「白色軟膏」ってなに?
こんにちは。橋本です。
古くから使われている皮膚外用剤に「白色軟膏」というものがあります。
ただ実際には、白色軟膏そのものをアトピー治療で、目にすることはあまりないかもしれません。
というのも白色軟膏は、現在ではおもに亜鉛華軟膏の基剤(ベース)として、アトピー治療に使われるのが、ほとんどだからです。
ここでは、その「白色軟膏」の特徴を、少しみていきたいと思います。
白色軟膏の成分
白色軟膏は、以下のようなシンプルな成分の組み合わせで、できています。
白色軟膏の成分:
白色ワセリン 930g
サラシミツロウ 50g
セスキオレイン酸ソルビタン(界面活性剤) 20g
全量 1000g
白色軟膏のテクスチャー
白色軟膏は、ミツロウを少量、加えてあることで、白色ワセリンそのものに比べ、ほんの少し硬さがついています。
ミツロウ独特の匂いも、少し感じられます。
そして、透明感のある白色ワセリンに比べ、白色軟膏は、やや白っぽい色をしています。
ただ、この違いは、かなり微妙で、実際に見比べないと判別することはできません。
白色軟膏には、吸水性がある
白色軟膏の大きな特徴は、「吸水性」があることです。
吸水性がまったくない白色ワセリンに、「セスキオレイン酸ソルビタン」というものを加えることで、水分になじむようにしたのが、白色軟膏です。
なかなか聞きなれない「セスキオレイン酸ソルビタン」というのは、皮膚に対しての刺激が少ないといわれている界面活性剤のひとつです。
昔の白色軟膏には、この「吸水性を増やす」のを目的に、精製ラノリンが配合されていました。
しかし、ラノリンアルコールによる接触皮膚炎(かぶれ)が多く報告されているため、配合成分が「精製ラノリン」から、現在の「セスキオレイン酸ソルビタン」に変更されました。
白色軟膏は、吸水性と密着性があり、塗ることで皮膚をやわらかくすることが、期待できます。
ただ現在では、刺激が少なく、使用感のいい保湿剤、外用剤はほかにもたくさんあることから、白色軟膏を単独で使うことは、少なくなりつつあります。
亜鉛華軟膏の基剤になる
白色軟膏は、亜鉛華軟膏にも基剤(ベース)として配合されています。
亜鉛華軟膏は、皮膚を保護するとともに、患部を乾燥させ、水分を吸収します。
乾燥作用は、亜鉛華軟膏に含まれる「酸化亜鉛」によるものですが、吸水性は、白色軟膏によるものです。
白色軟膏に吸水性があるからこそ、亜鉛華軟膏は、ジュクジュクしたアトピーの湿疹、乳児湿疹などからしみ出した水分を吸収して、サラサラにしてくれるわけですね。
亜鉛華軟膏と間違われやすい軟膏に、亜鉛華単軟膏というものがありますが。
亜鉛華単軟膏のほうは、基剤(ベース)が白色軟膏ではなく、単軟膏。
単軟膏には、吸水性がありません。
つまり、湿疹のジュクジュクが強い場合には、亜鉛華軟膏のほうが向いているわけです。
亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏。
ともに、同じような乾燥作用、保護作用がありますが、患部の状態、経過によって、使い分けることも必要なんですね。