「本当の戦争の話の中にもし教訓があるとしても、それは布を織りあげている糸のようなものだ。それだけを一本抜き出すことはできない。より深い意味をほぐすことなくその意味だけを引き抜くことはできない。そしてつまるところ、本当の戦争の話を聞かされたあとに、何かもっともらしいことを口にするなんて不可能である。「へぇ」とか「ふうん」とか、それくらいしか言えない。
本当の戦争の話には一般法則というものはない。それらは抽象論や解析で簡単にかたづけられたりはしない。
たとえば戦争は地獄だという。教訓的な声明としてみればこの言うまでもない自明の理は完全に言うまでもなく自明に真実である。でもそれが抽象であり一般論であるがゆえに、私としては心の底からはそいつを信じることができない。腹にしみてこないのだ。
それははらわたの直観にずしりと来るものなのだ。本当の戦争の話というものは、偽りなく語られれば、腹を納得させることができるものなのだ。」

『本当の戦争の話をしよう』
ティム・オブライエン著、村上春樹訳 より

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この本を読んでいると、
ときに頭に直接なにかを注入されたみたいにシンクロする感覚があり、
そしてぼんやり輪郭しか分からないくらい不明瞭に視える一部もある。
つまりそれは、「こっちサイド」の私が理解できるところは限られていて、
「あっちサイド」は私にとって未知数なのだ。
私が分かったような顔で何か語れるものでもない。


一話一話の重みで、まだ半分しか読めていないけれど、
今の時点でこれだけは言える。断言できる。
私の、自衛隊に関わっていた友人3人が、
こんな本を書かなくちゃならないような経験を積まなくて、ホントよかった。