学生たちが感じた、考えた『ミュージカル李香蘭』という作品。【第3回】に続き、稽古見学会の感想をお伝えいたします。


---------------------------------------------------

●森本 賢史(政治学研究科2年)
 
 先日、『ミュージカル李香蘭』の舞台稽古を間近で見学することができ、その迫力に圧倒されました。

 心に重くのしかかるテーマを、力強いエンターテイメントとして成り立たせている演技、歌、そして演出は、李香蘭や中国と日本の歴史に興味のなかった人にもきっと訴求するものと感じます。

 「戦争を体験していない世代に、どうすれば自らの連なる歴史の一部として捉えてもらえるか。」その目的に対して最大限の力を注ぎ、制作された舞台だということが真に伝わってきました。

 しかし、ただ圧倒され、感動し、満足した気持ちで帰路に就く。それだけでは、『ミュージカル李香蘭』を観た意味はないかもしれません。舞台の作り手が一生懸命に伝えたいことは、李香蘭や川島芳子に焦点を絞って描かれる東アジアの歴史であり、忘れてはならない戦争の記憶です。本来ならば、2時間30分にまとめられるはずもないことです。

 私は、この舞台をきっかけにして、ようやく川島芳子という人物を知りました。中国と日本の双方に、戦争によって人生をゆがめられた人が数多くいます。そのことを心に留めながら、両国の歴史、そして現在に関係にいたるまで、学び、考え続けたいと思います。戦後70年が経ち、昨年には山口淑子さんが亡くなってしまった今だからこそ、ますますその意義を強めていく舞台だと感じます。


---------------------------------------------------

●金城 文(大学院政治学研究科ジャーナリズムコース修士一年)
 
「俳優の一番大事なことは」
「いて、すてて、かたることです」
白髪の浅利氏の圧倒感が凄かった。

黒いジャンパーや運動着の劇団員が銃を構える。劇団員は全員で29人ほど、女性は9人ほどであった。

舞台稽古が始まった。

「殺せ、殺せ、裏切者を!!!」
やはり生で見ると迫力が凄かった。
 
川島芳子役の語りも面白かった。
「自分の理想、正義に目がくらみ。幸せの押し売り」「悪党め」

非常にドラマチックな時代だと感じた。
関東軍や抗日派の演じ方も面白かった。
 
「満州国が建国され『王道楽土』『五族協和』を謳うシーンは、どのような気持ちになりきって演じているのか」

と、李香蘭役の方に取材で聞いた。彼女は「当時、本当にそう信じていた。その気持ちがあった」と語った。物語に深みを持たせるシーンだと改めてと感じた。

あの戦争を単純化せず、複合的な視点で見るということの大切さ、そして面白さを感じた。

----------------------------------------------- 完

過去の記事はこちらからどうぞ

12月3日開幕!
『ミュージカル李香蘭』
オフィシャルサイトへはこちらから