/8T目/
 
○親パラメータ

・名前:フィロテレス:男・既婚(婚姻)
*職業:市民(学者系)
*武勇伝:凄く有名な貴族を助けたことがある
*愛用品:何もない。強いて言うなら心だ
*ダリド:残念人間でした。
 
・財産  ……0
・人脈  ……6
・教養 ……10
・武力 ……1
・善性 ……9
 
○子パラメータ
・名前:テュクス:男・既婚(好婚)
・財産  ……0
・人脈  ……3
・教養 ……8
・武力 ……1
・善性 ……11
 
(婚姻者・強制イベント)
☆結婚で変化する
 結婚形式により異なる。結婚しているものそれぞれに起きる。
親:(婚姻)の場合、人脈を+1する。家族ぐるみの付き合いが増えた。財産も1増えた。
子:(好婚)の場合、善性+1する。思いやりを覚えた。
 
奴隷と言えど、有力市民たる友程の邸に身を置きその各所で働く者ともなれば、賓客の遇し方等を覚えもするし、
ともすれば有力者達の覚えが目出度くなる事も、決して珍しい事ではない。
…それを知り尽くしているが故か、友は奴隷の遇し方が極めて巧みであったし、故に奴隷達もまた驚くほどそつが無い者達であった。
その彼らの覚えが良い妻・ニュンペーを通して、フィロテレスもまた知己を増やし、社交という物の表裏を知っていく。
それは生来学問を愛するフィロテレスにとって、ある意味未知の領域の学問を見つけるに等しい事であった。
 
而して、与えられるばかりというのも芸が無い、と考えるフィロテレス。
折角なので、奴隷達に幾らかの読み書きを教えてはどうかと友に問うと、以前やってみた事はあったが、忙しい彼らの身に付かなかった、
可能であるならやってみてくれまいかという事で了解を取り付けるに至った。
 
かくしてフィロテレス、ニュンペーを最も可愛がっていた顔役の女奴隷に問うて見ると、アタシらがそんなモン覚えてどうすんだいと一笑に付された。
しばし逡巡して、奴隷も信仰…神殿との関係も全く無いではない事を思い出す。
かつて、幼き日のテュクスに聞かせた寝物語。ほんの少しの娯楽としてならどうか、そう伝えてみる。
何でそんなに一生懸命なのか知らないけどさ。
彼女はそう言って、飯時の休憩時間くらいになら皆少しは聞いてくれるかもねと言い置き、仕事に戻っていった。
 
最初は、共連れとして来てくれたニュンペーだけが静かに聞いていた。
テュクスも来ようとしたらしいがニュンペーはそれを押し止めた。かつて寝物語として聞いた事を、次はムーサに伝えなさい、そういう事だったであろう。
やがて、その神様は何て言うんだ、文字でそれを書けるのか、という横槍が少しずつ入るようになってきた。
フィロテレスは一つずつ丁寧に答える。

壊れた陶器の欠片を拾っては、それに文字を削り入れたりもした。置き場所に困っておかみさん…顔役の事を奴隷達はそう呼んでいた事を知る…に片付けなと怒られたりもした。
何時しかその物語りは、日課となっていた。
ある日、フィロテレスが語りを終えて帰ろうと席を立った時。
 
“何時もありがとう。これ、少ないけど皆からよ”
 
しっかりとした重みのある陶器の壺が手渡された。
見れば、彼ら奴隷にすれば、子供一人分程度の身代となる財貨が詰め込まれていた。
返礼のつもりで始めたフィロテレスにしてみれば、それこそ驚きを隠せないというものであった。
 
“返すなんて言っちゃ嫌だよ?アタシらみたいなモン相手でも、ロハはいけない。主様はそう仰る方でね”
 
そう先手を打たれて追い返されてしまえば、もうフィロテレスには何を言う事も出来なかった。
そして、何も言わずにニュンペーは壺の半分を抱えて帰路を促すのであった。
 
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友に顛末を告げ、夜の挨拶を済ませて邸を辞そうとした…所、寄り添う男女の姿を見て取れた。
仲睦まじいと言うには、ムーサが肩を振るわせて居るようで…おおっ、テュクス頑張りました、彼女の髪を優しく撫でております。
 
…壺と裾が一際強く引っ張られるのを感じる。
ハイスミマセン、これ以上は野暮ですね。
 
――テュクスが抱いた謎に答えは与えられるのか。頑張りたまえ、青年。
 
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(条件イベント・子が勝手に水鏡を見てない時、任意参加イベント)
☆子に水鏡を見せる。
 子の一番に高いパラメータによってダリドが異なる。
・子の善性が一番高いなら、姿は変わらない。ただの人間になる。ただし、異民族の妖精がついてくる。
 子がコフにいるならコフの地を追われてヤニアか黒剣の若様のもとに脱出する。
→ヤニアへ。
 
