孫娘のために、おいしいフルーツケーキを焼いて、クリスマス・イブの準備にいそしむおばあさん。
が、風邪をひいていけなくなった、という電話をもらい、しょんぼり。
しかしそれもつかの間、ラジオでジングルベルの音楽を流しながら、歌って踊って演奏しての、ひとりパーティ。
ああ、いい気分。
音楽が鳴り止むと、割れるような拍手、拍手、拍手。
あれあれ?
外にいたのは、うさぎちゃんと、きつねどんと、くまくんでした。
3びきのお客さんを迎えて、パーティはますます盛り上がります。
夜が更けて、動物たちは家に帰る時間になりました。
いつのまにか外は雪。
くまくんの頭にはショールで、きつねどんの頭にはスカーフで、うさぎちゃんの頭はハンカチで、覆ってやりました。
翌朝、玄関をあけてみると、積もった雪がきらきらと輝いています。
そして、入り口から外へ向けて、きれいに雪かきがしてありました。
うさぎちゃんと、きつねどんと、くまくんからの、贈り物です。
そのとき、孫娘から電話がありました。
もういちど、楽しいクリスマスを過ごせそうです。
私が20代になりたての頃。
バイト先で知り合ったおばあちゃん。
若い子が中心の職場で、ひとり黙黙と働いているおばあちゃんに、私はなついていました。
その年の暮れ、娘さんは遠くへ嫁ぎ、お正月にお節をこしらえても誰も来ない、と言っていたので、それなら私が行くわ、と言いました。
しかしあろうことか、約束の日、熱を出してしまったんです。
電話で行けないと謝ると、「あらあら、せっかく筑前煮や黒豆を煮たのに」とがっかりするおばあちゃん。
今なら、そのがっかりが、どれほどだったかわかります。
あの日、おばあちゃんのところへも、うさぎちゃんやきつねどんが遊びに行ってくれたら良かったのに。