アンが席を離れた隙に、風に煽られ、紙から飛び出してしまいました。
ふたりは、お腹が空いたので、ご馳走を探しに行きます。
あ、あそこにあつあつのシチューが！
が、食べようとした瞬間、女の子の叫び声が聞こえ、クマが現れたので、あわてて逃げ出しました。
あれ？
この女の子とクマ、どこかで見覚えが。
もしかしたら、絵本「さんびきのくま」じゃないかしら？
惜しいところでご馳走にありつけなかったふたり。
残念がっているところへ、いい匂いがしてきたので、匂いのする方をたどって、豆のつるを登っていきます。
すると、七面鳥の丸焼きを始めとした豪華な食事が、テーブルの上にところせましと並んでいます。
わお、ごちそうだ～。
しかし大男が現れて、またしてもマールとジェスパーは、あわてて逃げ出します。
やっぱり！
これは「ジャックと豆の木」ですね。
どうやらふたりは、自分たちが絵なので、絵の中のものしか食べられないみたい。
「人魚姫」「ヘンデルとグレーテル」「マザーグース」、絵本の中を転々として、ご馳走を探しますが、もうちょっとのところで食べ損なってしまいます。
もう諦めるしかないのかしら。
いえいえ、とっておきの方法がありました。
アンが描いていた絵に、ご馳走を描き、自分たちもそこへ帰ればいいんです。
ジャスパーはステーキ。
マールはミートボール入りスパゲッティ。
それぞれ好物の絵を描きました。
そして絵の中へ。
残さず平らげ、絵の中のテーブルが、最初通り、空っぽになったところで、アンが戻ってきます。
アンは、テーブルの上に、大きなケーキの絵を描いてくれました。
デザートは別腹。
マールとジェスパーは、夜の更けゆく中、ゆっくりデザートを堪能しました。
マールとジェスパーは、アンが、白い画用紙に黒いペンで描いた線画なので、ぺらんと薄っぺらいモノクロです。
他の部分は、立体感のある美しい彩色。
でも、美しい色彩以上に、モノクロのふたりがいきいきとしているんです。