歯いしゃのチュー先生 | アトリエぽーぽー

アトリエぽーぽー

『アトリエぽーぽー』は、創作を楽しむ絵画教室。
講師あけやまひかるは、お月謝袋やレターセットなど、クラフト製品の販売も行っています。
このブログは、生徒さんと保護者さまへ発信していますが、
絵や工作について、みなさまのご参考になれば幸いです。

歯医者のチュー先生


歯医者のチュー先生は、とても腕利きで、いつも患者が絶えません。

自分より大きな牛だって、長靴を履いて、口の中に入り、やさしくドリルを使って治療します。

でも先生とて、ネズミです。

危険な動物の治療はお断り。

その筆頭は猫ですね。


ある日、きつねの患者がやってきます。

きつねは門前払い。

が、痛さのあまり、涙をぽたぽたとたらすので、つい同情して、治療を請け負うことにしました。

べそをかいていたきつねは、治療が進むうち、おいしそうなネズミが口の中にいることに気づきます。


ぱく!


と食べたい衝動に、抗いきれません。


治療最後の日、いよいよきつねがチュー先生を食べようとすると、

「ほんのひと塗りで、永久に歯が傷まなくなる薬をぬってあげましょう」

そう言って、チュー先生は、糊を塗って、きつねの口が開かないようにしてしまいました。


いわゆる、力の弱いものが、強いものを、知恵でやっつけるお話ですが。

情けをかけて、痛みから救ってくれた恩人を、痛みがなくなるや食べようなんて、ほんとにきつねは恩知らず。


このきつねは、なかなかダンディーで、身だしなみもいいし、チュー先生を食べるときは、辛口の白ワインと一緒に、と妄想を膨らましています。

糊で口をくっつけられてしまった後も、威厳を保とうと、すっくと階段を降りていきます。

その紳士ぶりが、それでもきつねをちょっぴり憎めないキャラにしています。


作者のウィリアム・スタイグさんは、60歳を過ぎてから絵本を描き始め、この絵本はなんと75歳のときに描かれたんですって。素晴らしいですね。