読み終わったあと、しーんとしてしまいました。
凍りつくような寒さの、夜の森。
野うさぎの子が、ひとりでうずくまっています。
恐ろしいキツネに襲われて逃げた、あの夏の日に、かあさんとはぐれてからというもの、子うさぎはひとりぼっちなのです。
ひとりで草を探して食べ、硬い木の皮をかじり、毛づくろいを覚え、生き延びてきました。
その夜、野ねずみの駆けて行く足音がしました。
その足音を聞きつけたイタチが、風のように追いかけていきます。
「きゅうっ」
悲鳴が上がりました。
鳥たちがざわめいています。
「ぼっ、ぼうーっ」
ふくろうの目が光ります。
獲物を待ち伏せています。
みしり、みしっ。
密かに雪を踏みしめ、忍び寄る足音は、キツネ。
野うさぎの子は、じっとしていますが、気づかれてしまいます。
追ってくる、キツネとふくろう。
野うさぎの子は、死に物狂いで雪を蹴って逃げます。
蹴って蹴って蹴り上げます。
足を停めたそのときが、命の終わりなのです。
夜がしらじらと明けました。
野うさぎの子は、生き延びた喜びに、からだじゅうから力が湧いてきます。
離れ離れになったかあさんが、どこからか出てきて、助けてくれる、そういう展開を予想していた私は、甘かった…。
野生の動物たちが冬の森を生き延びる、そういう厳しいお話なのです。