真面目な疑問(ネットデモ) | 有川ひろと覚しき人の『読書は未来だ!』

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ちょっと俺の真面目な疑問の話をしよう。

Twitterのハッシュタグデモなどネットでの社会運動が是であるか否であるかという問題だ。

俺の個人的な意見としては、

「ハッシュタグは問題の周知に有効なので是」
「だが、今のシステムのままでは『法律を変えようとするデモ』は否」だ。

これは誰に何を言われようと、システムが変わらない限りは意見が変わらない。
冷笑的と揶揄されてもだ。

というのは、俺一人でさえ、

・作家アカウント
・家族と共有する話題を集めておく個人アカウント
・友人と共有する話題を集めておく個人アカウント
・趣味の情報だけを集めておく個人アカウント

くらいは平気で持っている(後ろ3つはブックマーク用なので発信はしていないが)

さて、俺がこのアカウント4つの全てで法律を変えんとするハッシュタグデモに参加した場合、Twitter上では賛同数は「4」だ。
だが、現実に存在する俺は「1」だ。
この問題をまだTwitterでは解消できない。

前に愛知県知事のリコールがあったとき、署名の水増しが問題になった。
結果としてそのリコールは無効になった記憶がある。
数がそもそも足りなかったのか、水増しという不正のためか、どっちが決定打になったかは知らない。
だが、個人的には水増しという「不正」があったら、それはその時点でダメだろう。という意見だ。
自分の信じる正義のための不正なら許される、という意見はあまりに乱暴だ
集まった署名を胡散くさいものにしないためにも、署名の管理は厳格でなければならないし、厳格な管理ができないのなら署名運動自体を起こすべきではない。
発生した問題意識そのものを胡散くさいものとして全否定してしまうからだ。
不正をする奴の唱える大義など誰が聞く耳を持つというのだ。

現実のリコール運動ですらこうなるのに、現実よりもっと「水増し」が容易なネットで、賛同者の実数をどう換算するか?
これの解決方法を俺は知らない。
日常で使っていないので知らないが、清流キラキラインスタ川だって、サブアカウントくらいは作れるのではないだろうか?

署名サイトなども、メールアドレスを記入することで水増しの不正を少しでも解消しようという意図があるのだろうが、メールアドレスも俺は5、6個平気で持っている。
だからこちらも水増し問題はつきまとう。

問題の周知にハッシュタグやネットが役立つことは否定しない。

だが、政治家や国、行政が「ネットでこんなに声が上がっているから」と政治の場でそれを利用しはじめるのは不可だ。
水増しのような不正はネットのほうがずっと容易だ。

たとえばTwitterが「アカウントは一人に一個、登録時には実名必須」などのシステム変更を行い、それが抜け穴なしに運用できるようになったら、ハッシュタグデモは「実数」に近くなるだろう。

だが、今はそうではないのだ。
(また、そういう窮屈なシステムをユーザーは望むのかという問題もある)

どれほどの大義があろうと、水増しという不正が「可能である」というツールは、実数に数えて政治に反映するべきではない。と俺は思う。
「いい結果が出たこともある」という意見があったが、それでは「悪い結果が出たときはどうするのだ」という話である。
狂犬病特例などは「悪い」の典型にして究極、正にアルティメット事例である。

果たしてネットで「デモの実数」を厳格に守れるシステムが運用される日が来るのかどうか。

それが俺の真面目な疑問である。

そして、その日が来るまでは、政治家は「ネットの声」を濫用するなと切に願う。
Twitterトレンドがどれだけ沸騰していても、ドブ川Twitterに近寄らない衆にきちんとリサーチをしろ。その手間を怠るな。
安易に濫用する政治家がもちろん一番悪い。
だが、濫用できる段階では、ネットデモというものは危ういと俺は思う。
また、狂犬病特例という最悪アルティメット事例が現実に発生するまで、ネットデモを景色のように眺めていた自分の怠惰について猛省するばかりである。

なお、法律を変えるものでないのなら、問題の周知としてはハッシュタグはいくらでも使えばいいと思う。
使っている人々の有り様も同時に見られている、ということを忘れたらいくらトレンドが沸騰しても逆効果だと思うが。

もし俺が社会運動としてのハッシュタグを作るとしたら、

「#政治家は怠けるな」

である。
言われた理由は状況に応じて自分の脳味噌を使って考えろ。
お前らはタダで議員報酬や歳費をもらっているわけではない。

 

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