星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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目が覚めたら、自分は“存在しない男”になっていたーーー悪魔と現実の境目はどこに!?






◇流れよ我が涙、と警官は言った◇ -Flow My Tears, The Policeman Said-

フィリップ・K・ディック 友枝康子 訳



3000万人のファンから愛されるマルチタレント、ジェイスン・タヴァナーは、安ホテルの不潔なベットで目覚めた。昨夜番組のあと、思わぬ事故で意識不明となり、ここに収容されたらしい。体は回復したものの、恐るべき事実が判明した。身分証明書が消えていたばかりか、国家の膨大なデータバンクから、彼に関する全記録が消え失せていたのだ。友人や恋人も、彼をまったく覚えていない。"存在しない男"となったタヴァナーは、警官から追われながらも、悪夢の突破口を必死に探し求めるが……現実の裏側に潜む不条理を描くジョン・W・キャンベル記念賞受賞作! 



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ジェイスン・タヴァナーは遺伝子操作で生まれた"スィックス"のマルチタレント。頭も良い、見た目も良い、声も良い、彼のことを知らない人間など居ない。ーーー筈だった。昔関係を持った女に殺されかけて意識を失って、安ホテルのベッドで目が覚めるまでは。



かつての愛人ーーー今も良い友人関係を築いているーーーのヘザーも仕事仲間も誰もタヴァナーを覚えていないのだ。それどころか合衆国が徹底的に管理しているはずのデータバンクから彼のものだけが全部消えてしまったのだ。1988年のアメリカ合衆国では人間のあらゆる情報がデータ化、管理されているのにーーージェイスン・タヴァナーは“存在しない男”になってしまったのだ。



目下必要なのは偽造でいいからIDカードで有る。ところが密告されるは、偽造IDカード製造者のキャシィの精神異常に振り回されて警察から追われる羽目に。タヴァナーを追うバックマン警察本部長は「彼は実在している」と信じるが……



警察に追われるタヴァナーに必要なのは隠れる場所だ。彼は“存在しない男”になる前の頃に知り合った女性たちを尋ねるが、ある時決定的な出来事がーーー



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「流れよ我が涙、と警官は言った」です(・∀・)

「アンドロイドと電気羊」について題名に大きな影響を与えたディック作品登場。



あらすじ通り「一夜にして存在しなくなった男」が遭遇する現実なのか悪夢なのか、現実と夢の境界線が分からなくなる話です。



最初読んだ時は徹底的に管理された社会ではデータがそっくりなくなるだけで存在を否定されてしまうディストピア、と思い、最後にはディック的に破綻して、で〆る、と思っていたのですがこれはタヴァナーという管理社会、優良人間社会の具現化に対抗する普通の人間、バックマンの抵抗の物語だ、と思いました。



タヴァナーは遺伝子操作で生まれた、謂わばデザイナー・ベイビー。アンドロイドのように無駄で不要なものは切り捨てられています。そのさいたるものが涙です。それはまるでこの状況に憤りながらも苦しさを吐露出来ない、苦しいと分かっていても吐露することを諦める、まさにディストピア。

要するにジェイソン・タヴァナーというか存在が不条理そのものなのかも……



「流れよ我が涙、と警官は言った」でした(・∀・)/ 

猟奇的な殺人現場に残された人形はーーー(*^o^*)/