僕と師匠の昔話。 | 茗荷谷美容室、オーナーのブログ

茗荷谷美容室、オーナーのブログ

茗荷谷でナンバーワンから始まり、文京区でナンバーワン、東京でナンバーワン、日本でナンバーワンの美容室を目指して!!

僕たちはていねいであること、安心であることに徹底的にこだわります。

東京都文京区、本郷三丁目と春日と茗荷谷にある、

未来美を提案する美容院、ビューティズムのオーナーのブログ

 

今からもう10年以上前。

当時僕は銀座の技術バリバリ系の有名店で

バリバリ練習を重ねていました。

 

「上手いヤツにお客様がつく」

「上手ければ後から何でもついて来る」

「技術がすべて。とにかくこだわれ」

 

そんな熱いお店だったように記憶してます。

カットやパーマ、カラーの技術をとことん磨く。

それが美容師だ!

 

そんな教育に強く賛同し、

むちゃくちゃに練習していました。

 

しばらくして、

新しく新店が丸ビルにオープンする事になり、

銀座から丸ビルへと僕は移動になりました。

 

当時、銀座の店長からは、

「お前の技術で圧倒してやれ」

そんな風に言われたように記憶しています。

 

僕も若いながら、学んできた質や量、

絶対に負けない自信がありました。

 

当時オープニングで8名のスタイリストが

同じ条件でスタートし、

今思えば浅はかでしたが、

 

「おれが一番上手い」

 

そう肌で感じたものでした。

 

 

そこで僕は、衝撃の体験をする事になります。

その店舗には、店長のさらに上に、

「部長」と呼ばれる女性が存在していました。

 

 

都内9店舗を統括する、会社でも指折りな

敏腕(豪腕??)部長でした。

 

 

オープニングという事もあり、部長が眼光鋭く

店内を見張っている中、僕は自信たっぷりに

カットを見せつけてやろうと仕事をしました。

 

喜んでお帰りになるご新規のお客様。

ばっちり似合ったカット。

 

(見たか。これがおれの仕事だ)

 

部長「おい、伊藤。」

僕「うい。」

 

裏に呼ばれ、

どんな賞賛が待っているかと

バックルームで開口一番。

 

部長

「このへたくそが!!」

 

僕「!?」

 

 

 

カットは完璧だった。

お客様もとても喜んでた。。。

なのにへたくそ???

 

 

 

部長「きったねー格好で

仕事しやがって!」


部長「なんだお前の

パッとしない顔は!?」


部長「ヨレヨレの服着て、

だっせー靴はいて!!」


部長「オメーは浮浪者か?!」

 


もう一度言っておこう。

部長は、

女性だ。

 

 

 

部長「お前それで

オシャレしたつもりか?」


部長「明日アニエスで

服全部買い直してこい」


部長「それからお前、

テンガロンハットかぶれ!!」


部長「パッとしないから顔隠せ!」


部長「このへたくそが!

イライラするわー!!」

 

 

 絶句である。

正直、過去にこんなにボロクソに

言われたことは、ない。


テンガロンハットって、、、

俺はスタンハンセンか??

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もし俺がハンセンなら、
ウェスタンなラリアットを
叩き込んでやりたい。

心からそう思った。


そしてその後しばらく、
10万円かけてアニエス・ベー
とやらの服を揃え、

テンガロンハットをかぶり、
仕事をしていた。

銀座時代のお客様は
爆笑である。

「なにどしたのー??(笑)」
「なんか笛とか吹けそう(笑)」
「なんかウケんだけどー(笑)」


後日また、お店に現れた。

「部長」である。

僕にはゴジラのテーマが
頭で鳴り響く。


お客様のクロージングを終え、
また呼ばれる。


部長「ちょっと来い。」

部長「お前相変わらず
しょーもない仕事してんな??」

部長「このヘタクソが!」


かぶったことない
テンガロンハットをかぶり、

買ったこともきたこともない
あにえすべえのえらいスリムな
パンツを履き、

昔からのお客さんに爆笑され、
またしてもヘタクソと罵られる。

確かにこの前の服は
あまり良くなかったかもしれないが、
今回はバッチリだろうが(怒)

カットも完璧だった。
あのフォルムは芸術だ!!



さて。。。



左腕のサポーターの位置を
整えようかな。。。

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部長「お前ちょっとさー。
〇〇店の店長の仕事見て来いよ。」

部長「おまえがどんだけ
しょーもないかわかるから(笑)」
(繰り返すが部長は女性である)


なるほど。
そこに行けば上手い奴に
会えるんだな?

よしよしいいだろう。
見てきてやるわ。



そして後日、そのお店へ。


僕は当時、


ゴリゴリの武闘派技術トンガリ系
トゲトゲ美容師として
多少名を馳せていた。


そのお店に行くと、
スタッフは騒然とする。


(なぜこいつがここへ??)
(店長の仕事を見にきただと??)
(そ、そんなバカな、、、)


そんな空気である。


早速見させてもらった。

驚いた。

「下手すぎる」

もしこの人が銀座店にいたら、
もうケチョンケチョンだろう。

ラインもガタついてる。
量感だってスッカスカ。

僕の怒りがマックスに達した。


無意識に左手のサポーターに
手が行ってしまう。

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しかし。

お客様がおかえりになる際、
不思議なものを目にした。


「次はいつ来ればいいの??」

「今日はなにを買って
帰ればいいの??」

「今日もほんっとに綺麗にしてくれて
ありがとう。」


そのお客様は、
また一月後に予約を入れ、


シャンプートリートメント、
スタイリング剤、
ヘアオイル、などなど、


袋にいっぱいの商品を抱え、
本当に幸せそうにおかえりになった。


次の方も、次の方も。
ほとんど全ての方が、


言われるがままに予約を入れ、
勧められるものを全て買い、
最高の笑顔でおかえりになる。



(上手いって、何だ??)
(結局、俺がヘタクソなのか?)


お客様を心から心配し、
親身になって話を聞き、
最高の笑顔を引き出す。


下手なんじゃない。


お客様が喜ぶカット。
お客様が幸せを感じるカット。
早くて無駄がなくて手際がいい。


ラインがガタついてるんじゃない。
自然なんだ。

スカスカなんじゃない。
乾かすのが楽なんだ。

それをお客様が望んでたから、
そうしたんだ。。。


(上手いって、何だ?)




その後、僕は部長の言うことを
全て受け止めるようになった。


僕の知らない、
「上手い」
がたくさんあった。


僕にとって数少ない師匠。


おかげで僕はその後、
強烈にお客様を
増やして行くことになる。


そして店長になり、
圧倒的な実績を重ねることになる。


人は人との出会いで大きく変わる。
僕はとても運が良かった。


今も師匠のおかげで、
楽しく、幸せに美容師を続けている。


新人研修を終えて一人、
お店にいたら、
色んなことを思い出した。


今日はそんな気分。