ちっぽけでふとっちょで、しっぽときたらぷつんと根元だけ。
シンプの兄弟たちはみんな貰われていったのに、シンプだけは貰い手がなく、とうとうお払い箱に。
だからって、ゴミ捨て場に捨てなくてもいいと思うんですが…。
ゴミ捨て場の肘掛け椅子で、シンプは夜を明かすことになりました。
ネズミが来て、パンをひときれ恵んでくれましたが、
「でもな、朝になったら出て行くんだぞ。おれたちネズミだけでも、ここの暮らしはキツイんだ」
と追い払われてしまいます。
翌日、町をうろうろしていると、野犬狩りの男に捕まってしまいました。
車が野犬収容所に着くと、シンプは男の目を盗んで、塀の外へ飛び出します。
走って走って、もうおなかはぺこぺこ。
そんなとき、遠くにサーカスの灯りが見えました。
シンプに、お腹いっぱいの食べ物をくれ、ベッドを貸してくれたのは、ピエロのおじさん。
大砲を打って、的を突き破るのが、おじさんの芸なんですって。
しかしおじさんには、悩みがありました。
「今夜のショーまでに、もっとおもしろい工夫をしておかないと、おまえはクビだ」
と宣告されていたのです。
シンプに名案が浮かびました。
大砲の玉の代わりに、自分がまあるくなって、飛び出すんです。
ずどん!
飛び出してきたのは子犬!
お客さんは拍手喝采。
シンプはアンコールに応えて、何度何度も飛び出しました。
こうしてシンプは、サーカスの目玉となり、ピエロのおじさんもクビを免れ、幸せに暮らしました。