【第一夜】

$Bebe Suaveのブログ


桜の花が咲き始めたその朝、都に住む夜啼きウグイスのぴっぴは
北の国の最果ての地にいるという
宿屋主人のおじちゃんに逢いに参ります。


ちゅんちゅんちゅんちゅん
ちゅちゅちゅのちゅん


おじちゃん、東の竪琴も南の太鼓も聴かせてくれるって!!
西の麻の実も、北の胡桃も食べさせてくれるって!!


金の鳥籠、
銀の寝床も用意し
真珠の指輪の冠もくれるって!


さあ、いざ飛びゆかん!



ちゅんちゅんちゅんちゅん
ちゅちゅちゅのちゅん


春風に乗って降り立った処は
北風の町。
今夜はこの地でご一泊。


おじちゃん、おじちゃん、逢いたかったよ、ちゅちゅちゅのちゅん


おぉおぉ、ぴっぴ!
ようこそ!ようこそ!

これからおじちゃんの友達の店で宴じゃわい!

けれど、おじちゃん、
なんて怖いお顔だこと!
なんて淋しいお目目だこと!


ぴっぴはちょっぴり不安になりました。

だけども団栗の盃に入ったお酒を飲んで
ぴっぴはすっかりご機嫌です。


おじちゃん、ぴっぴに言いました!
おじちゃんはぴっぴを最高の声で鳴かす名人だよ。


だけどもおじちゃん、ぴっぴが雛鳥でなかったので
ちょっぴり残念そうです。


おじちゃん、おじちゃん、
ぴっぴは体は小さき鳥なれど
雛鳥ではないのよ。
だけどそんなに残念なの?


ぴっぴは大空を羽ばたく風切り羽を短くしてきて良かった、と思いました。


おぉ、おぉ、この短き風切羽は正に雛鳥のようじゃ。。


どれおじちゃんにぴっぴを鳴かせてみようぞ!


痛い、痛いよ!おじちゃん!
ぴっぴはそんなに放り投げても嬉しくないし、
そんなに握ったら
ぴっぴの小さき心臓は止まってしまいます。
バクバクバクバクバクバク


ぴっぴよ、
何故鳴かんのだ?
さてはお前は聾唖の鳥か?


ぴっぴは哀しくて
ひーひーひーひー
鳴いてます。