“証ヲ刻ミ”…“与エラレタモノ”…“見定メヨ”
――遠く谺する、異形の神々が下した声。
 
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テュクスに水鏡を見せてはどうか、彼の舅たる友の何気ない提案からそれは始まった。
水鏡…ダリドと呼ばれる“力ある姿”を見出す、ある種の託宣のようなものである。
正気を失う等、社会に対してある程度の危険性があるともされる事から、市民の中でもある程度の齢を重ねた者のみという制限の下、
後見となる者(主に親)の意思によって行うとされている儀式である。
任意ではあったがより大きな責任を果たす市民となる為の意思表示という側面を持つものとして、
この辺りでは通過儀礼のような認識が一般的であったようだ。
 
フィロテレスの場合、特段何かを得る事も無かったが故に学究へと走った、少しばかり複雑な思い入れのある文化である。
 
気付けばあのテュクスがもうそんな年頃か、少しばかり老け込んだ思いが去来すると共に、
何か恐ろしい姿が現れるという事はあるまいか、そんな不安がわずかばかり過ぎる。
 
“自身がもし伝え聞くような異形の姿を持っていたとしたら…何もかもが変わってしまう。その結論を私は恐れている”
 
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結局、テュクス自身も強く志望した事から、フィロテレスは水鏡の使用を許諾する事とした。
一抹の不安も、テュクスの確たる意志を前にしては立つ瀬を無くしてしまうようであった。
 
“何、かの青年の為人を知る者ならば、邪身を得る事なぞ有り得んと誰もが言うだろうよ”
 
友の見透かしたような言葉もフィロテレスの得心を手伝った。
かくして秘儀は催行される…と言っても、それはさして時間の掛かるものでもなく、結果は自ずから立ち上がる。
結果は…それそのものは、誰もが考えた通り、真にテュクスそのものの姿だったと言う。
 
――“異民族の妖精が、テュクスの傍らに姿を見せた”以外は。
 
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その事実は、フィロテレス親子の行いからも裏付けを得てしまい、コフの人々に広まってしまった。
…否、何処かしらそれは“普通ではない”行いへの不信感を埋めてしまう事実が求められていたからなのだろうか。
“異民族の死体”…コフの者にとって、塵にも劣るそれを丁寧に埋葬する。
何も無ければ“ただそれだけ”の事であったが、今のテュクスには“それが理由”とするに足るものが存在してしまった。
死体を埋葬したから見初められたのか、元々“そうであった”からそんな事をしたのか…。
いずれにせよ、本来伏されるはずのダリドに関する事が、テュクスの場合はそうならなかった。
 
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“証ヲ刻ミ”…“与エラレタモノ”…“見定メヨ”
 
異形の神々が下した声。今はそれが、フィロテレスの心を責め立てるようであった。
 
“行くのか”
 
星もまばらな暗い夜、立ち去ろうとする気配に声を掛ける。立ち止まりはしたが、影は黙して語らない。
 
“汝、妻はどうする気だ”
 
“…別れが辛うなります故、こうして暗い夜を選びますれば”
 
はっ、と身を起こす声が早いか取り縋り、声も立てず泣くニュンペー。
母様、と呟く影に光る一筋。
 
“テュクス。我には汝を止める事も…よもや許しを請う事すら出来ぬ。全ては我が不見識と不徳故だ”
 
“父様…ああ、フィーよ、私の優しい師である人よ”
 
わずかな光のみが届く闇夜に、三者のすすり泣く声が流れて消えた。
…かくして、テュクスは一人去った。許されるならば、ヤニアの再興へ尽力したいと告げて。
 
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(全員共通・任意参加イベント)
☆百目の群れを討伐する
子が善性6以上あるなら親の意向に関係なく参加する。武力が10あるなら生き残る。あるいは教養と人脈で13以上で生き残る。生き残ったら財産に+2する。また善性に+1する。
親:教養10+人脈7=17→生存。
子:死亡判定→補足生還。増加無し。
 
“お義父様!いい加減観念して我が夫の行き先をお吐きなさい!”
 
大陸競技会の準備が進み、世間は忙しく、また何事も無かったかのように騒がしい中、テュクスの妻ムーサはいきり立った。
 
…テュクスの姿がコフから無くなって後、かつて説教を食らった時以上の剣幕で詰め寄られたのだから、
フィロテレスの意気が弱いと責めるのも酷であろう。
それ以上に、妻を思うテュクスの思いを知ればこそ、知らぬ存ぜぬを通しきるのも無理という物である。
 
而して女の一人旅が危険などと、指摘するまでも無い。
ムーサとて本来はそれが分からぬ程愚かではないが、今は事情が聞く耳を奪っていた。
考えあぐねて、結局友の知恵を借りる他あるまいとの結論に至る。
 
“…離縁、は我としても選ぶものではないと思っていた”
 
