”Project Ara”はコモディティ化したスマートフォン業界の”悪魔”となるか? (その1) | Draft life with blog

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去年末に一報が入り、業界と一部のマニアを賑わせた”Project Ara

Project Ara concept

PCに例えて簡単に説明すれば・・・

今までメーカーでしか作れなかったPC業界にOpen platformという概念が吹き込まれた結果、一般人が自分好みにPCを作り、カスタマイズできるようになった

このPC業界の流れがスマートフォン業界にもやってくるということですコレ


CPUやらCameraやら、各種機能は全て個別に脱着可能なModule化されており、ユーザーはそれをとっかえひっかえすることで機能の切り替え、アップグレードをすることができます



Moduleの大きさも規格化されています



各種Moduleは全てEndoskeleton(骨格)と呼ばれるフレームパーツにはめ込むことで成り立っているので、このサイズを選ぶことでスマートフォン自体を小さいサイズにするなんて事までできちゃいます




Moduleをはめ込むパターンの一例です



本体のサイズは、ユーザーが好む液晶サイズか電池の容量で決まりそうな気がしますね



全てのModuleは共通の高速シリアルI/F(UniPro)の端子を持ち、恐らく同時にユニークなModule Codeを持っておりModuleを切り替えることで新規ModuleとしてCPUに認識されます
その後、Googleのどこかしらに設定されるであろうDatabaseからDevice Driverがシームレスにダウンロード、設定されることで使用可能になるのだと思われます

PCに追加のパーツを買ってきて各種I/Fに接続し、Device DriverをCD及びMicrosoft Serverからインストールする作業とほとんど同じですね

各種Module単位で分割できるということは、従来のスマートフォンメーカーはもとより今までスマートフォン全体を作ることができなかった3rd Partyのメーカーが、Moduleという単位の販売で続々市場に参入できるようになることを意味します



もちろんGoogleとしては各種Moduleに対して最低限の規格を設けて、それを順守するメーカーのみ上で述べたDevice Driverの管理等のお墨付きを与えると推測されます
と書きつつ、絶対怪しい自作メーカーも怪しい機能を引っ提げて参戦してきそうな気がしますが・・・考える

Araのモジュールは薄さ4mmで設計されているそうです
現時点で完成しているAraスマートフォンのプロトタイプは薄さ9.7mm
これは、iPhone 5s(7.6mm)やGalaxy S5(8.1mm)よりはわずかに厚いものの、この厚みのおかげで大容量バッテリーモジュールの開発が可能になっているとのこと

とりあえずModuleをかちゃかちゃと組み上げて完成となるのですが、これだけでは落としたときにばらばらになっちゃいますよね



それを固定するカバーを外周にはめることになります
これも3rd Partyを含めた色々な種類の中から選ぶことが予測されるため、Araの市場が大いに盛り上がりそうです



こちらは3Dプリンタで作ってみたサンプル
ちょっとデザインがアレな気がしますが。。。



さて、このAraが登場することでユーザーはどんな恩恵を受けることになるのでしょうか?

○ボタン 最新のHW機能を容易に追加することができる
  より高速なWiFiに対応した機能がほしい=>WiFi Module交換
□ボタン液晶画面を大きくしたい
  LCD Moduleを大きいものへ交換
×ボタン よりパフォーマンスの高いスマートフォンにしたい
  SoC(System on Chip)を交換
△ボタン 1点豪華主義なスマートフォンが作りたい
  20Mカメライラネ=>8M、でかい5inch液晶イラネ=>4inch、でも音楽再生機能は充実させたい=>専用Enc/Dec Device&ノイズキャンセラ追加
○ボタン シンプルな黒電話でいい
  Cameraイラネ=>削除、Wi-Fiイラネ=>削除、NFCイラネ=>削除、液晶サイズダウン、余ったスペース全部電池
  =>コンパクトで激安電池持ちの長いスマートフォンのできあがり

etc

結果、HW&デザインにおいて類を見ないオリジナリティを持ったスマートフォンを作ることができるようになります

各種Moduleもカバーも3rd Party同士を加えて競わせることで種類も増え選択肢も広がりますが、最終的にはよりシンプルで低価格なモノと高機能な高額なモノに2極化することになるでしょう

