだ、男役の魅力の真髄をどうやって伝えよう、君に～」
と宝塚未履修の友人への布教というミッションにわくわくしていた俺にTwitterガンジス川の水をぶっかけてきた輩がいた。
「AVは本物のセックスじゃないのにがっかりしないの？ と言ってみたら」
これはもう市中引き回しの上打ち首獄門に処すべき発言なので秒でTwitter公式に通報した。通報理由は「セクハラ発言です」以上だ。
プロフィールでは男性か女性か不明だったが、昨今俺を女性作家と知った上でセックスだのAVだの言ってくるのは男だとしたら蛮勇がありあまりすぎているので女性が同性同士の軽口のつもりで言ってきた可能性もあると思っているが、女性だからセクハラ無罪とかねえぞ男でも女でもセクハラは有罪だ。ということをまずはここに明言しておきたい。
そして男であっても女であっても同じように俺はこの発言者を呪う。
「その人は宝塚が嫌いなんだと思います」
お前は俺の友人のことをカケラも知りはしないのに、なぜ俺の友人が宝塚に嫌悪を持っているはずと決めつけた？ そう決めつけてきたお前に俺はたった今嫌悪を抱いた。
人の友人に石を投げるというのはそういうリスクを常に孕んでいる、いやむしろリスクしかないし倍返しまであり得るので気をつけよう。
宝塚を全く知らぬ者が冒頭の疑問を抱くのは当然である。男役という存在は宝塚を知らぬ全ての者にとって未知だからだ。
未知だからこそ親しい友人が宝塚にハマったと聞けば実情を訊きたくなる、訊きたくなるのは「未知」に対して「興味」を持ったからだ。
宝塚を愛する者ならその興味を善く導いてBlu-rayを見せる、あわよくば劇場に一度足を運ばせる（何ならチケット1回くらいは奢ってもいい）、最終的には宝塚を好きになってもらい観劇仲間になってもらう、目指すべきゴールはそこであろう。
初心者に「AVは本物のセックスじゃないのに（以下略）」だの「そいつは宝塚が嫌いに相違ない」などと石を投げて駆逐することは果たして宝塚のためになるのか？
その石は尊きタカラジェンヌたちにいかなる利益も豊穣ももたらしはしない。
「宝塚って怖い、近づかないようにしよう」と衰退への敷石を増やすに過ぎない。
つい4ヶ月前まで未履修だった俺だからこそ断言できる、宝塚に興味を持ちはじめた当初に「AVは本物のセックスじゃない（以下略）」「お前は宝塚のことが嫌いだから左様な疑問を抱くのだな、違いあるまい」などと岩石をぶん投げられていたら二度と宝塚に興味を持たなかった。
今なお初心者の域を出ない俺を親切に導いてくれる先達に感謝するばかりであるし、俺の友人への布教ルートを考えてくれた皆さんにも感謝しかない。まず連れていく、それが一番手っ取り早いという説が多かった。
そして善き先達に感謝しつつ、自分も「AVは本物のセックスじゃない（以下略）」「お前は宝塚のことが嫌いだから（以下略）」などと言わないファンになりたいと思う。
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