見えない何かへ聞かせてみせるように、友は重々しく口を開いた。
 
“我も覚悟を定める時か。…友よ、大陸競技会に先んじ、化け物を駆逐しておきたいという声は知っているか”
 
その噂ならば聞き覚えがあった。
何でも、ヤニアとの旧交易路傍らにある山の方で、かつて現れた100の目を持つ化け物が大発生しているという。
 
“そうだ。その辺りからならば女の足でもヤニアへはそう危険でもあるまい。化け物を片付けられれば、だが”
 
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かくしてフィロテレスと友は、かつて100の目を退治した生き残り達を見出し、討伐軍…と言うには少々小規模の義勇部隊を結成した。
ムーサには後備…複数の女奴隷達と共に、繕い物や手当、食事の準備等を手伝う人員として配備を申し渡した。
無論、事情を知るもの以外には悟られないように。
 
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さて戦場にて。
聞けば、その化け物は親を羊に持つ故か、とにかく突進に気をつけろとの事であった。
而して、その勢いを殺すのは苦手らしく、複雑に走り回る事はあまり無かったという意見が多くを占めた。
故に、大群ならばますますその機動性は失われようし、罠に陥れる事も出来ようという事で話しはまとまった。
…幸いに、山並みには何の気紛れか、濃い霧が現れている。
100目共もこれならば、何かの拍子で混乱を来そうという所であった。
 
/一方その頃/
 
テュクスは満身創痍であった。

ヤニアへの道も半ばを過ぎたという頃、化け物の大群に困る羊飼いが溜息をついている所を見てしまったのである。
…若いテュクスは、少し自棄を起こしていた事もあったかもしれない。

無謀にも、単身で100目の群れに挑んでしまっていたのである。
フィロテレス達のように、化け物達の特性を見抜くまでは良かったが、単身ではそれをどうする事も出来ない。
敢えなく群れの突進に巻き込まれてしまった。

群れの一匹がテュクスを見出し、踏み砕くか食おうかという様子で近づかんとした時。
不意に周辺が濃密な霧に覆われた。
何も見えなくなり、テュクスは気を失った。遠くで何か、大きな声が聞こえたような気がした。
 
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生き延びた。フィロテレスは恐らく生まれて初めての、とんでもなく規模の大きい荒事をやってのけた。
震えは止まらないし言葉も出ない。
こっそりとヤニアへ向かうムーサを見送る時も、呆然とした頭で何を言ったか覚えてはいなかった。
さぁ、帰るぞ。意気軒昂といった様子で肩を掴む友が、頼もしくしょうがなかった。
 
/*/
 
夕方の風が素裸の身体に冷たい――。
テュクスはそう思い、目を覚ました。
至る所怪我だらけではあったが、動く分には何とか問題は無い。
周りを見渡しても、化け物の気配は無かった。

何があったのかはもう知る由も無かったが、立ち込めた霧の優しさは辛うじて思い出す事が出来た。
感謝の祈りを捧げ終え、のろのろとヤニアへと歩みを進めるテュクス。
星空の下、ヤニアの街で、怒るやら泣くやらのムーサに再開するのは、この後のお話。

(条件イベント:上記以外の投資を行っていた場合)
☆奴隷以外で金を稼ぐのが困難な時代になりつつある。時代は大動員の時代だ。家族単位で小さくやる時代は終わった。
投資失敗のペナルティはなかった。
 
大陸競技会は何事も無いかのように、盛況の内に終わりを告げた。
だが、その盛況は何処かしら、不安を打ち消そうとするような狂喜にも似た風を孕んでいた。
 
/T8教育フェイズ/
 
教育→財産+1
 
テュクス:貴族の子(庶子)男・既婚(好婚)
・財産  ……0+1
・人脈  ……3
・教養 ……8
・武力 ……1
・善性 ……12
 
100目討伐の出立に際してフィロテレスは包みを一つ、ムーサに託した。
“出来ればあの子が行く時に渡してやりたかったのだが”
ムーサはやはり怒ったような眼差しを義父へ向けたが、すぐに表情を和らげた。
 
“確かに、我が夫へお渡し致します”
 
/T8投資フェイズ/
 
人脈、善性を選択
 
“我らも何か、覚悟を求められる時なのかもしれぬな…”
 
帰還の道すがら、友が小さく唸った言葉が耳から離れない。
競技会が幕を閉じ、今までとは何か雰囲気の違う大戦の気配が濃密になっている。
神殿が何か、危険なものに乗っ取られたという話しも伝え聞く。
何を為すべきか、選択の時だ。
 
/T8終了時点親パラメータ/
 
○親パラメータ
・名前:フィロテレス:男・既婚(好婚)
→妻:奴隷時代からの連れ添い
*職業:市民(学者系)
*武勇伝:凄く有名な貴族を助けたことがある
*愛用品:何もない。強いて言うなら心だ
*ダリド:残念人間でした。

・財産  ……3
・人脈  ……7
・教養 ……10
・武力 ……1
・善性 ……10