特にCameraとかMusic系の機能に関しては、Moduleを販売するメーカーが自前のアプリを提供して連携させることで、その性能を最大限に引き出したCamera機能を使えるようにするなんて販売方法が取れるようになりますね

ちなみにChina Power全開のModuleとシンプルな機能のみで組み合わせれば、恐ろしく安いスマートフォンが作れそうです
実際Googleは、最も安価な組み合わせで5000円から用意しようとしています

なんと最安値5000円のGoogleオリジナルスマホ「Ara」、パーツは好きな組み合わせが可能



発売は2015年になるそうです
>Google、モジュール式携帯Project Araを2015年発売。最小構成50ドルからお好みで組み合わせ
なあんだ来年かよとか思うかもしれませんが、1年なんてあっという間ですよアヒャ

ソフトウェア的に考えると、OSはAndroidであることからNexusのようにGoogleオリジナルのユーザーインタフェースがベースになると思われます



ということは、購入者は各メーカーの使い勝手の悪くて重いユーザーインタフェースから解放され、また醜悪なdocomoアプリ等が全く入っていないクリーンな環境が用意されることになります
こう考えると、ソフトウェア環境においても削除もできないクズアプリ満載のメーカー品と、素のWindowsのみの軽快な自作及びShop品・・・PC販売における状況と同じではありませんか!?


ここまで見てくると、消費者にとってはいいこといっぱい…と言いたいところですが、ここはやはり予測される問題点も考えておく必要がありますブタ

デメリットとしては以下のような懸念が考えられます

注意 Module同士の相性問題
  自作PC業界ではよくある話です
注意 防水性能は望めない
  カバーでどうにかする方法もあるでしょうが、本体がだいぶ分厚くなりそうですね
注意 そもそも技術基準適合証明が取れるのか?

最後に書いた技術基準適合証明ですが、この試験を通過しないと携帯電話はいかなるところでも電波を吹くことすらできません
日本国内で販売されている携帯電話、スマートフォンには必ず技適マークが本体のどこかに貼られています(電池の裏とか)



また、この規格は国や地域ごとに決められており、海外ではCEマーク、FCCマークなどがそれに該当します



機能をModule毎に分けるというデザインで考えると、間違いなくRF(無線)系はアンテナを含めて一つのModuleに閉じられていると思われます
そうなると懸念点は、このModuleに電源を供給する外部の電源Moduleの品質です
アナログ系の回路は、そこに供給されるアナログ電源対して、電圧はもちろんのことノイズが乗ることで動作が不安定になることがあります

音響マニアな方々にとっては常識的な話で、彼らは何よりアンプ(正確にはアンプ内の電源の良しあし)に対してお金をかけるのはこのためです

RF系も同じことが言え、アナログ系回路に供給される電源の品質が悪いと送信電力制御や受信感度に影響が出るため、結果として技術基準適合証明が取れないスマートフォンが出来上がってしまう可能性があります

もちろんGoogleもこのことには十分配慮して電源系Moduleの品質には高い基準を設けると予測されますが、ただ安く作ろうとするユーザーは十分気をつけなければいけない点と言えます

Wi-FiやBluetoothにも同じことが言えますね

そうなってくると、全て自分で組み上げるコアなユーザーと、動作・品質保証の取れたShop系スマートフォンを利用するユーザーに分かれることが予想されます
なんだかPCと全く同じ状況になってきていませんかはてなマーク
PC業界に目を移すと、今ではメーカー製PCが全く売れず、VAIOのように撤退、もしくは規模縮小の方向へ進んでいるのが現状です

ソニー、VAIO事業譲渡発表でPC撤退。TV事業も分社化へ泣き骸骨

それに対してシェアを伸ばしているのが、HPやDELLといった購入者がBTOで組み上げる半自作系PC・・・

スマートフォン業界もPC業界と同じような道をたどってしまうのでしょうか…はてなマーク



”Project Ara”はコモディティ化したスマートフォン業界の”悪魔”となるか?(その2)では、そんなスマートフォン業界の中でメーカーが生き残る術を考えて(妄想して)見たいと思います考える

”Project Ara”はコモディティ化したスマートフォン業界の”悪魔”となるか?(その3)